特定施設入居者生活介護とは?サービス内容や対象者・費用についても解説

特定施設入居者生活介護とは、厚生労働省が定めた基準を満たした有料老人ホームやケアハウスなどの施設で受けられる介護サービスのことです。

この記事では、特定施設入居者生活介護がどのようなサービスなのか、特定施設とは何か、どのような方が対象か、などをわかりやすく解説します。

1.特定施設入居者生活介護とは

特定施設入居者生活介護とは、介護保険法が定めた介護保険サービスの一つで、特定施設に入居する要介護1~5の方に対する介護や機能訓練、療養上のサービスなどを指します。

特定施設とは

特定施設とは、厚生労働省が定めた基準(要介護者:看護・介護職員=3:1、介護を行うために適当な広さがある一時介護室があるなど)をクリアし、都道府県や市区町村から指定を受けた施設で、日常生活上の介護、機能訓練、療養上のサービスなどを提供する施設を指します。

特定施設に入居する方は、自身の要介護度に合わせて食事、入浴、排泄の介助などの介護サービスを利用できます。

介護保険が適応されるため1〜3割負担でサービスを受けられる

特定施設で提供される特定施設入居者生活介護は介護保険法が適用されるため、ご利用者は利用した介護サービス費用の原則1~3割負担で、介護サービスを受けることができます。

「一般型」と「外部サービス利用型」の2種類がある

特定施設入居者生活介護は「一般型」と「外部サービス利用型」の2つに分けられます。詳細は次のとおりです。

一般型 外部サービス利用型
特徴 特定施設の事業者がご利用者に介護サービスを提供する。 特定施設の事業者はご利用者のケアプラン作成などのマネジメント業務を行う。ご利用者は外部事業者の提供する介護サービスを利用する。
利点 特定施設の事業者が介護サービスを提供するため、顔なじみの関係のなかでサービスを利用できる。 ご利用者自身が外部事業者のなかから自由にサービスを選択できる。
提供されるサービス ・生活相談
・安否確認(緊急時における初期対応)
・ケアプラン作成
・介護
・生活相談
・安否確認(緊急時における初期対応)
・ケアプラン作成

介護予防特定施設入居者生活介護

介護予防特定施設入居者生活介護とは、要介護認定で要支援1・要支援2と判定され、特定施設に入居した方が利用する介護サービスです。提供されるサービスは、食事や入浴、排泄の介助、身の回りの世話などで、いずれも介護予防を目的としています。
要支援1~2と認定された方は介護予防特定施設入居者生活介護として、要介護1~5と認定された方は特定施設入居者生活介護としてサービスを利用することができます。

2.特定施設入居者生活介護の指定対象となる特定施設

ここでは、特定施設入居者生活介護の指定対象となる特定施設の種類を説明します。

介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)

有料老人ホームの一つである介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)は自治体の指定を受けた特定施設で、主に民間企業などが設置・運営をしています。すべての有料老人ホームが特定施設の指定を受けている訳ではありませんので注意が必要です。

介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)は、介護サービスが付いた高齢者向け施設です。原則として、入居する要支援・要介護の高齢者に対して食事、入浴、排泄の介助や身の回りの世話が提供されます。これらのサービスは「特定施設入居者生活介護」として介護保険の対象となるため、ご利用者は利用した介護サービス費用のうち一部(1~3割)を負担するだけで済みますが、施設によってサービスの幅や種類が異なり、おやつや有料レクリエーションなど実費が必要となる場合もあります。

介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)については以下の記事でより詳しく解説しています。

介護型ケアハウス

ケアハウスとは、軽費老人ホームの一つです。軽費老人ホームにはA型・B型・C型がありますが、いずれも初期費用が無料または低額な料金で入居することができ、食事の提供(B型を除く)、その他日常生活で必要な支援を行うことを目的としています。現在では軽費老人ホームの大半がケアハウスとなっており、主に社会福祉法人などが運営しています。

軽費老人ホームのうちC型がケアハウスと呼ばれますが、そのうちの「介護型ケアハウス」が特定施設となります。介護型ケアハウスは65歳以上で要介護1以上の高齢者が入居でき、認知症などによって心身機能が低下したとしても、多くの場合、退去する必要はありません。

ご利用者には、介護保険法に基づく特定施設入居者生活介護のサービス(食事、入浴、排泄の介助、機能訓練など)が提供されます。これらのサービスは介護保険の対象となるため、ご利用者はかかった介護サービス費用の一部(1~3割)のみの負担で利用できます。

ケアハウスに関する詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

養護老人ホーム

養護老人ホームとは、環境上の理由と経済的理由によって自宅での生活が困難な高齢者が、市町村の措置(市町村が入居の要否を判断する)によって入居する施設です。ご利用者の自宅復帰を目的に、一時的な入居を想定しています。

全国に944施設あり(※2023年1月19時点)、そのうち4割が「特定施設入居者生活介護」の指定を受けています。

なお、名称の似ている「特別養護老人ホーム」は特定施設入居者生活介護ではありません。目的・特徴・入居対象もまったく異なりますので、混同しないようにしましょう。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のなかには、一部ですが特定施設の指定を受けている施設があります。特定施設の指定を受けているサ高住の場合、特定施設サービス計画に基づいた居宅サービスである、入浴や排泄・食事の介助、機能訓練のためのリハビリなどのサービスを受けることができます。ただし、サ高住すべてが特定施設ではありませんので注意してください。

