レビー小体型認知症とは?原因・症状・対応方法まで解説

認知症のなかで、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症と並んで、四大認知症と言われているのが「レビー小体型認知症」です。レビー小体型認知症の症状は、個人差がありますが認知機能障害やパーキンソン症状などが代表的です。

もしご家族や自分自身がレビー小体型認知症になったとき、その症状にできるだけ早く気づき正しい対応ができるようになるために、あらかじめ理解を深めておきましょう。

今回は、レビー小体型認知症を発症してしまう原因、主な症状、ご家族をはじめ介護者の適切な対応について解説します。

1.レビー小体型認知症とは

レビー小体型認知症は、認知症の種類のひとつです。レビー小体型認知症を発症すると、認知機能障害、幻視、パーキンソン症状、レム期睡眠行動異常症など、さまざまな症状が現れます。
現段階では、レビー小体型認知症を完治させる治療法は見つかっていません。少しでも長くこれまでどおりの生活を続けるためにも、早期に発見し、症状の進行を遅らせる薬の投与を行ったり、適切なリハビリテーションを受け進行を遅らせたりすることが大切です。

2.レビー小体型認知症の原因

レビー小体型認知症は、レビー小体とよばれる異常なたんぱく質が脳に溜まることが原因で発症します。脳にレビー小体が溜まると、神経細胞が破壊され、認知症の症状が現れていきます。また、脳の神経細胞は、全身の筋肉を動かすために必要なドパミンという物質を作る役割を持っています。そのため、レビー小体型認知症を発症すると、身体をうまく動かせなくなるパーキンソン症状が見られるようになります。

3.レビー小体型認知症の主な症状

レビー小体型認知症で見られる主な症状には以下のようなものがあります。

認知機能障害

認知機能とは、記憶、思考、理解、計算、判断などの知的な能力のことを指します。レビー小体型認知症を発症すると、アルツハイマー型認知症などと同様に、記憶力や判断力、理解力などの低下が見られます。ただし、レビー小体型認知症を発症したばかりの時期は、認知機能障害の程度が軽いため、認知症であることに気づかない場合も多いです。
また、レビー小体型認知症には症状が変動するという特徴があります。穏やかな状態から無気力の状態、興奮状態、錯乱状態などを一日のなかで繰り返すことも少なくありません。

幻視

幻視とは、実際にはいない人や物が見えたり、目の前の物が全く違うものに見えたりする症状です。見えるものは人によりさまざまですが、「黒い服を着た人がこっちを見ている」「カーテンの後ろに子どもがいる」など、具体的にハッキリと見えることが多いです。

パーキンソン症状

手足のふるえや体のこわばりなど、レビー小体型認知症ではパーキンソン症状も現れ、動作が遅くなる動作緩慢も見られます。パーキンソン症状が悪化すると、自分で服を着替えるのが難しくなる、転びやすくなる、食べ物を飲み込みにくくなるなど、日常生活に支障をきたしてしまいます。パーキンソン症状は、レビー小体型認知症ならではの特徴的な症状です。体を動かしにくくなり、転倒の原因になることもあるので注意が必要です。

レム期睡眠行動異常症

レビー小体型認知症になると、睡眠中に大声で叫んだり、暴れたりするという症状が起きます。浅い眠りであるレム睡眠のタイミングに症状が現れることが多く、追いかけられたり、暴力をふるわれたりするなど、悪夢を見ていることがほとんどです。このような症状をレム期睡眠行動異常症といいます。レム期睡眠行動異常症は、レビー小体型認知症の初期段階から見られることが多い症状のひとつです。

その他にも、抑うつ症状や自律神経症状などが見られることがあります。抑うつ症状では、なんとなく元気がない、気分が落ち込む、食欲がないなどの症状が出ます。自律神経症状では、めまい、立ちくらみ、尿失禁、便秘、失神などの症状が見られます。

4.レビー小体型認知症と他の認知症との違い

レビー小体型認知症の他にも、認知症には、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症などがあります。それぞれの認知症の種類によって、発症してしまう原因や発症後の症状は大きく異なります。

レビー小体型認知症は脳の神経細胞にレビー小体とよばれる異常なタンパク質が溜まることで発症しますが、脳血管性認知症は、脳の血管が詰まる脳梗塞や血管が破れる脳出血などによって、神経細胞がダメージを受けて発症します。

また、主な症状にも違いがあり、認知機能障害やパーキンソン症状が見られるレビー小体型認知症に対して、アルツハイマー型認知症では出来事の全体を忘れてしまうような記憶障害、今の時間やいる場所がわからなくなる見当識障害などの症状が見られます。
さらに、レビー小体型認知症は男性が発症するケースがやや多いのですが、アルツハイマー型認知症は女性の方が多いことも特徴です。

認知症の種類によって、原因や症状は異なるため、もしご家族が認知症になったときには、各種類の特徴を理解することが大切です。

5.レビー小体型認知症の検査方法

レビー小体型認知症の検査は、脳神経内科で受けられます。検査では、まず本人や同居する家族などに問診を行います。次に、神経学的診察とよばれる検査をします。神経学的診察では、筋肉を動かすための運動神経や知覚を司る感覚神経の障害などを調べます。神経学的診察の内容は医療機関によって異なりますが、診察室に入る段階から、認知症の疑いのある本人を注意深く観察し始め、姿勢や歩き方、椅子から診察台までの移動の速さ、話し方、言葉づかいなどをチェックする場合があります。また、血液検査で血液中のさまざまな物質を検出し、認知症の症状と見られるものが他の病気から起こっていないかを絞り込み、認知症かどうかを判断します。

