地域密着型サービスとは?種類やそれぞれの特徴、利用条件について徹底解説

この記事をご覧の方のなかには、「地域密着型サービスとは?」「居宅介護サービスや施設サービスと何が違うの?」と疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

地域密着型サービスとは、要介護認定において要支援または要介護と判定された方を対象に提供されるサービスで、可能な限り住み慣れた自宅または地域での生活を継続できるように支援を行うものです。また、市町村が地域の特性に応じて柔軟に体制づくりができる点に特徴があります。

この記事では、地域密着型サービスの概要を説明するとともに、必要となった背景や具体的なサービスの内容を解説します。

1.地域密着型サービスとは?

地域密着型サービスとは、介護保険制度の要介護認定において要支援1・2または要介護1~5のいずれかに判定された方が利用するサービスです。2000年の介護保険制度スタート時にはありませんでしたが、その後2006年の改定によって新たに追加されました。

必要とされるようになった背景

2000年に介護保険制度がスタートした当時は全国一律のサービス体系となっていましたが、市町村には、介護保険事業の運営など保険者としての役割とともに、住民のニーズに沿ったサービスの提供が求められていました。また、介護が必要な高齢者の増加が見込まれるなか、地域の特性を活かし、その地域に住む高齢者のニーズに沿ったサービスの提供がより必要とされるようになったのです。

そこで、介護保険法が改正され、市町村を主体とした地域密着かつ小規模のサービスが創設されました。それが地域密着型サービスです。市町村がサービス提供事業者の指定・監督の役割を担い、柔軟に対応できるようにする狙いがあります。

居宅介護サービスとの違い

住み慣れた自宅や地域で利用できる介護サービスとして、訪問介護や訪問看護などの居宅介護サービスもあります。では、地域密着型サービスは既存の居宅介護サービスとどのように違うのでしょうか。大きく異なる点を表にまとめました。

項目 居宅介護サービス 地域密着型サービス
サービス内容 主に自宅に住む高齢者が利用する、訪問介護や通所介護などのサービス 自宅に住む高齢者が利用するサービスもあれば、施設へ入居するサービスもある
事業所とご利用時の「居住地域」 ご利用者の住む市町村が事業所のある市町村と異なっていても利用できる 原則として事業所のある市町村内に住む住民でなければ利用できない
サービス事業所の指定・監督 都道府県 市町村

このように、住民に最も身近な行政機関である市町村に指定・監督の権限を与え、地域に住む高齢者などを対象にサービスを提供し、ニーズに即したきめ細かな支援を行うことを狙いとしているのが地域密着型サービスです。

2.地域密着型サービスは大きく2つに分けられる

地域密着型サービスには「地域密着型サービス」と「地域密着型介護予防サービス」の2つがあり、それぞれサービス内容や利用対象者が異なります。

地域密着型介護サービス

地域密着型サービスでは、要介護1~5と判定された方が、可能な限り住み慣れた自宅または地域で継続して生活できるようにするため、次のようなサービスが提供されています。

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 認知症対応型通所介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
  • 認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 地域密着型通所介護

地域密着型介護予防サービス

地域密着型介護予防サービスは、上記地域密着型サービスの介護予防版で、要介護認定で要支援1・2と判定された方が利用できるサービスです。次の3つのサービスが提供されています。

  • 介護予防認知症対応通所介護
  • 介護予防小規模多機能型居宅介護
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護

高齢者が要介護状態にならないよう、「予防」を狙いとしてサービスが提供されます。また、地域の特性を生かしながら柔軟に支援が行われます。

3.地域密着型介護サービスの種類や特徴

ここからは、地域密着型サービスにおける各種サービスの概要を説明します。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

日中・夜間を通じて介護スタッフと看護師が一体または密接に連携しながら、定期的な訪問と、ご利用者からの通報や電話などに随時対応を行う介護・看護のサービスです。要介護1~5の方が利用できます。

夜間対応型訪問介護

夜間に定期的な訪問介護サービスを受けられるだけでなく、緊急時の対応など、必要に応じて随時サービスを受けることができます。要介護1~5の方が利用できます。

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)

認知症の高齢者が通所介護(デイサービス)事業所へ通い、食事・入浴・機能訓練などのサービスを受けられます。定員数は12名以下で、通常の通所介護(デイサービス)よりも少ないため、より落ち着いてサービスを受けることができます。
なお、要支援1・2の方は、介護予防認知症対応型通所介護としてサービスを利用することになります。

認知症対応型通所介護については、以下の記事で詳しく紹介しています。

小規模多機能型居宅介護

小規模な住宅型の施設で、「通い」を中心に、訪問介護、短期間の宿泊などを組み合わせて食事や入浴などの介護や支援を受けられるサービスです。ご利用者のニーズにきめ細かく対応できる便利な施設です。 要介護1~5の方が利用でき、要支援1・2の方は、介護予防小規模多機能型居宅介護としてサービスを利用することになります。

看護小規模多機能型居宅介護

小規模な住宅型の施設で、「通い」を中心に、訪問介護、短期間の宿泊のほか、訪問看護などを組み合わせて食事や入浴などの介護や支援を受けられるサービスです。要介護1~5の方が利用できます。