サービス付き高齢者向け住宅に関する詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

3.特定施設入居者生活介護の利用対象者と費用

続いて、特定施設入居者生活介護の利用対象者とその費用を解説します。

利用対象者

特定施設入居者生活介護は、要介護1~5の認定を受けて特定施設に入居する方が対象となります。特定施設への入居条件などはそれぞれの施設ごとに異なりますが、一般的には次のとおりです。

介護付有料老人ホーム 介護型ケアハウス 養護老人ホーム
年齢 65歳以上 65歳以上 65歳以上
要介護度 要介護1以上 要介護1以上 市町村が判断する
入居時の契約の有無 施設とご利用者との契約によって入居する 施設とご利用者との契約によって入居する 市町村の措置によって入居可否が決まる

なお、要支援1または要支援2の方は介護予防特定施設入居者生活介護のサービスを利用することができます。

費用

ご利用者が負担する利用料は要介護度によって異なります。1日あたりの利用料の目安は次のとおりです。

要介護度 利用料の目安(1日あたり)
要介護1 533円
要介護2 597円
要介護3 666円
要介護4 730円
要介護5 798円

※2023年11月時点

※上記は1割の自己負担額です。ご利用者の所得によって1~3割の負担となります。また、上記とは別に、食費、おむつ代やその他の日常生活費、入居費用も別に必要となります。
※施設の所在地、サービス提供体制、サービスの内容などに応じて利用料が異なります。

4.施設の人員配置や設備の基準

特定施設にはどのような人員配置や設置基準が定められているのでしょうか。それぞれ詳しく見ていきましょう。

配置される人員について

特定施設は、介護保険法の定める人員基準をクリアする必要があります。人員基準の内容は次のとおりです。

職種 配置基準
管理者 1人(兼務可)
生活相談員 要介護者など100人に1人以上
看護・介護スタッフ 要介護者3人に1人以上
介護スタッフ 1人以上
看護師 1人以上(要介護者が30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人)
機能訓練指導員 1人以上(兼務可)
計画作成担当者 介護支援専門員(ケアマネジャー)1人以上※

※要介護者等:計画作成担当者100:1を標準

特定施設の設備基準

設備においても、介護保険法の定める基準を満たさなければならないとされています。基準は次のとおりです。

基準 内容
介護居室 ・原則個室であること
・プライバシーが保護できること
・介護を行える適切な広さがあること
・地階ではないこと など
一時介護室 介護を行うために適当な広さであること
浴室 身体の不自由な者が入浴するのに適したものであること
便所 居室のある階ごとに設置し、非常用設備を備えること
食堂
機能訓練室
機能を十分に発揮しえる適当な広さであること
施設全体 ご利用者が車椅子で円滑に移動することが可能な空間と構造であること

5.特定施設入居者生活介護の指定を受けるには

介護事業者が、自身の運営している施設で特定施設入居者生活介護の指定を受けるには、どのような順序を踏めば良いのでしょうか。ここからは、東京都福祉局のホームページを参考に、特定施設の指定を受けるまでの流れを説明します。

まず、指定を受けようとする介護サービス事業者は、設置しようとする自治体に対し「指定申請に係る事前相談」を行います。相談のあった自治体は、立案した高齢者保健福祉計画などとの整合性を確認し、介護サービス事業者が開設を予定する時期や場所などを協議します。

次に、特定施設入居者生活介護の指定申請に移ります。事前相談の結果、自治体から指定可能である旨の通知を受領した介護サービス事業者は、事業開始予定日(指定予定日)の前々月の末日までに特定施設入居者生活介護の指定申請を行います。

なお、特定施設の開設・指定には「総量規制」というルールがあり、これに該当すれば指定を受けられない場合があります。総量規制とは次のようなものです。

  • 自治体が立案した介護保険事業計画に定めた定員数(老人福祉圏域ごとの必要利用定員総数から開設済み施設定員数を差し引いた人数)にすでに達している
  • 当該申請に係る指定によってこれを超える
  • その他計画の達成に支障が生じるおそれがあると認められる

上記に該当した場合は、総量規制により、都道府県知事・市町村長は事業者の指定などを拒否できることとされています。

6.特定施設入居者生活介護は提供サービスそのものを指す

特定施設入居者生活介護とは、特定施設で提供される食事・入浴・排泄の介助、日常生活上での必要なサービスなどを指します。このサービスには介護保険が適用されるため、ご利用者はかかった介護サービス費用の一部のみの負担で利用できます。特定施設には、介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)やケアハウス、養護老人ホームの施設があり、それぞれに入居条件・費用が異なります。

特定施設入居者生活介護は介護を必要とする高齢者にとって便利なサービスであるとともに、入居待機者が多いと言われる特別養護老人ホームなどの受け皿ともなっています。

SOMPOケアでは、特定施設入居者生活介護のサービスを提供する介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)やケアハウスを運営しています。また、「介護なんでも相談室」では介護サービス全般に関するお問い合わせを受け付けています。介護に関するお困り事があれば、ぜひ一度お問い合わせください。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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