有料老人ホームとは?入居条件や種類別の特徴、入居するまでの流れを徹底解説

「有料老人ホームにはどのような種類がある?」
「どの有料老人ホームを選ぶのが良い?」
など、有料老人ホームに関して疑問を持っている方もいるでしょう。

数ある介護施設のなかでも、特に多くの高齢者が入居するのが有料老人ホームです。有料老人ホームという言葉は知っていても、具体的な施設の詳細やサービス内容を理解できていない方もいるでしょう。

今回は、有料老人ホームの概要、他の介護施設との違い、選び方などを解説します。最後まで読めば、有料老人ホームに関することがよくわかるので、ぜひご覧ください。

1.有料老人ホームとは?

有料老人ホームとは、高齢者が心身ともに健康で安心して暮らせるよう、ご利用者が必要とするサービスを提供する施設です。

ご利用者のニーズやライフスタイルに応じて、介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームの3つの種類から選ぶことができます。
それぞれの特徴は、下図をご覧ください。

有料老人ホームとは?有料老人ホームの種別

それでは、有料老人ホームの定義や種類ごとの入居条件を確認していきましょう。

有料老人ホームの定義と目的

有料老人ホームとは、高齢者が利用し、食事や介護、洗濯や掃除などの家事、医療ケアなどの健康管理のうち、いずれかのサービス(複数も可)を提供する施設です。

有料老人ホームは、高齢者の心身の健康を保ち、生活の安定を図ることを目的としています。

有料老人ホームの入居条件

有料老人ホームを利用する場合は、ご利用者が希望する介護やサービスに応じて施設を選びます。種類ごとに入居条件が異なるため、確認しておきましょう。

種類 入居条件
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム) 介護専用型 原則65歳以上で、要介護1~5の方が対象
混合型 原則65歳以上で、自立~要介護5の方が対象
自立型 原則65歳以上で、原則として自立した方が対象
住宅型有料老人ホーム おおむね60歳以上で、自立~要介護5の方が対象
健康型有料老人ホーム おおむね60歳以上で、自立した方が対象

上の表は一般的な有料老人ホームの入居条件です。認知症のある方も入居が可能な有料老人ホームが大半ですが、対応できる状態が定められている場合や、細かい条件などは施設ごとに異なりますので、調べておく必要があります。

高齢者向け住まいの種類については以下の記事でも解説しています。

高齢者向け住まい(老人ホーム等)の種類!各介護施設の特徴とは?

有料老人ホームの契約形態

有料老人ホームの契約形態には、居住部分と介護や生活支援などのサービス部分の利用契約が一体となった利用権方式、一般の賃貸住宅と同じ建物賃貸借契約、生涯住み続けることができる終身建物賃貸借契約の3つのタイプがあります。

終身建物賃貸借契約は、賃借人(住む人のこと)の死亡まで契約が存続するため、契約更新の必要がありません。また、賃借人の死亡後、相続人がいた場合でも借家権は相続されません。

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム) 利用権方式が一般的
住宅型有料老人ホーム・健康型有料老人ホーム 利用権方式、建物賃貸借契約、終身建物賃貸借契約

2.有料老人ホームの種類別のサービス内容と注意点

有料老人ホームは、ご利用者のニーズやライフスタイルによって、選ぶ際のポイントが変わります。それぞれの特徴を理解し、自身のニーズに合った施設がどれに該当するのか、確認しましょう。

種類 特徴 注意点
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム) ・ご利用者のニーズに合わせたさまざまなサービスが受けられる
・家賃と介護度ごとに設定された介護サービス費用がほぼ一定
・前払金がかかる場合がある
住宅型有料老人ホーム ・介護などのサービスは選択が可能
・自由度の高い暮らしができる
・介護費用が高額になる場合がある
・介護度が進むと住みづらくなるリスクがある
健康型有料老人ホーム ・自由な時間が多い
・万が一のときでも安心
・介護が必要になると退去しなければならない場合がある
・費用が高い場合がある
・施設の数が少ない

