ケアプラン(介護サービス計画書)とは?記載内容や作成される流れ、ポイントを紹介

「ケアプランという名前は聞いたことがあるけれど、どのような内容?」「自分でもケアプランは立てられる?」など、ケアプランに対して疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、ケアプラン(介護サービス計画書)の概要を解説するとともに、ケアプランに記載されている内容や作成の流れを解説します。

1.ケアプランとは

ケアプランとは、ご利用者が介護保険制度を使って、いつ・どの介護サービスを・どれぐらい利用するのかを示した計画書(介護サービス計画書)のことです。介護保険制度を利用するためには必要なものです。

ケアプランは、介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)が作成します。ご利用者やご家族の心身状況、生活上のニーズなどをふまえ、次の事項をもとに作成してくれます。

  • ご利用者の長期目標と短期目標
  • ご利用者の抱える課題と支援の方針
  • 提供される介護サービスの量と種類、その内容

ケアプランの作成に関する費用は全額介護保険で賄われるため、ご利用者の金銭的な負担はありません。

2.ケアプランは3種類に分けられる

ケアプランは次の3つに大別できます。一つずつ解説していきます。

居宅サービス計画書

居宅サービス計画書は、主に自宅で生活する要介護1〜5の方を対象としたプランです。訪問介護やデイサービス(通所介護)、短期入所生活介護(ショートステイ)、介護用品や福祉用具のレンタル・購入など、自宅で暮らしながら利用するサービスの利用計画を立てます。居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、ご利用者やご家族の意向・ニーズを踏まえて作成・立案します。

施設サービス計画書

施設サービス計画書は、要介護1~5の方を対象としたプランで、特別養護老人ホーム(要介護3以上の方が入居)や介護老人保健施設(老健)、介護医療院(介護療養型医療施設)に入居するご利用者を対象としています。それぞれの施設に勤務するケアマネジャーが立案し、ご利用者が施設で介護サービスを利用しながら、どのような生活を目指すのかが記されています。

介護予防サービス計画書

介護予防サービス計画書は、主に自宅で生活する要支援1〜2の方を対象としたプランで、自立した生活を送り、要介護状態にならないためにどのような介護予防サービスを利用するのが適切か、記されます。介護予防サービス計画書の場合、地域包括支援センターが立案をします。

上記で示した各ケアプランは、対象となる方や利用するサービスの目的・種類が異なるため、書式・フォーマットもそれぞれ別々です。この記事では、主に居宅サービス計画書を例に挙げ説明していきます。

3.ケアプランに記載されている内容

ケアプランには具体的にどのような内容が記載されているのでしょうか。居宅サービス計画書を例に詳しく見ていきましょう。

項目 内容
居宅サービス計画書(1) ・ ご利用者の氏名・年齢・住所・要介護などの基本情報
・ ケアプラン作成者の情報
・ ご利用者・ご家族の生活に対する意向、課題分析の結果
・ ご利用者に対する支援・援助の方針
居宅サービス計画書(2) ・ ご利用者の生活全般の解決すべき課題・ニーズ
・ 長期目標と短期目標
・ 課題の解決に向けた介護サービスの種類・頻度
週間サービス計画表 ・ 1週間のタイムスケジュール
サービス担当者会議の要点 ・ サービス担当者会議の開催日時
・ 協議・検討した内容、申し合わせた内容
・ 残された課題
居宅介護支援経過 ご利用者・ご家族がケアマネジャーに相談した内容
サービス利用票 ・ 介護サービスを提供する事業者の情報
・ 月間サービス計画および実績の記録
サービス利用票別表 ・ 1ヵ月の介護サービス利用単位と費用
・ 区分支給限度額管理、ご利用者負担の計算表

ケアプランを見ると、ご利用者がいつ、どこで、どの介護サービス事業者を使って、どのようなサービスを、どれくらい利用するのか、負担する費用がどのくらいなのかがわかります。

4.ケアプランは誰が作成するの?

前述のとおり、ケアプランはケアマネジャーが作成します。ケアマネジャーとは、介護に関する専門知識を持ち、ご利用者・ご家族の希望や負担できる費用をふまえたうえでケアプランの立案を代行するとともに、適切な助言をしてくれる心強い専門職です。

ケアプラン自体はご利用者自身でも作成することはできますが、さまざまな理由からケアマネジャーに依頼して立ててもらうのが一般的です。その理由は後述します。

5.ケアプランを作成する流れ

続いて、ケアプランを作成する流れを、居宅サービス計画書(ケアプラン)を例に詳しく解説します。

ケアマネジャーを探す

まず、担当のケアマネジャーを選定します。ケアマネジャーを探すには、住んでいる市区町村の介護保険担当課(例:介護保険課など)や地域包括支援センターへ行き、居宅介護支援事業所のリストをもらって、そのなかから探す方法が最もオーソドックスです。どの事業所が良いのかわからず決めかねる場合は、地域包括支援センターで条件を伝えて探してもらう方法もあります。

なお、ケアマネジャーにケアプランの作成を依頼する場合、その費用は全額介護保険によって賄われます。ご利用者やご家族の負担はありません(2025年1月時点)。

ケアマネジャーとの面談

担当のケアマネジャーが決まったら、ケアマネジャーがご利用者のお宅などを訪問し、面談を行います。これをインテーク(初回面接)といいます。

インテークでは、ケアマネジャーがご利用者やご家族から心身に関する状況の聞き取りを行い、病気や障がいだけでなく、日常生活上の困りごとなどの情報を収集します。これをアセスメント(情報の整理・分析)といいます。この際、利用したい介護サービスの種類や量の希望があれば、遠慮なくケアマネジャーに伝えるようにしましょう。

