介護食とは?種類や作り方、作るときのポイントを解説

ご家族が介護を必要とする状態(以下、要介護状態)になった場合、どのような食事を用意すればいいのか、食事面でどのような点に気をつけたら良いのか、どのような介護食があるのか、不安に思う方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、介護食の概要を説明するとともに、介護食を作るうえでの注意点や食事介助の方法などを解説します。

1.介護食とは?

介護食とは、咀嚼(そしゃく:食べ物を噛む)や嚥下(えんげ:食べ物を飲み込む)の機能が低下した高齢者でも、食べやすいように工夫された食事を指します。高齢者は加齢にともない、咀嚼や嚥下の機能が低下し、食事にストレスを感じる方もいます。

例えば、咀嚼・嚥下がしづらい食べ物として、以下のものが挙げられます。

種類 食品例
パサパサしたもの 焼き魚、ゆで卵、高野豆腐、パンなど
固いもの、繊維質なもの たこ、いか、ごぼう、れんこんなど
べたつくもの、はりつきやすいもの もち、焼きのり、わかめなど
口の中でまとまりにくいもの かまぼこ、こんにゃく、ピーナッツなど

上記のような食べにくい食品は、飲み込むことが難しく、喉に詰まらせたり、むせたりすることがあります。

2.介護食の目的や重要性

食事・介護食にはどのような目的があり、どのような点が重要視されているのでしょうか。
以下、詳しく見ていきましょう。

人にとって食事とは

食事は、栄養素を摂取し身体の健康を維持・増進することを目的として行われる営みの一つです。また、食事はただ単に食べるだけではなく、季節感あふれる旬の食材が食卓を彩ることによって四季を感じられ、気持ちが豊かになる効果も期待できます。

高齢になり、咀嚼や嚥下機能が低下したとしても、おいしい食事を摂ることで幸せを感じられるよう工夫することが、生活の質的向上の観点からも重要です。

不足しがちな栄養素を摂る

高齢になると、次の理由などにより食事が疎かになり、栄養が不足しがちになる方がいます。

  • 胃腸などの消化機能の低下
  • 咀嚼や嚥下機能の低下
  • 食への興味関心の低下

食事が疎かになると低栄養状態になり、身体機能が低下していきます。そこから健康状態の悪化に繋がり、要介護状態になるリスクが高まる可能性があります。また、高齢者は自らの力で意識的に栄養を摂り、栄養状態を管理することが難しい状況になることがあるため、視覚的にも食べたくなるような工夫を施すなど、食事環境を整える必要があります。

口を動かして食べることが大切

点滴や胃ろうなどで栄養を摂る方法もありますが、食べ物を口に含み咀嚼や嚥下が可能であるなら、経口摂取(=口で食べ物を食べ、栄養を取り込むこと)を優先させることが大切です。経口摂取をすることで唾液がきちんと分泌され、口腔環境の悪化を防ぐほか、胃腸など消化器官にも刺激をあたえることもできます。

本来、点滴や胃ろうは、咀嚼・嚥下機能に問題があり、食べ物を口に入れても飲み込むことができず、誤嚥(食べ物が誤って喉頭と気管に入ってしまう状態)するリスクがある方を対象としています。要介護状態になったとしても自ら食べる力があるのならば、介護食の導入を検討し、できる限り経口摂取を継続できるようにしましょう。

3.介護食の種類

では、介護食にはどのような種類があるのでしょうか。以下、形状や作り方、注意点を解説します。

刻み食

刻み食とは、通常の食事を細かく刻んだものです。咀嚼機能は低下しているものの嚥下はできる高齢者に向いています。また、歯が悪くなっていて通常食が食べにくい、口を開けづらい方にも有効です。

作り方

刻み食は、高齢者の咀嚼・嚥下機能の状態によって刻む大きさを調整します。1cmから2cm程度の大きさに刻むこともあれば、5mm以下にすることもあります。

注意点

刻み食は細かく刻んで調理しており、口の中に入れたとしてもまとまりがないため、飲み込むことが難しい方にとっては、食べ物が気管に入ってしまう誤嚥のリスクがあります。誤嚥によって食べ物が肺に入ってしまうと、誤嚥性肺炎に繋がる恐れがあるので注意が必要です。