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)とは、都道府県または市町村の指定を受けて特定施設入居者生活介護を提供する施設です。介護サービスやリハビリを受けられるだけでなく、アクティビティなどを積極的に行っている施設もあります。

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)の特徴

  • ご利用者のニーズに合わせたさまざまなサービスが受けられる
  • 介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)は、介護スタッフが24時間常駐し、看護師は日中常駐しています。なかには介護スタッフだけでなく、栄養士、薬剤師、理学療法士などがいる施設もあり、手厚いサービスを受けられます。

    サービスの内容は施設ごとに異なっており、生活の質を高める食と栄養に重点を置いた施設、レクリエーションや趣味教室などイベントが充実している施設、健康維持や機能向上のためのリハビリプログラムを多数用意している施設などがあります。

  • 家賃と介護度ごとに設定された介護サービス費用がほぼ一定
  • 介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)は、介護度によって設定された介護サービス費用と、家賃がある程度固定された契約なので、毎月の支払い計画が立てやすいといえます。ただし、介護度の変更があったり利用されるサービスによっても変わってきますので、しっかりと確認をしておきましょう。

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)の注意点

  • 前払金がかかる場合がある
  • 介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)の契約は、居室や共有部分、介護サービスや生活支援などを利用するための費用をパッケージ化した利用権方式を採用しているところがあり、この利用権方式で契約すれば、ご利用者が亡くなるまで利用権を手にすることができます。利用権方式の支払い方法は、前払いの場合があるので注意しておきましょう。

    前払い方式では、すでに入居している方の平均年齢や平均寿命などをもとに、施設側が設定した想定居住期間内の家賃相当額にあたる数十万〜数百万円程度を入居時に支払います。結果として、月々支払う費用を抑えられることになり、経済的な見通しが立てやすくなることがメリットです。しかし、入居中に施設の利用料が下がったとしてもすでに支払いが済んでいるため、差額を返金してもらえないというデメリットもあります。

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)を詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)とは?費用や入居条件、メリット・デメリットを解説

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、食事、家事、安否確認、生活相談など、介護以外のサービスがついた高齢者向け住まいです。医療や介護サービスを利用する場合は、ご利用者が別途契約する必要があります。

住宅型有料老人ホームの特徴

  • 介護などのサービスは選択が可能
  • 住宅型有料老人ホームでは、基本的に介護サービスの提供はありません。そのため、ご利用者が個人で別途介護サービス提供事業者と契約する必要がありますが、多くの施設では敷地内に介護事業所があり、契約すればスムーズに介護サービスを受けられます。

    また、入居前に契約していた介護事業者を、入居後も継続して利用することが可能な場合もあります。デイサービスや訪問介護をはじめ、医療ケアや生活支援サービスも、ご利用者に合わせ必要なものを選んで利用できます。

  • 自由度の高い暮らしができる
  • 住宅型有料老人ホームの居室は、基本的に個室です。そのため、プライベートな空間があり、自由度の高い生活ができます。なかには、節分や雛祭り、クリスマスなど季節のイベントが充実している施設もあります。

住宅型有料老人ホームの注意点

  • 介護費用が高額になる場合がある
  • お伝えしたとおり、住宅型有料老人ホームでは基本的に介護サービスが提供されません。そのため、利用する介護サービスを自由に選べるメリットはありますが、利用状況によっては介護費用が高額になる点には注意が必要です。介護保険の利用限度額を超えるサービスを受けた場合、超過分は全額が自己負担となり、結果として介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)よりも費用が高くなるケースもあります。

  • 介護度が進むと住みづらくなるリスクがある
  • 住宅型有料老人ホームのご利用者は、自立~軽度の介護度の方が多いです。施設内はバリアフリーですが、重度の要介護者には対応できない施設もあります。また、病気やケガで介護度が進行すると、住みづらくなり転居が必要になるリスクがあります。

住宅型有料老人ホームについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

住宅型有料老人ホームとは?特徴や費用について紹介

健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームとは、健康で自立した高齢者が入居するための施設です。基本的に介護サービスは提供しておらず、食事の提供や掃除・洗濯などの家事をはじめ、安否確認、施設内でのイベントなどのサービスがあります。

