認知症とは?認知症の種類から予防方法まで解説

認知症とひとことで言ってもさまざまな種類があり、発症の原因や症状、治療法などが異なってきます。
正しい予防や対応をするためにも、認知症の各種類について正しい知識を深めていくことが大切です。

今回は、認知症の種類やそれぞれの発症原因、また認知症の予防方法などについて解説します。

※この記事内での認知症予防とは、認知機能低下防止および認知症のリスク低減に有効と一般的に言われている対策の事例紹介や、認知症の早期発見・早期治療、進行抑制までを含んでいます。

1.認知症とは

まずは、認知症の基本的な情報と、老化による症状との違いについてお伝えします。

認知症と老化による物忘れの違い

認知症とは、さまざまな原因によって脳が萎縮したり、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害がきっかけで発症する病気です。認知症になると、認知機能が低下したり、体を動かすことが難しくなったりして、日常生活に支障が出てきます。

認知症の症状としてよく知られている記憶障害は、いわゆる物忘れのことを指します。老化によって物忘れが多くなることはありますが、認知症の場合は老化によるものとは異なります。
例えば、老化であれば、昨日食べた食事の内容を思い出せない、というような忘れ方をしてしまいますが、認知症の記憶障害による物忘れでは、食事をしたこと自体も忘れてしまうのです。

認知症による記憶障害は、老化によるものと違い、日常生活に支障が出る可能性が高いです。体験したことや、約束したこと自体を忘れている場合には、認知症の症状である記憶障害を疑った方が良いでしょう。

2.認知症の種類とそれぞれの原因

ひとことで認知症といっても、さまざまな種類があります。ここでは、認知症の中でも代表的な四大認知症について説明します。

アルツハイマー型認知症

認知症の中で最も多いものが、アルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が異常にたまり、脳全体を萎縮させることが原因で発症します。まず、脳の中で記憶をつかさどる海馬とよばれる部分から萎縮が始まることが多く、徐々に脳全体が萎縮していきます。

初期から記憶障害の症状が出ることが多く、また進行していくにつれて身体機能にも影響が出てきます。中期になると、自分で服が着られなくなったり、お茶が入ったペットボトルのフタが開けられなくなったりする失行が見られます。後期になると、相手が家族であっても誰なのか認識できなくなり、より手厚い介護が必要です。歩行能力や食事動作もかなり衰え、寝たきりになってしまう場合もあります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体とよばれる異常なタンパク質が脳の神経細胞に溜まり、神経細胞を壊してしまうことが原因で発症してしまいます。

レビー小体型認知症では、記憶障害の症状が目立たないことがあります。主な症状は、手足が震える振戦、筋肉が強張り体がスムーズに動かなくなる筋固縮などのパーキンソン症状や、実際にはいないのに本人にははっきりと見える幻視、何も鳴っていないのに音が聞こえる幻聴です。また、一日の中で症状の変動がみられることも、レビー小体型認知症の方に見られる特徴の一つです。穏やかに過ごしていると思っても急に興奮状態になったり、錯乱したりといったことを一日の中で繰り返すこともあります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳の血管障害が原因で起こる認知症です。主な脳血管疾患である脳梗塞や脳出血の発生箇所、障害の程度によって、認知機能が著しく低下する場合やそれほど低下しない場合があるなど、症状が人によって異なることが多いため、違った色が入り混じっているときに使われるまだらという言葉を用いて「まだら認知症」とよばれることがあります。

脳血管性認知症の主な症状は、感情が不安定になり些細な出来事で涙が出てしまう感情失禁をはじめ、脳の障害が発生した箇所にもよりますが、他の認知症と同じく理解力や判断力、記憶力などの認知機能の低下、手足に麻痺や感覚の障害など起きる神経症状などが見られます。脳血管疾患の再発をきっかけに、突然認知機能が悪化する場合もあり、再発の予防が重要です。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳に異常なたんぱく質がたまり、脳の前頭葉と側頭葉のいずれかの神経細胞が壊れ、脳が萎縮することが原因で起こる認知症です。進行が進んでいくと、前頭葉、側頭葉ともに萎縮していきます。

主な症状としては、家事をしなくなったり、質問しても真剣に答えなくなったりする自発性の低下、物の名前が出にくくなる言語障害、他人への興味がなくなる感情の麻痺などが挙げられます。また抑制が効かなくなり、欲求を抑えられずに本能のまま行動することもあります。本人に罪悪感はないものの、場合によっては礼儀に欠けた行動をとったり、暴力をふるったりして周囲への配慮に欠けた行動をとることもあります。症状によっては、単に性格が変わっただけだと思われ、認知症の発見が遅れがちになることが多いのも、前頭側頭型認知症の特徴です。

3.その他の認知症の種類とそれぞれの原因

代表的な四大認知症(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症)以外にも、認知症とされている病気や認知症と似たような症状が出る病気があります。
具体的には、アルコール性認知症や正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症などが挙げられます。四大認知症に関しては根治的な治療法はありませんが、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症などは適切な治療で治る可能性があります。

アルコール性認知症は、多量のアルコール摂取が原因で起こる認知症です。多量のアルコールを摂取すると、ビタミンB1が欠乏して脳の神経細胞の働きが悪くなるため、注意力や記憶力が低下したり、感情のコントロールができなくなったりするといった認知機能の低下が起きます。

正常圧水頭症は、脳の中にある脳室とよばれる場所に脳せき髄液が溜まることによって発症しますが、手術で治る可能性があります。正常圧水頭症では、注意力や意欲の低下、歩行障害、尿失禁などの症状が出ます。