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

認知症の高齢者が入居し、介護スタッフとともに5~9名のユニットで共同生活を送りながら、食事・入浴・機能訓練などのサービスを受けることができます。ご利用者同士が共同生活を行うことで社会的交流が生まれ、認知症の進行をできるだけ抑制することが期待されています。
要支援2以上の方が利用でき、要支援2の方の場合、介護予防認知症対応型共同生活介護としてサービスを利用することになります。

地域密着型特定施設入居者生活介護

有料老人ホームなどの介護専用型特定施設のうち、入居定員29人以下の小規模な施設に入居している要介護者に対し、日常生活上の世話や機能訓練を行います。要介護1~5の方が利用できます。

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

定員29人以下の小規模な介護老人福祉施設で、食事・入浴・機能訓練などのサービスを提供します。原則として要介護3以上の方が入居できます。

地域密着型通所介護

定員が18人以下の小規模な通所介護(デイサービス)事業所で、食事や入浴などの日常生活上の世話や生活機能訓練などを提供します。要介護1~5の方が利用できます。

なお、上記で紹介した「地域密着型特定施設入居者生活介護」「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」「地域密着型通所介護」は、記載の定員以下の施設や事業所となっていますが、その定員以下で運営している施設や事業所すべてが地域密着型となるわけではありませんのでご注意ください。

4.地域密着型サービスを利用するメリット

地域密着型サービスを利用するメリットはどこにあるのでしょうか。ここからは、ご利用者の目線から同サービスを利用することのメリットを説明します。

住み慣れた地域で安心してサービスが受けられる

自宅や住み慣れた地域のなかで、高齢者が心身の状況に合った介護サービスを受けられるメリットがあります。

例えば、小規模多機能型居宅介護では、ご利用者は通い・泊まり・訪問のいずれにおいても顔なじみのスタッフから介護を受けることができます。特に認知症のある方は環境の変化がストレスになってしまう場合もあるため、住み慣れた環境でサービスを利用できることは大きなメリットです。

より柔軟にご利用者のニーズに対応できる

前述のとおり、地域密着型サービスは市町村が指定・監督を担うことから、市町村は地域の実情やニーズに合わせてサービスを構築できます。これまで既存の介護サービスでは対応することが難しかったご利用者のニーズにも柔軟に対応できる、とても便利なサービスです。

5.地域密着型サービスのデメリット

ここからは、ご利用者が地域密着型サービスを利用するうえで不便な点やデメリットについて説明します。

対象の市町村に住んでいないと利用できない

地域密着型サービスを利用する場合、ご利用者は原則として住民票が所在する地域に設置された事業所のサービスしか利用できません。しかし、地域密着型サービスを提供する事業者の数は市町村によってばらつきがあり、その充実度は均一化されていないのが現状です。住んでいる市町村によって充実度が違う点はデメリットといえるでしょう。

居宅サービスを併用できない場合がある

小規模多機能型居宅介護を利用している方は、制度上、介護保険の居宅介護サービス(訪問介護や通所介護など)の一部を併用することができません。ご利用者がすでに居宅介護サービスを利用していて、途中から地域密着型サービスの小規模多機能型居宅介護を利用する場合には、これまで利用してきた居宅介護サービスの利用を取りやめないといけないのです。このような制度上の壁がある点もデメリットといえます。

6.地域密着型サービスを利用する流れ

地域密着型サービスを利用する流れは次のとおりです。

1 要介護認定を受ける

住民票のある市町村の窓口に要介護認定の申請を行います。
要支援・要介護状態だと判定されれば地域密着型サービスを利用できますが、サービスを利用するためには、介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談してケアプランを作成してもらう必要があります。

2 ケアプランを作成する

ケアプランとは、介護保険サービスを利用するための計画書のようなものです。ご利用者自身で作ることもできますが、支給限度額との関係で複雑な計算や事業所との調整といった面倒な手続きを必要とするため、介護支援専門員(ケアマネジャー)に依頼するのが一般的です。 介護支援専門員(ケアマネジャー)は、ご利用者の要介護度や抱えているニーズに合わせてケアプランを作成します。なお、ケアプランの作成にかかった費用はすべて介護保険で賄われるので、利用者の費用負担はありません。

3 地域密着型サービスの利用

介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成したケアプランに沿って地域密着型サービスを利用します。利用したサービスの内容や費用に関して確認したい点や不明点があれば、介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談できます。

7.住み慣れた地域で安心した暮らしを

地域密着型サービスは、ご利用者のニーズに対してきめ細かく対応するために地域住民と交流できる場所に設置されており、小規模多機能型居宅介護を例として顔なじみのスタッフから介護が受けられる点に特徴があります。住み慣れた地域で安心した暮らしを続けていきたい方は、地域密着型サービスの利用をぜひ検討してみましょう。

SOMPOケアでも、グループホームをはじめ、さまざまな地域密着型サービスを運営しています。これまでの経験を踏まえた最適なご案内をさせていただきますので、介護についてお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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