
脳血管性認知症とは?症状や原因、予防方法について解説
この記事では、認知症の一種である「脳血管性認知症」の症状や特徴などを説明するとともに、その原因や他の認知症との違い、予防法を解説します。最後まで読めば、脳血管性認知症に関する知識が深まり、適切な対応や予防ができるようになります。
認知症が進行することで起きる症状は、人によって様々です。
今後の対応をスムーズにおこなうためにも、症状を把握しておくことが重要になります。
また、症状の早期発見は認知症において非常に大きな意味を持ちます。
今回は、認知症による主な症状や進行段階ごとの状態など、認知症の進行に関する基本的な内容について解説します。
目次
認知症は、早期発見、早期対策が大切といわれています。認知症の早い段階で気付き対応できると、症状の進行を遅くしたり、症状を改善したりできる可能性があるためです。
認知症を早期発見するためにはどのような症状に気をつければよいのでしょうか。例えば、認知症で多く見られる 記憶障害の症状ですが、加齢による物忘れとは異なります。加齢による物忘れでは、本人に忘れている自覚があり、体験の一部を忘れるだけです。探し物の場合には自分で見つけようと努力しますし、日常生活に支障はありません。
一方で、認知症による 記憶障害の場合は、本人が記憶を喪失している自覚がなく、体験した事実の全てを忘れてしまっています。わかりやすい例を挙げると、加齢による物忘れでは朝食に何を食べたか思い出せないことがありますが、認知症による記憶障害では朝食を食べたかどうか自体がわからなくなってしまいます。探し物も自分で探すのではなく、「誰かに盗まれた」などという疑念を誰かに向けてしまうことがあり、日常生活にも支障をきたす恐れがあります。
加齢による物忘れ | 認知症による記憶障害 | |
---|---|---|
進行 | 進行しない | 進行する |
自覚 | ある | ない |
物事の判断力 | 低下しない | 低下する |
忘れ方の違い | 体験の一部を忘れる(朝食に食べたものを忘れるなど) | 体験した事実すべてを忘れる(朝食を食べたことを忘れる) |
日常生活 | 支障はない | 支障がある(探し物を誰かに盗まれたなど誰かに疑念を投げかけてしまうなど) |
感情 | 大きな変化はない | 情緒不安定になったり、意欲の低下がみられたりすることがある |
認知症の早期発見のコツは、半年から1年に1回程度を目安に、定期的に認知機能のチェックを行うことです。最近では、自分でパソコンやスマートフォンなどを使って自宅で気楽に認知機能チェックをすることができるのでうまく活用してみましょう。
認知症や介護サービスの情報を発信している「SOMPO笑顔倶楽部」でも、認知機能をチェックできる「あたまの元気度チェック」があります。ぜひ活用してみてください。
定期的にチェックすれば自分の認知機能の変化に早めに気付くことができます。ただし、自宅での認知機能チェックでは認知症の診断はできないので、気になる症状がある場合、または家族が症状に気付いた場合には早めに専門機関を相談するようにしましょう。
早期発見のためには、認知症が疑われる症状にはどんなものがあるかを知っておく必要があります。ここでは、代表的な認知症の症状について紹介します。
認知症の症状には、「中核症状」と「周辺症状」があります。周辺症状は「行動・心理症状(BPSD)」とも呼ばれます。
認知症における中核症状とは、認知症で病的な変化や病気などによる脳の障害により、脳のはたらきが低下することによって起きる症状を指します。中核症状には、記憶障害や見当識障害、実行機能障害などが含まれます。中核症状が起きると、自分の身の周りで起こっている現実を正しく認識できなくなります。
認知症で見られる記憶障害とは、新しいことを覚えられなくなり、ついさっき聞いたことでさえ思い出せなくなる症状です。病状が進むと、以前の記憶もなくなってしまう可能性があります。例えば、同じ場所に何度も行く、同じことを何度も言う、約束を忘れる、買い物で同じものを買ってしまうなどの症状が出ます。
