認知症と口腔ケアの関係性  歯磨きの重要性とケアのポイントを解説

認知症の方に対する口腔ケアは、病気から守る観点からも非常に重要です。
認知症の方が不安や緊張から口腔ケアを嫌がってしまう場合もありますが、適切な対応をとることで口腔ケアにも前向きになってくれる可能性があります。
今回は、口腔ケアの重要性からポイントや注意点など、実際のケアに役立つ方法を解説します。

1.口腔ケアの重要性

口の中の衛生を保つことは、認知症の方だけでなく誰にとっても重要です。口の中が不衛生だと虫歯や歯周病、口臭の原因になるだけでなく、糖尿病、認知症などの病気を引き起こす可能性があるためです。
認知症の方における口腔ケアは、以下のような重要な意味があります。

認知症の進行を緩やかにする、口の機能を維持する、誤嚥性肺炎を防ぐ、栄養不足を防ぐ、食欲が増す

  • 口の機能を維持する
  • 誤嚥性肺炎を防ぐ
  • 認知症の進行を緩やかにする
  • 栄養不足を防ぐ
  • 食欲が増す

口の中がきれいな状態になっていると、汚れや細菌を洗い流す作用のある唾液の分泌が促進されるので、虫歯や歯周病の予防になります。

また、歯や歯茎が健康な状態だと、しっかり噛んで食べることができ、飲み込む力を維持することもできます。しっかり噛んで食べることができれば、食事を取ることに積極的になりやすく、栄養不足を防ぐ一助となります。そして、飲み込む力が維持できれば、高齢者に多い誤嚥性肺炎を防ぐことができます。誤嚥性肺炎とは、飲み込む力が低下している高齢者がかかることの多い病気で、唾液や食べ物が口の中の細菌とともに気道に入ってしまい、肺に炎症が起きます。誤嚥性肺炎は、命に関わることもある病気なので注意が必要です。

このように口腔ケアは、認知症の方にとって元気に過ごし、生活の質を維持するために重要な意味があります。

口腔ケアを嫌がる理由

先述の通り、口腔ケアは生活の質を維持するために重要です。しかし、認知症になると、理解力の低下、意欲の喪失、集中力の低下などの症状が起きます。そのため、口腔ケアの目的がわからなくなったり、不安を抱いたりして、口腔ケアを嫌がる認知症の方も多くいます。嫌がる時には、なかなか口を開けない、歯ブラシを噛んでしまって磨けない、指を噛まれそうになった、というような状況になることがあります。

そのほか、認知症の方が口腔ケアを嫌がる主な理由として考えられるものを以下に挙げました。

  • 口腔ケアの必要性がわからない
  • 眠い
  • 口の中を触られるのが嫌
  • 歯ブラシを口の中に入れられたくない
  • 何をされるかわからないので恐怖や不安を感じている
  • 歯ブラシを見せられても何の目的に使うものかわからない
  • 口の中に痛みや傷がある
  • 口腔ケアをする時の水が喉に流れ込み、息苦しい
  • 以前に歯磨きで嫌な思いをしたことがある

3.安心を与える口腔ケアのポイント

認知症の方が安心して口腔ケアを受けられるようにするためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。それぞれのポイントについて説明します。

口腔ケアの前に声がけをする

認知症でなくても、いきなり他人に口の中を見られたり、歯ブラシを入れられたりすることに嫌悪感を覚える方も多いのではないでしょうか。認知症の方の気持ちに寄り添い、「これから口に歯ブラシを入れますね」「歯をきれいに磨きましょう」のように声をかけて、口腔ケアを始めることを優しく伝えるようにしましょう。

適切な口腔ケア用品を準備する

硬めの歯ブラシは、口の中を傷つけたり、痛みの原因となったりする可能性があります。また、柔らかく、ヘッドの小さい歯ブラシを使用することで細部まで磨くことができます。より丁寧なケアが必要な場合は、歯科医師や歯科衛生士に相談してみるとよいでしょう。