健康型有料老人ホームの特徴

  • 自由な時間が多い
  • 健康型有料老人ホームでは、食事の支度や家事などの生活支援サービスを受けながら、自分の好きな趣味などを自由に行うことができます。

    レクリエーションや娯楽設備、イベントが充実している健康型有料老人ホームに入居すれば、ご利用者同士の交流を図りながらアクティブなシニアライフを送ることができます。

  • 万が一のときでも安心
  • 健康型有料老人ホームには医療サービス・介護サービスはありませんが、健康相談や安否確認サービスが用意されています。

    そのため、何か起きた場合には、医療機関はもちろん、ご家族にもすぐに連絡がいきます。ご本人は自立していたとしても、加齢による突発的な事故が起きないとも限らないため、施設が初期対応してくれる点では安心できるでしょう。

健康型有料老人ホームの注意点

  • 介護が必要になると退去しなければならない場合がある
  • 健康型有料老人ホームは要介護状態の高齢者を受け入れる機能を持っていないことが多いため、認知症が進行して介護が必要な状態になったり、医療的なケアが必要な状態になったりすると、施設側から転居を求められることがあります。

    このような場合は、退去して要介護高齢者が入居できる介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)や特別養護老人ホームへ住み替えるのが一般的です。

  • 費用が高い場合がある
  • 健康型有料老人ホームは元気で自立している方が対象で、ジムやプール、シアタールームなどの娯楽設備やイベントが充実しています。しかし、施設のさまざまな機能が充実している分、他の施設と比べて利用料や入居費用が高額に設定されていることがあります。

  • 施設の数が少ない
  • 令和2年の調査で全国の有料老人ホームは14,982件で、そのうち健康型有料老人ホームは1%にも満たないわずか20件でした。シニア向けマンションやサービス付き高齢者向け住宅が増えているなかで、健康型有料老人ホームの件数は少なく、地域によっては施設がない場合もあります。

3.有料老人ホーム以外の介護施設

有料老人ホーム以外の介護施設にはどのような特徴があるのでしょうか。それぞれの介護施設の特徴をまとめましたので、確認していきましょう。

特別養護老人ホームの特徴

特別養護老人ホームの特徴は以下のとおりです。

特別養護老人ホームの特徴

運営元 地方自治体や社会福祉法人など
入居条件 次のいずれかの条件を満たす方
  • 65歳以上でかつ要介護3以上の認定を受けている方
  • 40歳~64歳の方で、特定疾病であると認められ要介護3以上の認定を受けた方
  • 市町村の特例により入居が認められた要介護1~2の方
サービス内容 日常の介助、生活支援、リハビリなどから看取りまでのサービスが利用可能

特別養護老人ホームの入居条件は、原則として要介護3以上の方になります。ただし、自宅での老老介護が長期化し要介護者・介護者ともに危険な状態にあるなど、やむをえない事情があれば、要介護1~2の方でも特例で入居できることがあります。


特別養護老人ホームは比較的利用料が安いため、入居待機者が多く、すぐに入居できない場合が多いです。希望する特別養護老人ホームに入れず、代わりに有料老人ホームに入居する方や、特別養護老人ホームの空きが出るまで一時的に有料老人ホームに入居する方もいます。

有料老人ホームは、特別養護老人ホームに比べて個別のニーズに対応しやすいという特徴があるため、できるだけ自由に生活したい場合は有料老人ホームがおすすめです。

介護老人保健施設(老健)の特徴

介護老人保健施設の特徴は以下のとおりです。

介護老人保健施設の特徴

運営元 医療法人または社会福祉法人など
入居条件 次のいずれかの条件を満たす方
  • 原則65歳以上で要介護1以上の介護認定を受けている方
  • 40歳以上65歳未満の方でも、特定疾病に罹患し要介護認定を受け要介護1以上と判定されている方
  • 上記に加え、病状が安定していて入院治療が必要なく、リハビリテーションを必要としている方
サービス内容 日常の介助、生活支援、リハビリテーション、健康管理などのサービスが提供される