見当識とは、現在の年月や季節、時刻、自分のいる場所など基本的な状況を認識することです。認知症における見当識障害では、時間や季節がわからなくなる、迷子になる、自分の年齢がわからなくなる、家族などの近しい人でも誰なのか分からなくなる、などの症状が出ます。
実行機能障害では、自分で計画を立てたり、予想外の状況に対応することが難しくなります。例えば、夕食で味噌汁とおかずを作るなど、複数の調理を並行して進められない、などの症状が出ます。
認知症になると判断力や理解力が低下し、些細な変化や普段と異なる状況に対応できなくなります。例えば、自動販売機や銀行ATMなどの使い方がわからなくなる、テレビ番組の内容が理解できない、運転のミスが多くなるというような症状が出ます。
失行は、学習して身につけた動作や順序がある作業ができなくなる症状です。例えば、鍵を開けられない、洋服を着られないなどの症状が出ます。失認とは、対象となる物を五感で正しく捉えることができない症状です。例えば、目の前にあるものが見えていても、脳が形や大きさなどを正しく認識できず物事の理解が困難になるといった症状が出ます。失語では、読む、書く、聞く、話すという行為が正常にできなくなるため、他人との意思疎通が難しくなります。
参照:資料7-1 認知症と軽度認知機能障害 と軽度認知機能障害について
中核症状が思考や判断などの認知機能に関連した症状であるのに対して、周辺症状は行動や感情など、必ずしも認知機能に関わらない部分の症状を含みます。以下に、代表的な症状を紹介します。
介護者に対して、暴力的な感情を向けるような症状が出ることがあります。時に、暴力や暴言、介護への拒否も見られるようになり、介護を行うことがむずかしくなる場合があります。
憂うつな気分、不安、意欲低下などの症状が出ることがあります。抑うつ症状が出ると、健康状態や人生に対して悲観的になり、活動量が低下してきます。記憶障害のようにわかりやすい症状よりも先に、抑うつ症状が出る場合もあります。
認知症の症状の進行と共に、今までよく訪れていた場所や自宅周辺でも迷ってしまうことがあります。
財布を盗まれた、または誰かが隠したというような、誰かに物を盗られたという妄想が見られることがあります。身近な介護者を、物を盗られたという妄想によって疑うこともあります。嫌がらせをされている、というような被害妄想が起きる場合もあります。
本来は見えないはずの物や人が見えるというような幻視の症状が出ることがあります。また、誰かが音楽を聞いている、ラジオを流している、というような幻聴の症状が起きる場合もあります。
認知症の方が安心して口腔ケアを受けられるようにするためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。それぞれのポイントについて説明します。
認知症進行の最も初期の状態を前兆、または軽度認知障害(MCI)といいます。認知症でよく知られているような物忘れの症状は起きるものの、日常生活には影響がほとんどなく、認知症と診断はできません。
軽度認知障害の特徴としては、同年代の人に比べて物忘れの程度が強い、物忘れが多いという自覚がある、などが挙げられます。日常生活に支障が出ないので、加齢による物忘れと考えてしまう人も多いですが、軽度認知障害の人の約10-15%が認知症に移行するといわれているので注意が必要です。
一方で、軽度認知障害の段階で適切な対策をすることで、認知症に移行することなく症状が改善する場合もあり、16%~41%の人が改善したという研究も出ています。
認知症の初期では、前兆の段階に比べると日常生活に支障をきたすようになります。認知症の初期では、物忘れというレベルではなく、同じことを繰り返し聞いたり、直前に話していたことや行動を忘れたりしてしまいます。今まで問題なく行えていた仕事や家事が難しく感じることもあります。
また、日常作業をスムーズに行えない、頻繁に物をなくす、判断力が低下する、周りの人と話がかみ合わない、などの症状が出ます。今までできていたことができなくなって自信がなくなり、気持ちが落ち込み、意欲がなくなることもあり、認知症ではなくうつ病を疑われる場合もあります。
