認知症カフェとは?利用条件やできること・メリットや注意点を解説

認知症カフェは、認知症のある方とそのご家族が、地域の方や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う場として運営されています。厚生労働省による2021年度の実績調査によれば、47都道府県1543市町村で7904のカフェが運営されています。

しかし、認知症カフェがどこで開催されているのか、誰を対象として開かれているのか、どのような取り組みを行っているのかなど、認知症カフェについて詳しく知らない方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、認知症カフェの目的や対象、取り組み内容などを解説するとともに、認知症カフェを利用するメリットや注意点などをご紹介します。

1.認知症カフェとは?

認知症カフェは、公民館や地域のコミュニティセンターなどの一室を利用して開かれる「憩いの場」です。介護施設や地域包括支援センターが運営しており、認知症のある方やそのご家族、地域住民など、誰もが気軽に集える場所であり、認知症のある方にとって地域に開かれた居場所であるともいえます。

気軽に誰でも参加でき、一般のカフェを訪れる感覚で気軽に利用できます。また、お茶やコーヒーなどの飲み物の提供を受けながら、認知症に関する講義を聞いたり、利用目的に合わせて思い思いの時間を過ごしたりすることができます。

運営者によっては「オレンジカフェ」など異なる名称で運営されている場合がありますが、実施している内容は同じです。カフェへ行けば相談に応じてくれる介護・福祉の専門家がおり、日頃行う介護についての相談だけでなく、認知症のある方を支援するために必要な情報を得ることができます。

認知症カフェの運営者

認知症カフェの多くは、介護施設や介護事業所、地域包括支援センターが運営していますが、地域のボランティアやNPO法人、介護・福祉の専門職が運営していることもあります。

認知症カフェ事業は、国が実施している認知症施策の一環で2012年から推進されています。前述のとおり、2020年度実績調査では全国で7,000か所以上のカフェが運営されており、今後も増えると考えられます。

高齢者サロンとの違い

認知症カフェと高齢者サロンは、どちらも認知症のある方や高齢者、そのご家族、地域住民が集まり、情報交換や交流を行う場です。国によって明確な目的や形態は規定されていないものの、両者にはいくつかの違いがあります。比較すると以下のとおりです。

認知症カフェ 高齢者サロン
趣旨 認知症のある方やご家族、地域住民などが集い、情報交換や共感をともなう心安らぐ場であり、認知症というキーワードのもとに集まる居場所 地域における高齢者の孤立を防止するために、地域を拠点に住民である当事者とボランティアがともに運営していく繋がりの場
運営主体 介護施設や地域包括支援センターなど 社会福祉協議会や自治会の役員、社会福祉協議会、ボランティアなど
場所 介護施設の一室、地域のコミュニティセンターなど 地域のコミュニティセンター、商店街の空き店舗など
開催頻度 おおむね月に1回だが、カフェによって異なる おおむね月に1回だが、サロンによって異なる
対象 認知症のある方、ご家族、地域住民、介護・福祉の専門職など 高齢者、地域住民、ボランティアなど
その他 介護・福祉の専門職や研修を受けた市民ボランティアが参加している。 専門職の参加は必須としない。介護予防や認知症予防を目的にしたサークル活動がある。

認知症カフェ、高齢者サロンのどちらも、認知症のある方、または高齢者の憩いの場である点は共通しており、参加条件や複雑な利用手続きを設けず気軽に集える場所としての機能が求められています。

2.認知症カフェの役割

認知症カフェには次の機能・役割があります。

役割 内容
居場所の提供 認知症のある方やそのご家族が抱える孤立感や不安を解消し、地域においていきいきと暮らすための拠点となる。
不安・悩みの解消 カフェ内にいる介護・福祉の専門家が相談に応じる。認知症や介護に関する適切なアドバイスを行い、必要に応じて支援機関に繋げ、ご家族の抱える不安や悩みを解消する。
認知症に関する啓発 地域住民が認知症について正しい理解を深め、認知症のある方を地域のなかで支える環境を整備する。

「認知症」というキーワードのもとにさまざまな人々が集まり、社会的な交流ができる憩いの場です。地域住民が認知症について知りたい・学びたい・考えたい、認知症になっても安心して暮らしたいという願いを実現するきっかけとなる場といえます。

3.認知症カフェでできること

認知症カフェで実施している内容は、おおむね次の3つのタイプに分けられます。

種類 内容
情報提供や学びを主たる目的としたタイプ お茶やコーヒーを飲みながら聴くミニ講話が用意されていたり、介護・福祉の専門職などから情報提供がなされていたりする。
特にプログラムは用意されていない、居場所の提供を主たる目的としたタイプ 特にプログラムなどはなく、自由な時間のなかでフリーに参加できる。そのなかで介護・福祉の専門職による相談なども行われている。
ご家族と認知症のある方のピアサポート(当事者同士の交流・支え合い)を主たる目的としたタイプ 地域住民はあまり参加せず専門家と当事者が主に参加し、当事者同士や介護者同士の話し合いや相談などが行われている。

カフェによって実施していること、できることは異なりますが、多くの認知症カフェで以下のような内容が共通して実施されています。

  • 喫茶店やカフェのように思い思いに過ごせるスペースの提供
  • 参加者同士の自由なコミュニケーション
  • 認知症、家族介護に関する講話
  • 認知症に関する無料相談(介護・福祉の専門家が対応)
  • 認知症のある方やご家族などピアカウンセリング(当事者同士による情報交換、相談、精神的サポートなど)
  • レクリエーション(介護予防体操、脳トレ、保育園交流、サークル活動など)

4.認知症カフェを利用するには?

