居宅介護支援とは?利用する条件や費用について解説

居宅介護支援とは、自宅で生活する高齢者が、自分らしく暮らせるよう、介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)が介護サービスの利用に関する計画立案~契約~利用後の見直しなどの一連の手続きを行うサービスです。原則として要介護認定で要介護1~5と判定された方が対象で、ケアマネジャーがご利用者やご家族の相談に応じつつ、心身状況や生活上のニーズに応じてケアプランを立案・修正してくれます。

この記事では、居宅介護支援で受けられるサービスの内容や利用方法について解説します。

1.居宅介護支援とは

居宅介護支援とは、要介護高齢者(以下、ご利用者)が可能な限り自宅で自立した日常生活を送れるよう、ケアマネジャーがご利用者の心身の状況や置かれている環境に応じてケアプランを作成してくれるサービスです。

ケアプランとは、ご利用者が要介護度やニーズ、置かれた環境に見合った適切な介護サービスを受けるために作成される計画書です。作成にあたっては、ケアマネジャーが介護サービス事業者や関係機関との連絡・調整を行ってくれます。

以下、居宅介護支援の目的や内容、携わる専門職を解説します。

定義や目的

厚生労働省が示す「居宅介護支援の基本資料」によれば、居宅介護支援は次のように定義されています。

    居宅の要介護者が居宅サービス等の適切な利用ができるように、

  • 要介護者の心身の状況、置かれている環境、要介護者やご家族の希望等を勘案し、居宅サービス計画を作成
  • 居宅サービス計画に基づくサービス提供が確保されるよう、サービス事業者との連絡調整
  • 介護保険施設等への入居が必要な場合における紹介 等を行うこと。

つまり、居宅介護支援とは、ご利用者に対して行われる直接的な介護サービスではなく、居宅介護支援事業所にいるケアマネジャーがケアプランを作成し、必要な機関へ繋ぐ一連のサービスを指しています。

居宅介護支援事業所にいる専門家

居宅介護支援事業所には、次の専門家が配置されています。

  • 従業者:事業所ごとに常勤のケアマネジャーを1人以上配置(人員基準では利用者35人に対してケアマネジャー1人を置く)
  • 管理者:事業所ごとに常勤専従の主任ケアマネジャーを配置

ケアマネジャーとは、都道府県の認定する公的資格・専門職の一つで、ご利用者の要介護度やニーズをもとにケアプランを作成するとともに、サービス提供事業者との連絡・調整をしてくれる専門家です。ケアマネジャーが担う一連の業務過程は「ケアマネジメント」と呼ばれます。

介護をしていくにあたって心強い味方となる存在なので、困ったことがあればぜひ相談してみましょう。

訪問介護との違い

訪問介護とは、介護保険法に基づく在宅サービスの一つで、自宅で暮らすご利用者の生活を支援するため、介護福祉士やホームヘルパーなどの介護職がご利用者の自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行うサービスです。

居宅介護支援と名称が似ていますが、その目的や従事する専門職、提供されるサービス内容が異なるため、混同しないようにしましょう。

なお、訪問介護に関して詳細を知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。

2.居宅介護支援のサービス内容

ここからは、居宅介護支援で提供されるサービスの内容を解説します。

ケアプランの作成

ケアプランとは、ご利用者の心身の状況、生活上のニーズ、ご家族の意向などを踏まえ、サービスの種類・回数を示した計画表です。ケアマネジャーが作成してくれます。

「週に2回訪問介護を、週に3回通所介護を利用する」など、一人ひとりのニーズに沿って立案されます。サービスを利用するご利用本人やご家族が作成することもできますが、介護保険制度や介護サービスの内容を十分に把握・理解するのが難しいことも多く、ほとんどの場合、ケアマネジャーがケアプランを作成・立案しています。

モニタリング・プランの見直し

ケアプランは一度作成したら終わりではありません。ケアマネジャーはご利用者の自宅を訪問し、提供されている介護サービスがご利用者のニーズに沿っているか、品質に満足しているかなどを適宜チェック(モニタリング)します。場合によっては、ご利用者の心身状況、生活環境の変化に合わせてケアプランの内容を見直します。

介護に関わる相談

居宅介護支援事業所では、ケアプランを作成するだけでなく、介護保険に関する説明、要介護認定の申請手続き代行、住宅改修サービス利用までの段取りなど、ご利用者やご家族からの介護に関するさまざまな相談に応じてくれます。

要介護認定の手続き・更新

前述のとおり、居宅介護支援事業所では要介護認定の手続きを代行してくれます。要介護認定とは、介護保険サービスを利用するにあたって最初に必要となる調査のことです。また、すでに認定を受けた方の介護度の変更や更新に係る手続きも代行してくれます。

3.居宅介護支援の利用対象者

居宅介護支援の利用対象となるのはどのような方なのでしょうか。そこには、要介護認定によって判定された要介護度が大きく関わります。以下、詳しく見ていきましょう。

対象者は要介護1〜5の認定を受けた方

居宅介護支援の対象となるのは、自宅などで生活する高齢者で、要介護認定において要介護1~5と判定された方です。

要介護1は、日常生活の動作は一人でできるものの、運動機能や認知機能の低下が見られ、一部介助を必要とする状態です。身体能力や認知能力に応じて、介護が必要な度合いが増していくと介護度も重くなっていきます。

要介護度について、詳しくはこちらの記事もご確認ください。

要支援1・2では「介護予防支援」を受けられる

要支援1・2と判定された方は居宅介護支援のサービスを利用できませんが、代わりに介護予防支援のサービスが受けられます。これは介護予防のためのケアマネジメントであり、市町村が設置する地域包括支援センターに勤務するケアマネジャーがその役割を担います。

なお、地域包括支援センターが介護予防支援業務を居宅介護支援事業所に委託している場合、要支援1・2の方も居宅介護支援事業所を利用できます。詳しくは利用を検討している居宅介護支援事業所に確認してみましょう。

4.居宅介護支援サービスの利用に費用はかかる?