なお、何らかの事情で面談ができない場合は、電話でやりとりをすることもできます。

原案が作成される

ケアマネジャーがご利用者やご家族から得た情報・ニーズ、支給限度額(利用できるサービスの量。要介護度によって異なる)をもとに、居宅サービス計画書の原案を作成します。この段階ではあくまでも案であり、サービス担当者会議(後述)を開いたうえでご利用者やご家族の了承を得なければ、正式なプランとはなりません。

サービス担当者会議が行われケアプランの修正が行われる

ケアマネジャーが主催する担当者会議が行われ、立案したケアプランの原案に問題がないかを参加者全員でチェックします。担当者会議に参加するのは次の方たちです。

  • ご利用者・ご家族
  • ケアマネジャー
  • 医師
  • 介護分野の専門職(介護福祉士など)
  • リハビリテーション分野の専門職(理学療法士など)
  • サービス提供責任者
  • 福祉用具専門相談員
  • 栄養指導員 など

これらの方たちが集まって話し合い、計画内容の妥当性や修正・変更の要否を判断します。それにご利用者・ご家族が同意することで、ケアプランの正式版が作成されます。

ケアプランが交付・共有され介護サービスの利用が開始される

最終的なケアプランがケアマネジャーによって介護サービス提供事業所に交付・共有され、調整がなされたあと、介護サービスの利用がスタートします。
サービスの利用開始日は、本人・家族が設定することが可能で、ケアマネジャーはそれに合わせて、ケアプラン作成やサービス担当者会議の開催を段取りします。

極端な例としては、ケアプランの原案が作成され、サービス担当者会議のときに本人が同意し、サービス事業者との契約を済ませれば、その直後または翌日からサービスを開始することができます。

ケアプラン作成~サービスの利用開始までの細々したことは、全てケアマネジャーが柔軟に対応・調整してくれます。また、サービス利用開始時は勝手がわからず戸惑う場面もあるかもしれませんが、多くの場合はケアマネジャーが同席してくれます。介護サービスの利用に関して不安や不満、疑問があれば、遠慮なくケアマネジャーに相談してください。

6.ケアプランを自分で作ることは可能?

ケアプランは自分で作ること(セルフケアプラン)も可能です。住んでいる市区町村の窓口で必要な書類を入手したうえで、記載例などを参考に作成します。所定の手続きが完了すれば、それに基づいて介護保険サービスの利用をスタートできます。

市区町村によって、自己作成の手順を紹介しているところもあるため、ご自身で作成する場合はお住まいの市区町村ページを確認しておきましょう。

主な流れの例としては下記です。

  1. 地域包括センターなどに自身で作成することを伝え、必要な書類をもらう
  2. 介護サービス事業所の情報を収集する
  3. 介護サービス事業所への連絡や介護報酬を計算し原案を作成する
  4. 原案の作成が完了したら介護サービス事業所に連絡し、サービス担当者会議を開催する
  5. ケアプランを市役所や地域包括センターに提出する
  6. 介護サービス事業所にケアプランを交付する
  7. サービスの利用が開始したら、毎月サービス利用実績を報告する

ケアプランを自己作成する場合、介護サービス事業所との話し合いやサービス内容の選定・確認、契約や利用開始手続きなど、全てを行う必要があります。また、毎月利用報告書を作成して報告する必要もあるため、ある程度の専門知識が求められる場合があります。

7.自分に合ったケアプランにするためのポイント

ご本人やご自身に合ったケアプランを作成するためには、どうすれば良いのでしょうか。そのポイントを解説します。

現状や希望することは具体的に伝える

ケアプランを作成してもらう際は、ケアマネジャーに対して、心身の状況や生活上の困りごと、希望する介護サービス、自己負担額の可能な範囲などの条件を具体的に伝えることが大切です。

せっかく作ったケアプランでも、自身のニーズに適っていなければ、効果的な介護サービスの利用とはなりません。インテークやアセスメントの際に遠慮せずにケアマネジャーに情報を提供しましょう。

サービスの頻度や時間・自己負担額は適切かどうか

利用するサービスの頻度や時間、自己負担額が無理のない範囲となっているか確認しましょう。多くの介護サービスを利用すると自己負担額が高くなり、家計を圧迫してしまう恐れがあります。生活費を切り詰めたことで体調を崩し、要介護度が悪化してしまうようなことのないよう気をつけましょう。

サービスの利便性と自己負担額は表裏一体です。適切な量のサービスを利用しつつ、無理のない範囲の負担となるよう、ケアマネジャーに依頼してください。

定期的に見直しをする

ケアプランは作成して終わりではありません。サービス利用の経過を見て、ケアマネジャーとともに定期的に見直しをすることが大切です。

介護サービスを利用する過程では、ご利用者の心身状況が変わり、新たなニーズが発生して、プランが実態に合わなくなることもあります。そうした際はケアマネジャーにプランの修正・変更を依頼し、どのようなプランに変えていくのが適切か話し合いましょう。

8.介護サービスを利用するにはケアプラン作成が必要

ケアプランは、ご利用者が介護保険サービスを利用し生活の質を高めていくうえで欠かすことのできない計画書です。どのような生活を目指すのか、どのような介護を望むのかを示す、あらゆる人々(ご利用者、ご家族、ケアマネジャー、サービス事業所など)にとって羅針盤的・設計図的な機能を持っています。

ご利用者一人ひとりの心身状態が違うように、ケアプランも一人ひとり異なります。自分に合ったケアプランを作成することは、より良い介護サービスの利用に繋がり、生活の質的向上をもたらします。

ご利用者に合ったケアプランが立てられるよう、ケアマネジャーと相談しながら決めていきましょう。

監修・執筆

林 修造

福祉系専門学校の教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や医療保険などの社会保障にも精通している。専門学校で教鞭を取る傍ら、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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