高齢者の転倒事故予防のために、すぐにできる転倒予防法を紹介

高齢者が健康で長生きするために気をつけたい「転倒」。2015年4月から2020年3月末までに消費者庁に寄せられた、高齢者の自宅での転倒事故275件のうち、転倒による骨折が原因で入院になる高齢者はなんと76%にものぼります。
入院や寝たきりはできるだけ避けたいですよね。転倒の半数近くは自宅で起きています。そこで本記事は、自宅での転倒事故発生率が高い場所とそれぞれの対策方法を紹介します。

 

1.高齢者の転倒場所 48%が自宅

消費者庁の最新データ(2020年10月8日)によると、高齢者の転倒事故は自宅での発生が最も多く、全体の48%を占めています。また転倒による骨折が原因で、そのまま入院になるケースは76%にものぼります。寝たきりなどのリスクを軽減するためにも、高齢者の転倒予防は家族全員で気を配ることが大切です。

ポイント

  • 転倒場所の48%が自宅
  • 骨折が原因で入院になる高齢者は、76%

2.自宅での転倒事故が多い場所と対策方法を紹介

では実際に自宅のどこで転倒事故が起きているのでしょうか。自宅での転倒事故が多い場所は下記のとおりです。 2020年10月8日 消費者庁発表資料における消費者庁に2015年~2020年の間に寄せられた、65歳以上の高齢者が自宅で転倒した事故情報275件を元に作成されています。

場所 件数
浴室・脱衣所 27件
庭・駐車場 26件
ベッド・布団 23件
玄関・勝手口 22件
階段 22件

次項でそれぞれの原因と対策方法を詳しくご紹介します。

浴室・脱衣所

濡れた床や、シャンプーや石鹸の泡で滑りやすく、高齢者でなくとも事故が起きやすい浴室・脱衣所。滑りやすさだけでなく、ヒートショックによるめまいなども注意すべきポイントです。ご家族が同居している場合、1人で入浴するときは家族へ声をかけたり、入浴時間が長い時は様子を確認したりするようにしましょう。

原因と解決方法

種類 原因 対策
滑りやすさ ・石鹸・シャンプーの泡 ・入浴後に冷水で軽く流す
・浴室の床が濡れている ・浴室内に手すりを設置 ・浴室や脱衣所に滑り止めのマットを敷く
・濡れた脱衣所の床をスリッパで歩く ・足のサイズに合った滑り止め付きのスリッパを使用する
視界不良 ・湯気による視界の悪さ ・必ず換気扇を回す

※ヒートショックとは 外の気温と入浴中の温度に差が生じる冬場の入浴などに起こりやすい症状です。身体が急な温度差についていけず、血圧が大きく変動すると気を失ったり脳梗塞や心筋梗塞などを招いたりする恐れがあります。あらかじめ脱衣所や浴室に暖房をかけておくなど、なるべく気温差が生まれない環境つくりが大切です。

庭・駐車場

元気で自由に動くことのできる高齢者は庭・駐車場での転倒が多いようです。実際に転倒してしまったシーンから、対策をご紹介します。

庭を手入れ中に転落

高いところにある枝を切るために脚立を使用し、転落することなどが多いようです。この場合は転落だけでなく、手に持っているハサミでけがをする可能性も高く大変危険です。立った状態で腕を頭よりも上に挙げることは、思っている以上にバランスを必要とします。さらに脚立など、足元が不安定な状態だと、普段の力が発揮しきれないこともあります。 また、道路側から敷地内の枝を切ろうとする場合、走行中の車にぶつかるリスクも考えられます。「ちょっと切るだけだから」と思っても、家族に声かけをするなど工夫が必要です。

駐車場の車止めにつまずく

車止めそのものに問題があるというよりも、運動不足や加齢による運動能力・平衡感覚の低下が考えられます。体操や腸腰筋(足の付け根の筋肉)を鍛える、座ったままの腿上げや足踏みなど気軽にはじめられる体力つくりを上手に取り入れてみましょう。 また、老眼や白内障などで足元が見えにくくなっている可能性もあるので、眼科に行くなど対策をおこないましょう。

ベッド・布団

高齢者の方が起き上がる際にふらついてしまった場合、そのままバランスを取れずに転倒してしまうことが多いようです。また、起き上がろうとして布団に足がひっかかり、頭から転倒してしまうケースもあります。下記のような対策を検討してみてください。

ベッドガードの設置

ベッドガードを設置することで、寝返りによるベッドからの転落を防ぐことができます。また、商品によっては手すりも兼ねているものもあり、転落防止だけでなく、より安全に立ち上がるための手すりとしても役立ちます。

ベッドを壁際に寄せる

ベッドを壁際に寄せることで、壁側からの転落を防ぐことができます。

ベッドの高さを低くする

ベッドの高さを低くすることで、万が一ベッドから転落してしまったとしても、骨折などの重大なケガの発生リスクを低下させることができます。

玄関・勝手口

靴の脱ぎ履きや玄関の段差でつまずき、転倒するケースです。玄関・勝手口には、以下の対策が有効です。

手すりの設置

手すりを設置することで、靴の脱ぎ履きや段差を乗り越える際の支えとすることができます。壁に取り付けるタイプのほか、置くだけで手すりになる工事不要のタイプもあります。

段差の先端部に滑り止めを設置

段差の先端部に滑り止めを設置することで、段差の踏み外しを抑制することができます。また目立つ色や蛍光色であれば認識しやすくなり、さらに転倒を予防することに繋がります。