楽な姿勢で行う

病状によって楽な姿勢は異なりますが、認知症の方が苦痛なく口腔ケアを受けられる姿勢で行うようにします。多くの場合は椅子に深く腰かけていただき、顎を引いてもらった状態で行うと認知症の方も、口腔ケアを行う方も安全に行うことができます。

口腔内をよく観察する

認知症の方は、痛みをうまく訴えることができない場合があります。口の中に手を入れる、口をおおうような仕草をよくする、口に触れるのを嫌がる、などの様子が見られる場合には、口の中に痛みがある可能性があります。口の中に傷や歯茎の腫れなどがないか、ライトを使ってよく観察してからケアを行うようにしましょう。

奥歯から順番に優しく磨く

前歯の周辺や歯の裏側の歯茎は敏感なので、先に奥歯の頬側から磨くようにします。また、力を入れてゴシゴシ磨くと痛みを感じさせてしまう可能性があるので、優しく磨くように心がけまましょう。歯ブラシを大きく動かすと痛みを伴う可能性があるので注意しましょう。

表情を見ながら行い、声がけも忘れない

歯を磨くことに集中していると、痛そうな表情を見落としてしまうこと可能性があります。表情の変化に気をつけながら、「今度は左の奥歯の裏側を磨きますね」などと声がけしながら口腔ケアを行うとお互いに気持ちよく口腔ケアを行うことができます。

できる時に無理なく行う

「食事の後には口腔ケアをする」というようにルールを決めないで、認知症の方の気分のよいときに合わせて行うことが重要です。無理に行うと、口腔ケアに対して嫌悪感を抱いてしまい、今後のケアに支障をきたす場合があります。できる時に無理なく、続けていくことが大切です。

終了後の声がけも忘れない

口腔ケアがうまくいった時には、「お口を開けていただいたので、うまく磨くことができました、ありがとうございます」「また磨きましょう」などの感謝の言葉を伝えることが大切です。口腔ケアが気持ちのよいものと考えてもらえれば、習慣になり継続しやすくなるかもしれません。

4.口腔ケアを行う際の注意点

認知症の方は、症状が進むとともに歯磨きの自立度や義歯の管理能力が低下することがわかっています。しかし、認知症の方にとって口腔ケアを行うことは、歯や歯茎を健康に保つだけでなく、認知症の進行を抑制し、生活の質を保つために重要です。口腔ケアを無理なく継続して行うために以下のような点に注意しましょう。

口腔ケアに時間をかけすぎない

認知症の方の口腔ケアでは、ただ歯磨きをするだけではなく、口腔内の観察や義歯の管理なども行う必要があります。適宜声かけも必要なので慣れるまで時間がかかる可能性があります。しかし、認知症の方の場合は集中力が続かない方も多く、口腔ケアに時間がかかりすぎると嫌がられてしまうことがあります。丁寧に素早くケアを行うことを心がけましょう。

口の中を傷つけないようにする

口の中に傷ができたり、痛みを感じたりすると口腔ケアを嫌がられることがあります。口の中を傷つけないように、硬めの歯ブラシを使うことは避けて、柔らかくヘッドは小さい歯ブラシを選ぶとよいでしょう。すぎると嫌がられてしまうことがあります。丁寧に素早くケアを行うことを心がけましょう。

義歯の管理に気を付ける

認知症の方の場合、自分で義歯を管理することが難しい場合があります。義歯が合っていないのに使い続けていないか、口腔ケアの時に確認するようにします。また、口腔ケアの時に外した義歯を誤って飲み込んでしまうことがないように注意しましょう。

5.口腔ケアを受ける方の気持ちを考えてケアをしよう

口腔ケアは口の中を衛生的に保つだけでなく、誤嚥性肺炎や認知症の進行を遅らせたり、栄養不足を予防したりすることに繋がります。
口腔ケアを受ける方の立場になってケアを行うことで、スムーズに進めることができます。
ただし、認知症の方の口腔ケアをスムーズに行うことが難しい場合は一人で悩まないようにしましょう。

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