慢性硬膜下血腫は、転倒などが原因で、脳を覆っている硬い膜と脳の間に血液が溜まってしまう病気です。溜まった血液によって脳が圧迫されて、記憶障害や歩行障害、尿失禁などの症状が出ますが、手術によって溜まった血液を除去できれば治ることがあります。

甲状腺機能低下症とは、甲状腺の働きが低下することにより甲状腺ホルモンの分泌量が減る病気です。甲状腺ホルモンは全身の新陳代謝を活発にするはたらきがあり、分泌量が低下すると思考力や記憶力の低下だけでなく、疲労感、むくみ、便秘、脱毛、体重増加などの症状が出ます。

また、認知症は高齢になると発症しやすくなると考えている人も多いかもしれませんが、65歳未満でも認知症を発症することがあります。65歳未満で認知症を発症した場合には若年性認知症とよばれます。若くして認知症を発症してしまうと、進行していくにつれて働くことも難しくなり、経済的な影響も大きいといわれています。

4.認知症の治療について

現在、認知症に根本的な治療法はありません。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の場合は、薬を投与して進行を遅らせたり、リハビリテーションによって筋力の低下を防いだり、脳の活性化を図ることで、歩行障害や記憶障害などの症状の進行を抑制できますが、根本的に病気を治すまではできません。

一方、前述の通り認知症に似た症状が現れる正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症などは、治療可能な場合が多いです。

また、認知症までいかないものの、物忘れが多い、以前に比べて認知機能の低下があるなどの自覚症状がある場合は、軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)かもしれません。軽度認知障害とは、認知症になる一歩手前の段階にある状態を指します。認知症の症状として見られる理解力や判断力などの認知機能の低下が見られるものの、日常生活に支障をきたすほどではない状態のときに軽度認知障害と診断されます。

軽度認知障害の段階から予防活動をおこなうことで、認知症の進行を遅らせることができると考えられています。軽度認知障害から認知症へ進展する確率は年間10%と言われている一方で、健常な状態に戻る確率は14-44%という報告もあります。つまり、軽度認知症外の段階で適切な対策を取ることができれば、発症を予防できる可能性が高まるのです。

具体的には、健康的な食事や運動を取り入れた生活習慣の改善や認知機能トレーニングを受けることが予防につながります。軽度認知障害の場合、適切な予防に取り組むことで、認知症への移行を防げることもあるので、早期発見し適切に対処することが大切です。何か気になることがあれば、かかりつけ医等に相談するようにしましょう。

5.認知症を予防するためには

それでは、認知症を予防するためにおススメする、日常生活での取組みをご紹介します。

習慣的に運動をする

定期的に運動を続けることは、認知症だけでなく、肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などさまざまな病気の予防につながります。認知症の予防に適した運動は、散歩やウォーキングなどの有酸素運動です。有酸素運動をすることで、全身の血行が良くなり脳細胞を活性化させることができます。

運動というと、ジムに通ったり、長い時間走ったりしなくてはいけないと考える人もいるかもしれませんが、認知症の予防のためには毎日続けることが大切なので、少しの散歩やウォーキングからで構いません。今まで歩く習慣がなかった人は、まずは電車を早めに降りて一駅分の距離を歩いたり、エレベーターではなく階段を使うことから始めてみてもよいかもしれません。

習慣的に脳を使う

日頃から脳を使う習慣があると、認知症を予防できると考えられています。ゲームやクイズ、パズル、計算などは、脳を使うために有効な手段です。
また、料理や工作などもおすすめです。地域によっては、高齢者を対象とした料理教室や絵画教室などを開催している場合があるので、参加してみるのもよいかもしれません。

生活習慣を整える

バランスの良い食事を心がけたり、十分な睡眠をとったりして健康的な生活習慣に整えることは、認知症の予防につながります。糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病は、アルツハイマー型認知症を発症するリスクを増加させることが分かっています。また、脳梗塞は生活習慣の悪化によって引き起こされる可能性が高く、発症してしまうと脳血管性認知症につながる可能性もあります。

生活習慣を整えるためには、まずバランスの良い食事を心がけることが大切です。魚や緑黄色野菜、果物など栄養が豊富に含まれているものを食べる、塩分の摂りすぎに注意する、間食を控えるなどは、認知症の予防に効果的です。また、アルツハイマー型認知症を引き起こす原因のアミロイドβというたんぱく質は、起きている時間に増え、寝ている時間に減ると言われています。そのため、睡眠時間が短いとアミロイドβが脳に蓄積されていき、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが高まります。適切な睡眠時間にも個人差はありますが、最低でも1日6時間は寝るようにしましょう。

6.少しでも困ったことがあったら

認知症は、種類によって発症する原因や症状が異なります。現在、認知症の根本的な治療法は見つかっていないため、発症を防いだり、早期発見し症状の進行を遅らせる適切な治療やリハビリテーションを受けたりすることが大切です。

認知症の方の介護は長期にわたることがほとんどです。そのため、ご家族だけで解決しようとすると負担が大きくなる場合があります。自分たちだけで頑張ろうと抱え込んでご家族が疲弊してしまうと、認知症の方ともよい関係が築けなくなり悪循環になる可能性があります。認知症の介護で大切なのは、本人の気持ちを尊重することと、介護者の負担を減らすことです。ご家族だけでの対応に不安を感じたら、介護サービスの利用を検討するなど、周囲を頼るようにしましょう。

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記事監修者:大塚真紀

【経歴】

都内の大学病院勤務を経て、現在はアメリカ在住。育児のかたわら、医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作のほか、認知症の患者さんの診療経験を活かし、認知症に関する記事執筆や監修、最新の医学論文の翻訳なども行っています。認知症患者さんと介護者の方の負担が、少しでも軽くなるようにお役に立てればと考えています。

【保有資格】

医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

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