介護老人保健施設は、ご利用者の在宅復帰を目指すことを目的とした施設です。病院に入院していた方の急性期の治療が終わり、リハビリテーションを中心とした生活に移行する場合に入居します。略して老健と呼ばれています。
介護老人保健施設は病院などの医療機関に併設されていることが多く、医療体制が整っている点に特徴があります。ご利用者が入居できる期間は原則3ヵ月ですが、心身状況を見ながら継続して入居することもできます。ケースによっては長期入居となり、施設で最期のときを過ごすケースもあります。

介護老人保健施設(老健)は、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

介護老人保健施設とは?特養との違いや提供サービス・申し込みの流れを解説

サービス付き高齢者向け住宅の特徴

サービス付き高齢者向け住宅の特徴は以下のとおりです。

サービス付き高齢者向け住宅の特徴

運営元 法人格をもつ企業(民間の営利企業を含む)
入居条件 次のいずれかの条件を満たす方
  • 60歳以上の方
  • 要介護認定を受けた60歳未満の方
サービス内容 安否確認、生活相談、食事の提供が中心。施設によっては買い物の代行や付き添い、居室の清掃、洗濯などの代行サービスを利用できる場合もある

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者住まい法に定められた施設で、高齢者の単身または夫婦世帯が入居できる高齢者向けの賃貸住宅を指します。

建物自体や居室の設備はバリアフリーなどの高齢者が住みやすい仕様になっているため、安心かつ安全に暮らすことができます。
施設では、安否確認と生活相談のサービスを受けることができますが、介護サービスは提供されていません。ご利用者が介護サービスを利用するためには、外部の事業者と契約することになります。

サービス付き高齢者向け住宅は以下の記事でもご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

サービス付き高齢者向け住宅とは?費用や入居条件、他の介護施設との違い

グループホームの特徴

グループホームの特徴は次のとおりです。

グループホームの特徴

運営元 民間企業、NPO法人、社会福祉法人など
入居条件 次の条件を満たす方
  • 65歳以上でかつ要支援2~要介護5の方
  • 65歳未満の者にあっては若年性認知症、初老期認知症と診断されかつ要支援2~要介護5の方
  • 認知症であると診断を受けた方
  • 施設と同一市町村内に住民票がある方
  • 集団生活に支障がない方
サービス内容 日常の介助、機能訓練、レクリエーションなど

グループホームは認知症対応に特化した介護施設で、要支援2以上で認知症の診断を受けた方が入居できます。施設自体は小規模、ご利用者も9人以下と少人数で、家庭的な雰囲気のなかで集団生活を送る点に特徴があります。認知症のケアに詳しい専門スタッフのもと、一人ひとりに合わせた手厚い介護を受けながら生活していくことも利点といえます。

なお、ご利用者はグループホームと同じ市区町村に居住していることが条件になっており、入居の際にはその証明として住民票が必要となります。

グループホームは以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

グループホームとは?認知症ケアに特化したサービス内容と他の介護施設との違い

ケアハウスの特徴

ケアハウスの特徴は次のとおりです。

ケアハウスの特徴

運営 社会福祉法人など
入居条件 一般型
60歳以上で自宅での生活が困難な方(重度の要介護者は入居できない)
介護型
65歳以上で自宅での生活が困難で、要介護1以上の方
サービス内容 一般型
食事の提供、掃除・洗濯などの生活支援サービス
介護型
上記に加え、日常の介助、機能訓練など