その他にも、脳の萎縮状態を見るために、脳の形を調べる形態画像診断のMRIやCT、脳の血流低下状態を見るために、脳の機能を調べる機能画像診断のSPECTなどの検査を行い、レビー小体型認知症に特徴的な脳の所見があるかどうか確認します。

また、症状によっては、レビー小体型認知症ではなくアルツハイマー型認知症やうつ病、パーキンソン病と間違えられる場合があります。症状だけでは判断が難しいので、なるべく早く検査を受けて病気を鑑別し、適切に治療を進めることが大切です。

6.レビー小体型認知症の方への対応

ご家族がレビー小体型認知症になったとき、以下のような対応を心がけるようにしましょう。

まずは、レビー小体型認知症について知る

まずは、レビー小体型認知症についての知識を深めましょう。知識が乏しいと、介護をしていて大変に感じることが多くなります。対応の仕方が間違っていると、本人との信頼関係が築けず、介護拒否を招きかねません。本人とご家族の双方にとって、少しでも快適な生活を続けるために、レビー小体型認知症がどういう病気なのか知ることが大切です。

症状別の対応

認知機能障害への対応

レビー小体型認知症では、穏やかな状態から急に興奮状態になるなど、無気力の状態や錯乱状態を一日の中で繰り返すことがあります。そのため、認知機能の変動が起きることを念頭に置いておく必要があります。ご家族や介護者が何かを本人に伝えたいときは、本人の調子がよい時に伝えるようにしましょう。調子が悪いときには、できる限りそばにいて見守り、何かあった時にすぐ対応できるように配慮するとよいです。

幻視への対応

幻視は、室内の環境が関係することが多いといわれています。そのため、室内の明るさを統一する、壁紙を柄付きのものではなく白や無地のシンプルなものにする、壁に洋服などをかけない、目立つものを置かないなど、室内の環境を整備するとよいです。

また、本人から幻視と思われる訴えがあった時に「そんなの見えない」「ただの妄想だ」などと否定したり、感情的に指摘したりしないようにしましょう。本人にとっては見えているので、気持ちを理解するように心がけることが大切です。虫や知らない人など、本人に見えているものによっては、恐怖を感じているかもしれません。その感情を汲み取り、安心して過ごせるように優しい言葉をかけたり、手を握ってあげたりして、寄り添って対応するようにしましょう。

パーキンソン症状への対応

パーキンソン症状によって、手足がふるえたり、筋肉がこわばったりして、体の動作が遅くなったり、姿勢やバランス感覚が悪くなったりします。その結果、転びやすくなりますので転倒を予防することが重要です。椅子からの立ち上がり、階段の上り下りという室内での日常動作には十分注意する必要があります。
できる限り段差をなくしたり、手すりをつけたりして室内環境を整備できるとよいでしょう。転倒すると骨折してしまうことも少なくありません。最悪の場合、寝たきりになってしまう可能性もあるので、転倒には注意する必要があります。

レム期睡眠行動異常症への対応

最初のレム睡眠は、就寝してから約90分後におとずれます。レム睡眠の際に、叫んだり、暴れたりするレム期睡眠行動異常症の症状が見られます。多くの場合は、10分以内に収まるので危険なことがないか見守るようにしましょう。

ただし、朝のレム睡眠は長く続くことがあり、異常行動が10分以上続く場合があります。そのため、部屋を明るくしたり、音楽をかけたりして自然に目が覚めることを行ってみましょう。

なお、体をゆすって起こすことは止めておくべきです。体をゆすると、夢と現実が混同して、より暴れてしまうことがあるので注意しましょう。日中に不安を感じたり、怖いテレビを見たりすると症状が悪化することがあるので、穏やかに過ごせるような環境を整えるのも対応策のひとつです。

7.ご家族だけでの対応に不安を感じたら

認知症の方の介護は長期にわたることがほとんどで、家族だけで解決しようとすると負担が大きくなる場合があります。自分たちだけで頑張ろうと抱え込んで家族が疲弊してしまうと、認知症の方ともよい関係が築けなくなり悪循環になる可能性があります。

認知症の方の介護で大切なのは、本人の気持ちを尊重することと、介護者の負担を減らすことです。もしご家族だけでの対応に不安を感じたら、介護サービスの利用を検討するなど、周囲を頼るようにしましょう。

認知症の症状や介護度にもよりますが、訪問介護やデイサービスなど自宅の生活を継続しながら受けられる介護サービスもありますし、近隣のショートステイや介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、グループホームを利用するのもひとつの手段です。

SOMPOケアの運営する介護付きホームやグループホーム、ケアハウスでは、認知症ケアに慣れたスタッフに見守られながら、他の入居者と生活して刺激を受けることができるので、認知症の方にとっても良い環境となっています。介護付きホームでは短期間の利用(ショートステイ)ができるところもありますので、ご家族だけで抱え込まずに、是非一度相談してみてはいかがでしょうか?

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記事監修者:大塚真紀

【経歴】

都内の大学病院勤務を経て、現在はアメリカ在住。育児のかたわら、医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作のほか、認知症の患者さんの診療経験を活かし、認知症に関する記事執筆や監修、最新の医学論文の翻訳なども行っています。認知症患者さんと介護者の方の負担が、少しでも軽くなるようにお役に立てればと考えています。

【保有資格】

医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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