
前頭側頭型認知症とは?発症原因や詳しい症状について解説
認知症の一種類である前頭側頭型認知症の症状や特徴を説明するとともに、その原因や他の認知症との違い、適切な対応方法を解説します。最後まで読めば、前頭側頭型認知症に関する知識が深まり、適切な対応や予防ができるようになります。
厚生労働省が発表した「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」によると、認知症有病者の数は2025年に約700万人となると推測されています。また、2012年時点で高齢者の約4人に1人は認知症または軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)とされています。
軽度認知障害(MCI)は記憶喪失が主な症状ですが、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とまでは診断できない状態を指します。正常な認知と認知症の中間の状態ではあるものの、今後認知症を発症する可能性がある状態といえるでしょう。
この記事では、認知症予備軍ともいわれる「軽度認知障害(MCI)」の症状や特徴などを説明するとともに、その診断基準や対処法を解説します。
目次
軽度認知障害(MCI)とは、主たる症状が物忘れであるものの認知症とは診断できない状態を指します。年間、軽度認知障害の方の10~30%が認知症に移行するとされており、認知症の前段階と考えられています。
厚生労働省は「認知症施策の総合的な推進について」で、軽度認知障害(MCI)を次のように定義しています。
また、同省が運営する「e-ヘルスネット」では、次の定義が記載されています。
つまり、軽度認知障害(MCI)とは、物忘れがみられるものの、記憶力の低下以外で認知機能の障害は見られず、日常生活への影響はあまりない状態です。ただし、軽度認知障害(MCI)が見られる方のうち、一定割合の方は認知症に移行するとされているため、予防に努めるなどの取り組みが必要です。
出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「軽度認知障害」
軽度認知障害(MCI)の症状は、初期の認知症の方に出る症状と似ています。両者の大きな違いは、認知機能の低下によって社会生活や自立した生活に支障が出るかどうかです。
以下、具体的な症状を詳しく見ていきましょう。
1日のうちに同じ話を何度もしたり、少し前に聞いたことを忘れて同じ質問を繰り返したりするなどの症状が出ます。
記憶力の低下によって忘れ物や探し物が多くなります。また、過去の出来事や日々の出来事を思い出すのが難しくなったり、アポイントメントや予定を忘れたりするなどの症状が現れます。
これまでは頻繁に外出や、近所の人との交流が行われていたのに、その数が減って段々と無気力になります。また、外出するときに服装や髪型を気にしないといった行動の変化が出ます。
今までできていた家事で手間取ってしまったり、料理で味付けを忘れてしまったりするなど、家事全般において段取りが悪くなり、スムーズにこなせなくなります。
一般社団法人日本神経学会の「認知症疾患診療ガイドライン2017」で発表された、軽度認知障害(MCI)の診断基準は次のとおりです。
これらの基準を満たす場合に、軽度認知障害(MCI)と診断されることがあります。診断は専門家によって行われ、医療機関によって診断項目が異なる場合があります。
出典:一般社団法人日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」
軽度認知障害(MCI)と診断された場合、認知症へ移行しないようにするためにはどのような対処法があるのでしょうか。具体的に説明します。
認知症の発症・進行を遅らせるためには、早期発見が最も重要です。軽度認知障害(MCI)の症状でも説明したように、同じ質問を繰り返す、今までできていたことがスムーズに行えなくなるといったような、いつもとは違う変化を感じた段階で医療機関に相談するとともに、生活習慣を改善するなどの対策を施します。
なお、早期発見にはご家族などの近親者による観察が重要です。例えば「料理が得意だったのに味付けが極端におかしくなった」「薬の飲み忘れが目立つようになった」などの些細な変化を見逃さず、早めに医療機関で受診するようにしましょう。
認知症を発症するリスクの一つに、栄養の偏りや低栄養があります。そのため、食習慣の改善は認知症の進行を防止する観点から効果的といえます。
厚生労働省の「健康寿命をのばそう スマート・ライフ・プロジェクト」では、心と身体の健康の維持・増進には栄養バランスの取れた食生活が大切だと指摘しており、主食・主菜・副菜を組み合わせた健康な食事を摂ることを推奨しています。
出典:厚生労働省「健康寿命をのばそう スマート・ライフ・プロジェクト」