段差を解消するスロープの設置

スロープを設置することで、足を上げる必要がなくなり転倒を防ぐことが出来ます。

階段

筋力が低下した高齢者は、加齢と共に背中が曲がるなどの理由で重心が後方に傾き、階段を上る際に後ろに倒れやすくなります。また、重心が後ろに傾いていることで、バランスをとろうと前かがみの姿勢で歩行されている方も多く、階段を降りる際に重心を崩して一気に転がり落ちてしまう危険性が高くなります。 サイズの合わないスリッパの使用も転倒の要因として考えられます。日常的にスリッパを使用しているご家庭は、サイズ感などを見直してみましょう。そのほか、階段の転倒予防には、以下の対策が有効です。

滑り止めの設置

滑り止めを設置することで、段差の踏み外しを予防することができます。

手すりの設置

手すりを設置することで階段を利用する際に体重を預けることができるため、転倒を予防することができます。

足元を照らすランプの設置

足元を照らすランプを設置することで、夜間や薄暗い場合でも目で段差を認識しやすくなるため、踏み外しを予防することができます。 階段に取り付けるランプや滑り止めは100円ショップなどでも購入が可能です。うまく活用し転倒予防を心がけましょう。

3.今すぐできる転倒予防法を紹介

ここまで転倒しやすい場所での対策を挙げてきましたが、加齢による体力・筋力の低下も転倒事故の要因の1つです。消費者庁は転倒事故防止のためのアドバイスとして「個人に合った適度な運動を続け、体の機能の低下を防ぎましょう。」と呼びかけています。 ここからは運動や食事など、今すぐできる簡単な転倒予防法を紹介していきます。

日常的な体力つくり:SOMPOケアスマイル体操のすすめ

2020年4月にスタートした「SOMPOケア スマイル体操」。健康維持や転倒防止に役立つ簡単な体操を公開しています。転倒予防編は、普段使いにくい筋肉をストレッチすることで、日常生活の動きがスムーズになるためおすすめです。

無理のない範囲で日常的な運動を続けて、体力つくりをおこなっていきましょう。

バランスのよい食事

筋肉や骨を維持するためには食事バランスも重要です。基本的な食生活のあり方は、厚生労働省のe-ヘルスネットで有識者が提案する「栄養3・3運動」を覚えておくとよいでしょう。

「栄養3・3運動」の「3・3」は「3食・3色」です。

  • 赤色の食品:魚や卵、大豆など血や筋肉になるもの
  • 黄色の食品:ご飯やパン、油などのエネルギーになるもの
  • 緑色の食品:野菜や果物、海藻などの身体の調子を整えるもの

これらをバランスよく摂取していきましょう。難しく考える必要はありません。食事のときには、なるべくたくさんの「色」を使うように心がけましょう。

専門スタッフによる福祉用具のアドバイス

日常生活で歩きづらさを感じている場合、歩行器や杖などの福祉用具を取り入れると転倒予防に効果的です。使用することで転倒予防だけではなく、足腰の痛みの軽減にも繋がります。 しかし、歩行器や杖には様々な種類があり、お一人おひとりの身体の状態に適した製品を選ぶ必要があります。 福祉用具については、ご利用中の介護サービス事業者やケアマネジャー、お近くの地域包括ケアセンターなどが窓口となりご相談いただけます。必要に応じて専門家もご紹介致します。 SOMPOケアでは専門スタッフによる福祉用具のアドバイスをおこなっています。転倒の危険性を熟知している専門スタッフの意見を参考に、皆さまにぴったりの福祉用具をお選びください。

詳しくはこちらをご覧ください。

SOMPOケアの福祉用具専門相談員は安全・安心・快適な生活環境を実現するスペシャリストです!

福祉用具についてはこちらの記事で詳しく記載しています。ぜひご覧ください。

専門スタッフによる住宅改修のアドバイス

前項でご紹介した福祉用具の相談のほかにも、自宅のバリアフリー化などの住宅改修についてアドバイスが受けられます。改修費用が予想以上に膨らむケースもあります。利用可能な公的サービスや専門家によるアドバイスなど、様々な方法を上手に活用し改修を検討していきましょう。

おでかけ時の転倒防止に「バリアフリーマップ」

ここまで自宅での転倒防止について紹介しましたが、外出時の転倒予防も大切です。ちょっとしたおでかけを計画される場合は「バリアフリーマップ」を活用してみてください。 内閣府が発表するバリアフリーマップは、各都道府県のバリアフリーマップを閲覧できます。 このマップは、高齢者や身体の不自由な方が安心して気軽に県内各地へ出かけられるよう、地域のボランティアなどと協力し作成されています。

記載されている主な項目

  • 公共施設・駅などのバリアフリー情報
  • トイレや駐車場、エレベーターなどのバリアフリー情報
  • 車いすの貸出ができる「車いすステーション」情報
  • バリアフリー協力店の情報
  • ノンステップバスの路線図

乗り物におけるスロープの有無や宿泊施設のバリアフリー施設を事前に調べることで、安心して外出することができます。 慣れた土地も、初めて訪れる場所も、このような事前情報があれば安心して過ごすことができますよね。ぜひ活用しておでかけを楽しんでみてください。

まとめ

寝たきりや入院につながりかねない転倒事故。日頃から転倒予防を心がけることが大切です。転倒しやすい場所に気を付けながら、身体を動かす習慣やバランスのよい食事を意識し、いつまでも健康に過ごせる身体をつくりましょう。とくに体操は、知識や費用が必要なく誰でもかんたんにはじめることができます。あまり外出できないコロナ禍でも場所を選ばずに運動できるため、ぜひ取り入れてみてください。 またSOMPOケアでは、介護に関するご相談を受け付けています。ぜひお近くのSOMPOケアまでご相談ください。

SOMPOケア:サービス全般に関するお問い合わせ【介護なんでも相談室】

関連記事

お問い合わせ

お電話から
受付時間 9:00 〜18:00(年末年始を除く)