ケアハウスは軽費老人ホームの一種で、その多くは社会福祉法人が運営しています。自宅での生活が難しい高齢者が対象で、比較的安価に入居できます。

ご利用者には食事の提供やその他日常生活で必要な支援が提供されますが、一般型ケアハウスか介護型ケアハウスかによってサービス内容が異なります。

ケアハウスは以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

ケアハウスとは?特徴や費用について紹介

4.有料老人ホームの初期費用・月額費用・介護サービス費用

有料老人ホームの初期費用・月額費用や、介護サービス費用はどのくらいかかるのでしょうか。以下、詳しく見ていきましょう。

有料老人ホームの初期費用

有料老人ホームでは、初期費用として入居時に入居費用が必要となる場合があります。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)では、施設利用料の全額、または一部の前払いという扱いです。住宅型有料老人ホームや健康型有料老人ホームでは、利用料の前払いもしくは敷金・保証金として扱われます。

有料老人ホームの月額費用

種類ごとの月額費用の詳細は下記のとおりです。

<介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)の場合>
・月額利用料(家賃・管理費・食費・水道光熱費など)
・介護保険自己負担金
・おむつ、医療費などの実費
・オプションサービスの費用

<住宅型有料老人ホームや健康型有料老人ホームの場合>
・月額利用料(家賃・管理費・食費・水道光熱費など)
・サービス利用料

施設 初期費用 月額費用 月額費用の内訳
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム) 0~数千万円 10~50万円 家賃、管理費、食費、水道光熱費、おむつ、医療費、オプションサービスの費用など
住宅型有料老人ホーム 0~数千万円 10~30万円 家賃、管理費、食事提供サービス費、水道光熱費、サービス利用料など
健康型有料老人ホーム 0~数千万円 10~40万円 家賃、管理費、食事提供サービス費、水道光熱費、サービス利用料など

有料老人ホームは、施設やその種類によって価格設定が異なります。
健康型有料老人ホームは費用が高い場合があると説明しましたが、健康型有料老人ホームに月額費用に介護サービス・おむつ代などが含まれている場合は、介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)の方が割高になる場合もあります。

介護サービス費用

介護サービス費用とは、ご利用者が介護保険サービスを利用した場合、その費用の一部を支払う額(自己負担額)を指します。ご利用者の自己負担額割合は1割が原則ですが、所得によって2~3割負担の場合もあります。
介護保険制度では、ご利用者の要介護度に応じて、月ごとに利用できる限度額(支給限度額)が定められています。

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)では、入居する要介護高齢者に対し、食事・入浴・排泄の身体介助や、調理・洗濯など日常生活を支援するサービスが提供されます。
これらのサービスは、介護保険法上では特定施設入居者生活介護として介護保険制度が適用され、費用は要介護度によって異なります。ご利用者は利用した介護サービス費用のうち一部(1~3割)を負担します。

介護サービス費用

要介護区分 1日当たりの利用者負担(1割)
要支援1 183円
要支援2 313円
要介護1 542円
要介護2 609円
要介護3 679円
要介護4 744円
要介護5 813円

※2024年7月時点、1割負担の場合を想定して計算

住宅型有料老人ホーム・健康型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホーム・健康型有料老人ホームに入居される方が訪問介護や通所介護などの介護保険サービスを利用する場合には、まず担当の介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)に相談し、ケアプランを作成します。そのあと、介護サービス提供事業所と契約し、ケアプランに沿って介護サービスを利用します。
介護サービスの費用は利用したサービスの量・種類によって異なり、ご利用者は利用した介護サービス費用のうち一部(1~3割)を負担します。

居宅サービスの支給限度額

要介護区分 支給限度額 1ヵ月あたりの自己負担額
要支援1 50,320円 5,032円
要支援2 105,310円 10,531円
要介護1 167,650円 16,765円
要介護2 197,050円 19,705円
要介護3 270,480円 27,048円
要介護4 309,380円 30,938円
要介護5 362,170円 36,217円

※2024年7月時点

※1単位あたり10円、1割負担の場合を想定して計算

5.介護サービス費用を軽減するために利用したい制度

介護サービス費用を軽減するために利用できる制度には、どのようなものがあるのでしょうか。以下、詳しく見ていきましょう。

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度とは、1ヵ月に支払ったご利用者負担の合計が負担限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。一般的な所得の方の負担限度額は月額44,400円ですが、一定の年収以上の高所得者の負担限度額は異なるため注意が必要です。