有酸素運動と筋力トレーニング、バランス運動の3つを組み合わせた運動を習慣化することも効果的とされています。
項目 | メニュー例 |
---|---|
有酸素運動 | ウォーキング、サイクリング、縄跳び、水中ウォーキングなど |
筋力トレーニング | 腕立て伏せ、腹筋、スクワット、階段の上り下りなど |
バランス運動 | 片足立ち(30秒間)など平衡感覚のトレーニングなど |
出典:なかまぁる「【対策編】軽度認知障害(MCI)について専門家が徹底解説」朝日新聞社
決して無理のない範囲で行い、怪我には十分に注意して取り組んでください。
初老期に起こるさまざまな喪失体験(定年退職、子どもの独立など)がきっかけで外出する機会が減り、社会的交流(家族以外の人と関わりや会話など)が少なくなると、軽度認知障害(MCI)や認知症を罹患するリスクが高まります。ご家族との交流だけでなく、地域に出て他の方と交流する機会を持ち、意識して地域社会とのつながりを維持するように心がけましょう。
時間がある場合は、登下校児童の見守りボランティアや、趣味のサークルなど、自身が楽しめる活動に積極的に参加したり、要支援状態と認定された方であれば、介護予防通所介護といった市町村の実施する介護予防・生活支援サービス事業を利用したりすると良いでしょう。
SOMPOケアでは認知機能低下の抑制に有効な「SOMPOスマイル・エイジングプログラム」を提供しています。運動や食事のほか、社会参加の観点から生活習慣を改善し、認知機能低下抑制を目指すプログラムです。ご興味をお持ちの際はぜひこちらもご覧ください。
軽度認知障害(MCI)と診断された場合、どのようにサポートしていけば良いのでしょうか。以下、適切な対応を説明します。
適切なサポートを行うためには、障害に対する理解が不可欠です。軽度認知障害(MCI)の情報を収集し、障害の特徴や予想されるリスクに対する理解を深めましょう。
また、認知機能低下の程度は人によって異なります。十分に本人の理解度や認知状態を観察し、自立している部分はご本人に任せるようにしましょう。
軽度認知障害(MCI)は認知機能の低下が軽度ということもあり、ご本人が自分の状態を自覚・理解していることが多いため、ご本人の自尊心を傷つけるような対応はしないように心がける必要があります。
支える側のご家族にとっては不安なことかもしれませんが、最も不安に感じているのは診断されたご本人です。軽度認知障害(MCI)と診断されたとしても、ご本人が現状を受け止め、認知機能低下の進行や認知症への移行防止に向けて前向きになれるよう、ご家族をはじめ周囲の人々で協力して支えていくことが重要です。
軽度認知障害(MCI)があることをご本人が気にして、ご家族や他の方とのコミュニケーションの機会が減ってしまうと、認知症の進行・予防の観点からは逆効果です。ご本人とのコミュニケーションを大切にし、努めてその機会を作るようにしましょう。また、ご本人が自身の気持ちを話しやすくするなどの環境整備が大切です。
軽度認知障害(MCI)に関する知識があったとしても、ご家族だけで長期的に対応・支援していくことは困難です。福祉や介護の専門職がいる地域包括支援センターなどの支援機関とつながり、何かあったときにすぐに相談できる体制を整えておきましょう。
軽度認知障害(MCI)の可能性がある場合は早めに医療機関を受診し、早期発見・治療することが大切です。まずはかかりつけ医に相談して受診するか、地域包括支援センターに相談してみてください。
SOMPOケアでは、ご自宅で生活する高齢者を対象に在宅サービスを提供しています。通所介護(デイサービス)では、専門性の高いスタッフのサポートのもと、他のご利用者さまとの交流を楽しみながら、お一人おひとりに適した機能訓練や知的活動の機会を設けることができます。
そのほかにもSOMPOケアでは、介護付きホームやサービス付き高齢者向け住宅などの高齢者向けの住まいも運営しています。自宅での生活に不安がある方や、早めに要介護状態に備えたい方は、介護付きホーム等への入居も検討してみてください。
またSOMPOケアでは、認知症に関するご相談を受け付ける「認知症サポートダイヤル」も設けています。認知症のご不安やお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談してみてください。
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SOMPOケアの「認知症サポートダイヤル」:0120-97-5433(フリーダイヤル)
現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。
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