記憶障害が進行し、新しいことは覚えられなくなります。食事をしたことを忘れて食べていないと言ったり、住所や電話番号、日付、自宅の住所などがわからなくなったりすることがあります。日常生活に支障が出るため、自立した生活が難しく、サポートが必要になります。
コミュニケーションをとることが難しくなり、生活の全てにおいて介助が必要になります。意欲の低下、失禁、食事を飲み込めない、筋肉がこわばる、うまく歩けない、などの症状が見られるようになり、寝たきりの状態になることもあります。認知症の末期まで進行すると免疫力も低下するので、感染症にもかかりやすくなります。
「もしかして?」という行動や発言が増えた場合や、医師から認知機能の低下が診断された場合、周囲の人はどのようにご本人に接すればよいのでしょうか。以下に、ご家族や周囲の方が気をつけたいポイントを紹介します。
認知症の人の行動をよく観察し、本人が何をしたいのか、どのような気持ちなのかを汲み取るようにして接しましょう。認知症の初期では、本人も今までのように日常生活を送れないことに対して不安やイライラ、といった気持ちを抱いていることが多いです。家族など周囲の人にサポートしてほしくても言い出せないこともあります。本人の意思を汲み取り、サポートしながら信頼関係を築くことで、本人だけでなく介護者のストレスも減るかもしれません。認知症が進行したら、本人の訴えがなくても、ソワソワしていたらトイレに行きたがっているのではないか、今の介護を嫌がっていないかなど、本人の立場となって考え配慮することを心がけましょう。
認知症になると、今までスムーズに行えていたことに多くの時間がかかってしまいます。しかし、認知症だからといって何もできないわけではありません。急かしたりせずに本人のペースに合わせることが大切です。認知症による記憶障害の影響で、本人が覚えていないことを無理に問いただすようなこともしないようにしましょう。
認知症のある方の介護は、心身共に負担が大きく、疲れが溜まります。大切なのは、1人で抱え込まずに周囲の人や専門機関に相談することです。相談できる専門機関には、保健センター、地域包括支援センター(高齢者相談センター)、在宅介護支援センターなどがあります。
また、認知症ケアに対応している老人ホームや(看護)小規模多機能型居宅介護、認知症ケアに特化した認知症デイサービスやグループホームなどの利用も検討してみましょう。家族の負担が少なくなるだけでなく、生活環境が整うことによって認知症の方の自立度が高くなる可能性があります。例えば、グループホームは認知症ケアに特化したホームです。9名以下で、食事の準備や掃除、洗濯などを分担しながら共同生活を送り、本人の能力や希望に合わせた自立生活をサポートしています。SOMPOケアの「介護なんでも相談室」では、介護や認知症についてのお困りごとや、老人ホーム等への入居に関するご相談も承っています。ぜひお気軽にお問合せください。(フリーダイヤル) 0120-37-1865
認知症は早期発見と早期対策が大切です。認知症の前段階、いわゆる軽度認知障害の場合には早期に対策をすれば症状が改善する可能性があるためです。一言に認知症といっても、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症、内分泌疾患、感染症などさまざまな疾患が認知症状の原因として挙げられます。認知症状の原因となる疾患のなかには、早期に発見し治療をすれば治るものもあります。
また、早期に対策することによって治らなくとも、症状の進行を緩やかにすることができると考えられているものもあります。早期の対策は介護者の負担も減らすことができる可能性もあります。もし、本人の様子が今までと違う、認知症のような症状がでているなど、何か気になることがあれば、早めに専門機関に相談するようにしましょう。
この記事では、認知症の一種である「脳血管性認知症」の症状や特徴などを説明するとともに、その原因や他の認知症との違い、予防法を解説します。最後まで読めば、脳血管性認知症に関する知識が深まり、適切な対応や予防ができるようになります。
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