高額介護合算療養費制度

高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険における1年間の自己負担額が負担上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。負担上限額は各所得の区分によって異なり、世帯単位で計算されます。詳しくはこちらをご覧ください。

医療費控除

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が基準額を超える場合、税務署に確定申告することにより超えた分の医療費が課税対象の所得から控除され、税金の一部が還付される制度です。
有料老人ホームに入居している場合、介護サービス費用は医療費控除の対象となりませんが、介護保険サービスのなかには医療費控除の対象となる居宅サービスがあります。該当する方はこの制度を利用することができるかもしれませんので、担当のケアマネジャーに確認してください。

6.有料老人ホームに入居するまでの流れ

ここから、有料老人ホームに入居するまでの流れを説明します。具体的に、入居するまでの流れは下記のようになっています。

  1. 問い合わせ

    電話やWebサイトの問い合わせフォームから問い合わせして、見学の予約や資料請求をします。

  2. 見学・相談

    見学・相談見学に行き、施設の雰囲気や設備を見たり、管理者や入居相談を担当しているスタッフから詳しいサービス内容や料金の説明を聞いたり、相談したりします。

  3. 申し込み

    希望に合う施設が見つかり次第、入居申し込みをします。満室の場合は待機予約ができる場合もあるので確認してみましょう。

    提出書類:入居申込書

  4. 面談

    新しい生活の準備のため、施設の管理者やケアマネジャーと、ご本人の心身状態や既往歴、希望する生活などを相談します。面談の際に、介護保険被保険者証と診断書、または診療情報提供書などを提出します。(入院中・施設入居中の方は、看護サマリーやケアプラン、介護サマリーなど)

  5. 契約・入居

    ご本人・ご家族(身元引受人・保証人)と事業者とで契約を交わし、入居となります。

有料老人ホーム選びは、入居してから後悔しないためにも時間をかけて行うべきです。少しでも気になる有料老人ホームがあれば、できる限りすべての施設を一度見学に行き、多くの情報を集めたのちに、条件に合うところを選ぶようにしましょう。

7.有料老人ホーム選びのポイント

数ある有料老人ホームから希望に合う施設を探すには、求める条件を整理し、優先順位を付けておくことが必要です。ここでは、有料老人ホーム選びのポイントとなる条件を紹介します。

ご本人の住み慣れた地域に近いか

有料老人ホーム選びで忘れてはならないのが、ご本人の意思を尊重することです。ご本人の意思を聞かず、ご家族だけで入居する施設を選んでしまうと、入居後にストレスや不満が溜まり、体調を崩したり、持病が悪化したりする可能性もあります。

入居先の希望条件として多くの方が、「住み慣れた地域で暮らしていきたい」という声をあげています。やはり住み慣れた地域であれば、外出がしやすかったり、近くに友人が住んでいたりするので、ご本人も安心して暮らすことができます。

住んでいる場所は変わっても、同じ地域内であれば、外を見たときに見える景色がそれほど変わらないので、自宅にいた頃と変わらない気持ちで生活していくことができるでしょう。

ご家族が会いに行きやすい場所にあるか

有料老人ホームは、ご家族が会いに行きやすい場所にある施設を選ぶのも良いでしょう。有料老人ホームに入居しても、すべてを施設に任せられるわけではありません。生活に必要な物品の補充や体調不良などによる医療機関での救急対応など、入居後もご家族のご協力が必要で、施設に足を運ぶケースは少なからずあります。

ご家族の自宅から有料老人ホームが遠いと、仕事の忙しさなどからなかなか面会に行く時間が作れず、ご利用者とご家族の会う頻度が少なくなってしまうことはよくあります。

もともとご本人が住み慣れた地域の有料老人ホームを選ぶ方が多いですが、身近な立場であるご家族が行きやすい場所かどうかというポイントも非常に重要です。車で行きやすいのか、公共交通機関で行きやすいかといったアクセスの手段も含め、しっかり確認しておきましょう。