衛生管理に十分注意したうえで、柔らかくした食材を刻み、あんかけやソースなどでばらばらせず、まとまった状態にすることで、刻み食を安全に食べることができます。

軟菜食

軟菜食とは、食べ物をよく煮込む、または茹でるなどして、歯茎(歯ぐき)や舌でつぶせるくらいの柔らかい状態にした食事です。次のような方に向いています。

  • 咀嚼・嚥下機能が低下している
  • 胃腸が弱い

上記に該当する方は、軟菜食の導入を検討しましょう。

作り方

軟菜食の代表例はお粥です。固さの度合い、お米と水の割合の違いにより、三分粥、五分粥、七分粥、全粥などと呼ばれます。高齢者の状態に合わせて、どの程度の割合にするか決めると良いでしょう。

野菜は調理時に包丁を入れて繊維質を柔らかくし、お肉は薄切り肉や挽肉を使います。果肉の固い果物はスライスしてペースト状にするか、煮込んで柔らかくするようにしましょう。

注意点

柔らかい形状にしなくてはならないため、調理に向かない食材があります。具体的には次のような食材です。

  • 生野菜(キャベツ、レタス、きゅうりなど)
  • 食物繊維の多い野菜(ごぼう、たけのこ、もやしなど)
  • 厚めのお肉

ムース食

ムース食とは、通常食をいったんすりつぶしたうえで再成形した食事です。舌でつぶせる程度の硬さとなるため、咀嚼能力が低下している方におすすめです。

作り方

通常食をすりつぶし、とろみを付けてから、任意の形に成形します。作る手間はかかるものの、色を付ける、任意の形にするなど、再成形時に工夫を加えることが容易であるため、刻み食やミキサー食と比べて通常食と同じような見た目(おいしそうな色や形)にできます。食欲を損なわず、季節を感じられるような食事を作ることも可能です。

注意点

調理・再成形に手間がかかってしまう点が大きなデメリットです。せっかく調理したのに時間がかかって冷めてしまったり、食材の固さの調節がうまくいかず、結果として食べてもらえなかったりすることもあります。また、見た目を重視すると工程が長くなってしまいます。

ミキサー食

通常食にスープや出汁を加えてポタージュ状(液状)にしたものです。咀嚼・嚥下機能ともに低下した方に向いています。他の食事よりも水分量が多いことから、むせてしまうこともあるため、場合によっては適度にとろみを追加します。

作り方

通常食にスープや出汁を加えてミキサーにかけ、ポタージュ状にします。これにとろみ剤を加えて、適度な粘り気を付ける方法もあります。

注意点

ポタージュ状であるため、どうしても見た目が悪くなってしまい、食欲を減退させる恐れがあります。また、水分を加えることで、食事量がかさ増しされ、本来必要な食事量を摂取する前に、満腹になってしまう場合があります。さらに、液状であるため飲み込むときに高齢者がむせる恐れがあり、注意が必要です。

4.市販されている介護食

ここまで介護食の種類を紹介してきましたが、どのような介護食を作ったらいいのか迷ってしまう場合もあるかもしれません。
そんなときは、市販されているスマイルケア食やユニバーサルデザインフード、レトルト食や冷凍食品を利用する方法もあります。以下、それぞれの概要を解説します。

スマイルケア食

スマイルケア食とは、団体や業者によって異なっていた介護食の定義や範囲を農林水産省が整理した枠組みです。咀嚼や嚥下機能、また栄養の摂取に関して問題がある方々にも混乱なく食べるものを選んでもらえるよう、考え方を整理したものだといえます。

具体的には次のとおりです。

青マーク 噛むこと・飲み込むことに問題はないものの、健康維持上栄養補給が必要な方向けの食品
黄マーク 噛むことが難しい方向けの食品(2~5の4段階に分かれる)
赤マーク 飲み込むことが難しい方向けの食品(0~2の3段階に分かれる)

介護食の選び方がこのように整理されたことによって、高齢者の身体の状態に合った介護食を購入する際の判断基準が生まれました。

ユニバーサルデザインフード

通常の食事から介護食まで幅広く使うことができる、食べやすさに配慮した食品の全般を指します。

  • 調理済みのレトルト食品
  • とろみを付けるための調整食品 ほか

ユニバーサルデザインフードはパッケージにロゴマークが記載されており、購入する前にそれをチェックすることで、区分形状(容易にかめる、歯茎でつぶせる)などを確かめることができます。幅広い取り扱いがあるため、柔らかさやとろみの有無を確認したうえで、高齢者の状態に適した食品を購入してください。

