アルツハイマー型認知症とは?原因・対応・予防方法まで解説

認知症にはさまざまな種類がありますが、なかでも発症率が高いのが「アルツハイマー型認知症」です。アルツハイマー型認知症は、高齢者のみならず、若い方が発症することも少なくありません。

もしご家族や自分自身がアルツハイマー型認知症になったときに、その症状にいち早く気づき、正しい対応ができるようになるために、原因や主な症状に関して理解を深めておきましょう。
今回は、アルツハイマー型認知症の発症原因や主な症状、ご家族をはじめ介護者の適切な対応について解説します。

※この記事内での認知症予防とは、認知機能低下防止および認知症のリスク低減に有効と一般的に言われている対策の事例紹介や、認知症の早期発見・早期治療、進行抑制までを含んでいます。

1.アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は、数ある認知症の種類のひとつです。

アルツハイマー型認知症を発症すると、記憶障害、判断能力の低下、見当識障害などの症状が現れます。現段階では、アルツハイマー型認知症を完治させる手段は見つかっていません。

しかし、進行を緩やかにするための薬や予防法はありますので、可能な限りこれまでどおりの暮らしを続けるためには、アルツハイマー型認知症を早期発見することが大切です。

2.アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症を発症するきっかけは、アミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が脳に異常に溜まることです。
脳に溜まったたんぱく質が、脳神経の変性を引き起こすことで、脳のなかでも記憶に関わる海馬という器官から萎縮が始まり、徐々に脳全体にひろがっていきます。

しかし、なぜ脳にたんぱく質が溜まってしまうのかは、現段階でははっきりとした原因は解明されていません。

3.アルツハイマー型認知症の主な症状

アルツハイマー型認知症の主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

記憶障害

記憶障害とは、新しいことを覚えられない、覚えたことをすぐに忘れてしまう、過去の体験を忘れてしまうなどの症状で、いわゆる物忘れの症状です。

年をとると誰でも物忘れが多くなりますが、加齢による記憶障害と、認知症の症状による記憶障害は違います。加齢の場合は、出来事の一部分を忘れてしまうことが多く、例えば、朝ごはんに何を食べたか思い出せなくなることがあります。一方、認知症の場合は、出来事の全体を忘れてしまい、朝ごはんを食べたこと自体を忘れてしまうのです。

また、加齢による記憶障害は、それほど日常生活に支障をきたすことはありません。しかし、認知症による記憶障害は、鍋を火にかけたことを忘れたり、家への帰り道で迷子になったりと、進行が進むと日常生活に支障をきたす場合があります。

判断能力の低下

アルツハイマー型認知症になると、判断能力が低下してしまいます。判断能力が低下することによって、自分自身の状況に応じた適切な行動が取れなくなってしまいます。

例えば、テレビやエアコンなど使い慣れた家電の操作が分からなくなったり、銀行でお金の引き出しや手続きの仕方を間違えたり、車の運転でミスが多くなったりしてしまうのです。説明を聞いても正しく理解するのが難しくなり、見ているテレビの内容もわからなくなってしまうことがあります。

見当識障害

見当識とは、日付や時刻、状況、周囲の人物などを総合的に判断し、自分の置かれている状況を理解する能力のことです。アルツハイマー型認知症では、見当識障害の症状も見られ、生活に支障をきたすことが多いです。具体的には、今の時間がわからなくなる、今いる場所がわからなくなる、今の季節がわからなくなるなどの症状があります。

また、記憶が残っている昔の話を、今起きていることのように話すこともあります。認知症を発症する前の若い頃の自分のままだと思ってしまうこともあり、長年一緒に暮らしていたご家族を見ても、誰だかわからなくなることもあるのです。

その他の周辺症状(行動・心理症状/BPSD)