施設の雰囲気や住環境は整っているか

施設の雰囲気や住環境が整っているかどうかも重要なポイントです。有料老人ホームの利用は、中長期にわたることが想定されるため、少しでも良い環境の施設を利用したいと考えるのは当然のことです。

ただ単にキレイというだけでなく、楽しく暮らしていけそうな明るい雰囲気があるか、居室に必要な設備が整っているかなどをしっかりと確認しましょう。有料老人ホームの建物を外から見ただけではわからない部分も多いため、必ず見学に行き、少しでも気になることは質問して疑問を解消することをおすすめします。

相談や面談を担当するスタッフの雰囲気にも注目し、笑顔はあるか、言葉使いは適切か、質問にきちんと答えてくれるかを確認しましょう。
また、他のスタッフもきちんと挨拶してくれるか、ご利用者と積極的に会話をしているかなどを確認すべきです。丁寧な対応をしているスタッフが多ければ、しっかりとした介護サービスを受けられる可能性が高いです。

希望する介護サービスを提供しているか

希望する介護サービスを提供しているかどうかも、有料老人ホーム選びのポイントです。ひと口に有料老人ホームといっても、施設ごとに理念やサービスの提供方針はさまざまです。

外出やレクリエーションを活発に行っているところもあれば、食事や排せつ、入浴などの日常生活における自立支援に重点をおいているところもあります。例えば、外出やレクリエーションを楽しみたい場合は、施設で実施された過去のイベントや今後の予定などを確認してみましょう。

また、具体的な介護サービスや食事内容を確認したい場合は、一度体験入居を利用して希望に合うかどうかを確かめるのもおすすめです。

医療機関との連携体制は整っているか

医療や介護のケア体制をよく確認しておく必要があります。医療機関との連携体制では、どこの医療機関で、どこまでが対応範囲で、緊急時はどのように対応するのかを確認しておけば、万が一の際にも安心して任せられるでしょう。

ICT機器など、最新の技術を導入しているか

介護は人と人との関わりが基本ですが、最近ではICT機器を導入することで業務の効率化やスタッフの負担軽減化を図り、ご利用者に提供するサービスの品質を向上させようとしている施設もあります。

また、近年では介護分野におけるICT化・研究が進んでいます。ご利用者を思いやる気持ちはもちろんのこと、ICTを使って不測の事態に早くに気付いたり、科学的根拠に基づいた支援をしたりしているかどうかも確認してみると良いでしょう。

初期費用や月額費用は予算内に収まるか

有料老人ホーム選びでは、費用面も重要なポイントです。初期費用や月額費用は、施設ごとに異なるので必ず確認するようにしましょう。

費用の内訳を確認したら、現在の貯蓄額や今後の収入を考慮し、予算内に収まる有料老人ホームを選ぶことが大切です。

なお、入居時には問題なく支払えると感じていても、要介護度の変動や施設側の料金変更などによって月々の費用が上がる場合もあります。予算ギリギリの有料老人ホームに入居すると、後々住み替えの必要が出ることも考えられるので、少し余裕を持てる施設を選ぶのが良いです。

8.生活スタイルに合わせた有料老人ホームを選ぼう

今回は、有料老人ホームの特徴や選び方のポイントなどをお伝えしました。

有料老人ホームへの入居を希望される方のライフスタイルは、アクティブな生活スタイルを好む方、介護やリハビリを通じて社会のなかで自立することを目指す方、残りの人生を穏やかに過ごしたいと考える方などさまざまです。

多様化するご利用者のニーズに応じようと、有料老人ホームごとに設備やサービスの充実度を高めようと努めています。楽しく元気に暮らすために、お一人おひとりの生活スタイルに合わせたケアやサービスを提供する有料老人ホームを選びましょう。

SOMPOケアでは、有料老人ホームをはじめさまざまな高齢者向け住まいを運営しています。これまでの経験を踏まえ、最適なご案内をさせていただきますので、介護施設に関してお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

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監修・執筆

林 修造

福祉系専門学校の教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や医療保険などの社会保障にも精通している。専門学校で教鞭を取る傍ら、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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