レトルト食や冷凍食品

上記のスマイルケア食やユニバーサルデザインフード以外にも、レトルト食品や冷凍食品のなかには高齢者向けに味や食感、栄養素を工夫したものや、介護食に対応したものもあります。冷凍食品は冷凍することによって新鮮さや栄養素をそのまま保つことができ、解凍するだけで簡単においしく食べられます。高齢者の咀嚼・嚥下機能に合わせて選ぶと良いでしょう。

5.介護食づくりのポイント

介護食を作るにはいくつかのポイントがあります。ポイントは、見た目にこだわることと、頑張りすぎないことです。それぞれ説明します。

見た目にこだわる

食事は、味や香りだけでなく視覚でも楽しむものです。色味を付けたり、盛り付けを工夫したりすることで「おいしそう」と思ってもらえます。これまでご紹介した介護食を作るうえでも、決して見た目を疎かにしないようにしましょう。

頑張りすぎない

介護食を作るということは、ほとんどの場合普段の調理にもう一手間多くかかってしまうことになります。そのため、毎日つくることが負担になっているご家族もいらっしゃるかもしれません。頑張りすぎないことが継続するポイントになるので、前節で挙げたレトルトや冷凍食品を適切に活用することで、少しでも負担を軽減するように工夫してみましょう。

SOMPOケアの子会社であるSOMPOケアフーズでは、高齢者施設向けのお食事を企画・提供しているほか、ご自宅で生活する高齢者向けに「食楽膳」というお食事宅配サービスを提供しています。どちらも高齢者の栄養バランスに配慮した食事・食材のサービスです。興味がある方はぜひお問い合わせください。

在宅介護向けお食事宅配(食楽膳))|高齢者向けのお食事 SOMPOケアフーズ (sompocarefoods.com)

また、SOMPOケアでは、SOMPOケア管理栄養士チームがご自宅で簡単に作れる、高齢者のお身体に合わせたレシピをご紹介しています。
こちらもあわせてご覧ください。

SOMPOケア 簡単!スマイルレシピ集

6.食事を摂る際のポイント

高齢者の食事は、ご本人の飲み込む力などに合わせた形態の食事を出すことも重要ですが、安全に食事を楽しむために、食事を摂る際に気を付けるポイントもいくつかあります。具体的に解説します。

姿勢を正して食べる

食事を摂る際の姿勢は、安全に食事をするための重要な要素です。姿勢が悪いまま食事を摂ると誤嚥に繋がる恐れがあります。

座った姿勢(座位)を保つことができる方は、両足を床に、両肘をテーブルに付け座位を安定させます。そのうえで、誤嚥しないように前傾姿勢を取るのが好ましいかたちです。身体の麻痺や拘縮などによって座位を保つことが難しい場合には福祉用具等を適切に活用して、できる限り食べやすい姿勢で食事を摂ることが大切です。

完全に目が覚めた状態で食べる

完全に目覚めていない状態で口に食べ物を運ぶことは、誤嚥を招く恐れがあり非常に危険です。生活スタイルにもよりますが、食事をする前に声掛けなどで覚醒を促し、意識がはっきりしてお腹が空いた状態になってからご自身で食べてもらう、または食事介助するのが理想です。

食事に集中できる環境を整える

ご本人の生活スタイルにもよりますが、テレビに映る映像や音声が気になり食事に集中できないことがあれば、消すようにしましょう。ただし、人によっては、テレビが点いているほうが食事を楽しめる、食が進むという方もいますので、個人差があることを十分に意識して判断してください。

食べたくなる工夫をする

食事は、高齢者が自らの意思でおいしく食べられるように配慮することが必要です。食の嗜好をできるだけ尊重したり、献立を作って興味を引いたり、盛り付けで色味を良くしたり、食べやすい形状にしたりするなど、自ら「食べたい」と思えるような工夫が重要です。

7.介護食づくりで悩んだらプロに相談

食事は、私たち人間が生きていくうえで欠かすことのできない営みです。食事を一番の楽しみにしている方も多くいます。嚙む力や飲み込む力が低下してきたとしても、充実した食事環境を整え、その人らしい生活が継続できるように、ご本人に合わせた介護食の利用を心がけましょう。

介護食づくりで悩んだら、主治医、介護支援専門員(ケアマネジャー)、施設に勤務する介護福祉士、栄養士などの専門家に相談してみましょう。介護食を作るうえでの注意点など、具体的なアドバイスが得られるはずです。

SOMPOケアでは、毎日の食事にこだわり、ご利用者お一人おひとりに合った介護食を提供しています。お困りの際にはお気軽にご相談ください。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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