アルツハイマー型認知症では、記憶障害や判断能力の低下の他にも、周辺症状という症状が見られることがあります。周辺症状は行動・心理症状やBPSDとも呼ばれ、認知症になった人の性格や環境、周囲の人との関わり方などの相互作用によって現れる症状のことを指します。

具体的には、慣れているはずの道に迷ったり、毎日決まった時間に決まった場所に行く常同行動を繰り返したりする行動症状があります。また、自発性や意欲が一気に低下する無気力や、物が見つからないときに物を盗まれたと思い込んでしまう、などの心理症状が見られることもよくあります。

4.アルツハイマー型認知症と他の認知症との違い

認知症の中で最も多いのはアルツハイマー型認知症ですが、他にも脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。それぞれの認知症の種類によって、発症する原因や発症後の症状は異なります。

例えば、脳にたんぱく質が溜まることによって引き起こされるアルツハイマー型認知症に対して、脳血管性認知症は、脳の血管が詰まる脳梗塞や血管が破れる脳出血などによって、神経細胞がダメージを受けて発症します。

また、主な症状を比べてみても記憶障害や判断能力の低下を起こすアルツハイマー型認知症に対して、レビー小体型認知症では、実際にはいない人や物が見える幻視、言葉が上手く話せなくなる失語、目の前に出された物が何かわからない視覚性失認などの認知機能障害のほか、手足の震え、筋肉の硬直などのパーキンソン症状、寝ているときに大声を出したり暴れたりするレム睡眠行動障害などが現れます。

認知症の種類によって原因や症状は異なるため、ご家族が認知症になったときには、種類ごとの特徴を理解することが大切です。

5.アルツハイマー型認知症の検査方法

アルツハイマー型認知症の検査方法は、まず本人や一緒に暮らしているご家族に問診して、症状や病歴を聞くことから始まります。また、ミニメンタル試験などの神経心理検査を行い、認知機能の障害がどの程度なのかを調べます。次に、MRIやCTのような画像検査で脳の状態を見ます。
他には、脳血流SPECT、脳FDG-PETとよばれる検査で脳の機能を調べることがあります。

また、認知症と診断されるかもしれないという不安から、本人が検査を受けることをためらう場合もあります。その場合は、本人が信頼している関係者やかかりつけ医・ケアマネジャーなどの専門職の方から検査の必要性を説明してもらうなどの工夫をしてみましょう。認知症を疑うような症状がある場合には、少しでも進行を遅らせるために、早めに検査を受けることが大切です。

6.アルツハイマー型認知症の方への対応

ご家族がアルツハイマー型認知症になったとき、以下のような対応を心がけるようにしましょう。

アルツハイマー型認知症を知ることから

アルツハイマー型認知症についての知識がないと、介護をしていて大変に感じることが多いです。また、対応の仕方が間違っていると、信頼関係が築けず、介護拒否という状況を招いてしまう可能性があります。
アルツハイマー型認知症についての理解を深めることで、本人の言動を否定せず受け入れたり、安全に暮らすための環境を整えるといった的確な対応ができるようになります。また、外に出るときには誰が付き添うのか、介護施設への入居を検討すべきかなど、今後の介護計画も立てることができます。本人とご家族が少しでも快適に暮らしていけるよう、アルツハイマー型認知症への理解を深めましょう。

強く指摘や否定をしない

アルツハイマー型認知症を発症してしまうと、記憶力や判断力が低下してしまいます。しかし、羞恥心やプライドは今までどおり持ち続けています。
そのため、本人の言動に対して強く指摘したり、否定したりしないようにしましょう。受け入れたり、共感したりすることで、本人は安心感を得られます。

例えば、認知症の方が「今日学校は?」と社会人になっているご家族へ尋ねたときに、「今日は休み」と答えるなど、間違いを否定せず自然と会話をすることが大切です。「もう学生じゃない」と否定しても、認知症の方は理解ができず、余計に困惑してしまう可能性があります。強く指摘したり、否定したりせず、まずはご本人の発言をそのまま受け入れる姿勢が大切です。