認知症カフェを利用するには、どうすればいいのでしょうか。以下、認知症カフェの利用方法を説明します。

利用条件

利用条件は特に設けられていません。認知症のある方も、そのご家族や知人も、認知症と診断されていない方も、誰でも利用できます。原則予約は不要ですが、カフェによっては予約が必要なところもあるため、事前に確認をしておきましょう。予約が不要な認知症カフェの場合は、飛び入りで参加することができます。

利用料金の目安

カフェの運営方針によりますが、参加費用を100円~200円と設定しているところが多くみられ、飲み物代を含めても少額で利用できます。

認知症カフェの探し方

認知症カフェは、全国で7,000か所以上あり、各自治体のウェブサイトに掲載されています。また、多くのカフェがSNSやWebサイトなどでも情報発信を行っているため、検索すればすぐに見つけられます。特に参加条件が設けられている訳ではありませんので、自分たちで調べて、行きたいと思ったカフェを自由に選び利用できます。
インターネットのほかにも、市町村の窓口や地域包括支援センターで情報を得ることもできます。

5.認知症カフェを利用するメリット

認知症カフェを利用するメリットとして、以下のものが挙げられます。

気軽に認知症に関する相談ができる

認知症カフェは地域住民に開かれたスペースであるため、気軽に認知症や家族介護についての悩み・不安を相談できます。「いきなり役所や地域包括支援センターを訪問して相談するのは気が引ける」という方は、まずは認知症カフェを利用して気軽に相談することをおすすめします。

認知症の理解を深められる

認知症に関する正しい知識、適切な対応方法が学べます。認知症は医学的に明確な原因がわかっておらず、治療法が確立しているわけではありませんが、認知症の特徴や適切な対応方法、認知機能の低下予防につながる方法は少しずつわかってきています。認知症カフェに参加し、専門家から情報を得ることで、不安の解消や介護者の負担軽減・適切な対応に繋げられます。

同じ悩みを抱えるご家族と交流を図ることができる

認知症カフェでは、認知症のある方や介護をしているご家族が集い、お互いの経験や悩みを共有できます。当事者でしかわかり得ない情報や感情を共有できるピアカウンセリングの機能があります。

ご利用者のご家族・知人なども利用できる

認知症のある方だけでなく、ご家族や知人も利用できます。ちょっとした息抜きに利用したり、他者との交流を期待して参加したりするなど、一人ひとりの目的に応じて気軽に利用できます。

6.認知症カフェを利用する際の注意点

一方、認知症カフェを利用する際にはいくつか注意すべき点もあります。以下の3点を確認しておきましょう。

万が一に備える

認知症カフェは認知症のある方やそのご家族が安心して過ごせるようにさまざまな配慮がなされていますが、現地へ向かう途中に認知症のある方が道に迷ったり、カフェ内で認知症によるBPSD(行動・心理症状)が生じたりする可能性もあります。認知症のある方だけでなく、ご家族や介護者も一緒に参加することをおすすめします。

参加する時は自身の体調に気をつける

認知症のある方やご家族の体調が悪い場合には、参加を控えましょう。高齢者は免疫が弱くなっていることも多く、ちょっとした風邪でも症状が重くなってしまうことがあります。また、万が一コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症に罹患していると、感染を拡大させる恐れがあるため注意が必要です。

実施率が低い地域もある

認知症カフェの取組みは地域や自治体によって温度差があり、お住まいの自治体で必ず設置・運営されているとは限りません。認知症カフェのニーズがない、必要性を感じていない、人手が不足しているなどの理由で設置・運営がされていないことがあります。

7.認知症カフェで気軽に相談してみよう

認知症カフェは、認知症のある方やそのご家族だけでなく、認知症に関心のある方ならば誰もが気軽に利用できる憩いの場です。カフェには介護や福祉の専門家もいるため、認知症や介護に関する相談ができます。

もしご家族が認知症になり、その対応や、介護についての悩み、不安などがあれば、ぜひ気軽に訪問してみましょう。認知症のある方が日中過ごすのに適した場所をお探しの場合も、認知症カフェを上手に利用してみてください。

SOMPOケアでは、認知症応援プロジェクト「Orange+」を運営し、地域とのつながりのなかで認知症に対する正しい知識・情報提供と理解促進に努めています。また、その一環で認知症カフェの運営を行っています。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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