居宅介護支援サービスに関する費用は、全額介護保険制度から給付されます。よってご利用者の自己負担はありません。

もし、ご利用者の自己負担があれば、サービスの利用控えが起こり、必要とする介護サービスにつながらず重症化する恐れがあります。国は、このような事態の発生を防ぐ狙いのもと、居宅介護支援にかかる費用を全額保険給付としているのです。

5.居宅介護支援を利用する流れ

居宅介護支援のサービスは次のような流れで利用します。以下、一つひとつ整理して詳しく解説します。

1.要介護認定を受ける

要介護認定とは、要介護高齢者がどの程度介護を必要とする状態なのか、行政がその度合いを数値化し認定する仕組みです。介護保険サービスを利用するにあたっては、まず要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定はお住まいの市町村窓口で申請することができますが、ご自身での申請が難しい場合は、居宅介護支援事業所などが申請を代行してくれます。

2.居宅介護支援事業者リストから選ぶ

要介護認定によって要介護1~5と判定されると、市町村窓口から居宅介護支援事業者のリストが支給されます。ご利用者はこのリストの中から居宅介護支援事業者を選び、ケアプランの作成を依頼することになります。

しかし、リストの中のどの事業者が良いのか、利用者側で判断するのは難しいものです。その場合は、市町村窓口または地域包括支援センターに相談し、事業者の紹介・取り次ぎを依頼するようにしましょう。

3.居宅介護支援事業所と契約する

介護保険サービスの利用は、原則としてご利用者と事業者との契約によって始まります。居宅介護支援事業者も例外ではなく、ご利用者はケアプランの作成を委託する目的で居宅介護支援事業所と契約を結びます。居宅介護支援事業所は、ご利用者との間に結ばれた契約に基づき、ケアプランの作成とそれにともなうケアマネジメント(事業者との連絡調整など)を実施します。

4.担当のケアマネジャーを決める

居宅介護支援事業所はご利用者の状態などを見てケアマネジャーを選定しますが、ご利用者自身で選ぶこともできます。

例えば、医療・保健との連携に強みを持つケアマネジャーを希望するならば、訪問看護ステーションに併設されている居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーを選ぶと良いでしょう。

5.ケアプランを作成する

担当のケアマネジャーが、ご利用者の心身状況、生活上のニーズ、ご家族の意向を踏まえ、適切な介護サービスの種類や利用回数を計画表にまとめます。この計画表をまとめた書式がケアプランです。

ケアプランでは、次の事項が定められます。

  • ご利用者の長期的目標
  • ご利用者に対する支援内容の方針
  • 利用する介護サービスの内容、注意点
  • 利用する介護サービスの頻度、回数
  • サービス担当者会議※で話し合う要点
  • ご利用者からの相談内容、事業者との連絡内容
  • 利用者負担額 など

※ケアマネジャーがケアプランを計画・確定する際に、関係者を集めて、情報の共有や、ご利用者・ご家族の意向などの相談を行う場。

ケアプランは、ご利用者・ご家族の同意や確認のもとに作成されます。よって、適切なケアプランの作成には、ご利用者の心身状況やご家族が抱える課題の明確化が重要です。作成の際には、介護サービスに求めることをケアマネジャーに明確に伝えましょう。

利用の開始・定期的なモニタリング

作成したケアプランに基づいて介護サービスの利用が開始されます。ケアマネジャーは、ケアプランどおりにサービスが提供されているか、ご利用者のニーズに見合ったサービスか、品質に問題がないかなどを定期的にモニタリングします。ご利用者の心身状況に変化があったり生活環境が変わったりした場合には、ケアプランの内容を随時見直してくれます。

「以前よりも介助が必要になってきたようなので、追加でサービスを利用したい」や「○○事業所のデイサービスを利用したい」などの要望があれば、ケアマネジャーに相談してみましょう。

6.サービス利用を検討しているならまずはご相談を

この記事では、介護保険サービスの一つである、居宅介護支援の具体的な内容や利用の流れなどを解説してきました。

要介護状態になると、判定された要介護度に応じて在宅サービスや施設サービスを利用できますが、どのようなサービスがあり、どの程度利用できるのか、専門的な知識がないと正確に理解するのは難しい制度でもあります。

そんなときに相談できるのが居宅介護支援事業所です。ニーズに見合ったケアプランの作成など、居宅介護支援事業所のサービスをうまく使い、要介護認定後も安心して生活できる環境を整えましょう。

SOMPOケアでは、居宅介護支援をはじめとするさまざまな在宅サービスをご用意しています。また、「介護なんでも相談室」ではサービス全般に関するお問い合わせを受け付けています。もし家族内で介護のお困りごとが発生したら、自分たちだけで抱え込まず、ぜひ一度、介護なんでも相談室へお問い合わせください。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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