生活習慣・環境などを整える

アルツハイマー型認知症の方が安心して生活できるように、生活習慣や環境を整えるようにしましょう。住環境を整備すると、本人もご家族もリラックスして過ごせるようになります。

住環境の整備は、安全性と慣れた環境を作ることが大切です。認知症の方は、慣れ親しんだ環境が変化すると、戸惑いや不安を感じてしまいますので、住み慣れた環境を保ちつつ、安全性を確保していくようにしましょう。

具体的には、廊下に手すりやスロープを設置して安全性を確保しながら、愛着のある家具を残しつつ絵や花を飾るなど、本人の性格や趣味に合わせた工夫も取り入れるようにしましょう。
また、日頃から近所の人との交流を深めたり、名札やGPS付携帯電話を本人に持ってもらうなど、万が一認知症の方が外出先で迷子になっても知らせてもらえるような環境を整えることも大切です。

カレンダーやメモを活用する

カレンダーやメモを活用して、大事な予定や約束、忘れてはならない事柄などを本人が確認できる状態にしておくとよいです。
具体的には、本人がいつも座っている場所からよく見える位置に、カレンダーを置いたりメモを貼ったりします。特に忘れてはならないことや気をつけてほしいことは、大きな字で書いたり、色をつけたりして目立つようにしましょう。
例えば、玄関のドアの内側に大きなメモを貼っておくと、外出前に必ず目にすることができるので、忘れ物の防止につながります。

ご家族の方は、ここまでご紹介した対応方法を参考にして、認知症になった本人の不安や困りごとを確認しながら、お一人おひとりに適したケアに努めるようにしましょう。SOMPOケアでは、認知症を抱える方やご家族に向けたお役立ちコンテンツ「あんなこんな」をご提供しています。認知症の方への接し方やこれまで通りの生活を続けるために読んでいただきたいコンテンツを掲載しているので、ぜひご覧ください。

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7.アルツハイマー型認知症を予防するためには

アルツハイマー型認知症は、現状では完治させる手段が見つかっておらず、発症すると、薬の投与によって進行を遅らせるという治療しかできません。そのため、アルツハイマー型認知症にならないように日頃から予防をしておくことがなによりも大切です。

アルツハイマー型認知症を予防する具体的な手段としては、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、節酒、知的活動などが挙げられます。認知症は年齢を問わず発症する病気のひとつです。これまでどおりの生活を続けるためにも、誰もが認知症の予防に繋がる習慣を取り入れることをおすすめします。

8.認知症は早期発見することが大事

認知症は、早期発見によって早めの治療を開始すれば、進行を効果的に遅らせることにつながり、自立した生活をより長く続けられる可能性があります。そのため、少しでも認知症の疑いがあれば、なるべく早く検査を受けるようにしましょう。

もし、ご家族が認知症と診断された場合には、ご自宅での生活を継続しながら必要に応じて訪問介護サービスやデイサービスを利用するほか、介護付きホームやグループホームに入居しながら本人らしい生活をおくることもできます。

例えば、SOMPOケアが運営する介護付きホームやグループホームは、専門性が高く、認知症ケアの対応も可能なスタッフがお1人おひとりに適した介護サービスを提供し、認知症のある方でも安心してお過ごしいただける環境となっています。介護付きホームの中には短期間での利用が可能なホームもあるので、ホームでの生活を体験してみることもできます。 自分たちだけで頑張ろうとせず、介護サービスを利用してみるのはいかがでしょうか。

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記事監修者:大塚真紀

【経歴】

都内の大学病院勤務を経て、現在はアメリカ在住。育児のかたわら、医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作のほか、認知症の患者さんの診療経験を活かし、認知症に関する記事執筆や監修、最新の医学論文の翻訳なども行っています。認知症患者さんと介護者の方の負担が、少しでも軽くなるようにお役に立てればと考えています。

【保有資格】

医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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