デイケア(通所リハビリテーション)とは?主なサービスから利用の流れまでをご紹介

「デイケアとデイサービスは違うものなの?」「デイサービスのことはよく知っているけれども、デイケアがどのようなところかはよく知らない」という方は多いのではないでしょうか? デイケアとは、介護保険制度上では通所リハビリテーションと呼ばれるもので、医師の指示のもと、理学療法・作業療法、その他のリハビリ、医療的ケア、介護サービスなどが提供されます。

この記事では、デイケア(通所リハビリテーション)の特徴を紹介するとともに、サービスの内容や利用までの流れを解説します。

1.デイケア(通所リハビリテーション)とは

デイケアとは、自宅などに住む高齢者(以下、ご利用者)が、介護老人保健施設、病院、診療所などに併設された通所リハビリテーションの施設へ通い、医師の指示のもとに行われるリハビリ、医療的ケア、日常生活上の介護を受けることができるサービスです。

運営主体は上記の医療機関・施設に限られており、ご利用者は施設の準備した送迎車でデイケア施設へ通い、リハビリや医療的なケアなどを受けます。

リハビリを目的とした通所サービス

デイケアは、入居するのではなく施設に通って利用するサービスです。ご利用者の心身機能の維持・回復を図ることを目的としています。

要介護認定を受けた方が利用できる

デイケアを利用するためには、要介護認定で要支援1・2、または要介護1~5のいずれかに判定される必要があります。要支援1・2の認定を受けた方は、介護予防を目的とした介護予防通所リハビリテーションを利用し、要介護1~5の方は通所リハビリテーションを利用できます。

デイケア(通所リハビリテーション)で受けられるサービス

デイケアでは主にリハビリ、医療的ケア、必要な介護サービスが提供されますが、そのうちリハビリでは、医師の指示のもと各リハビリの専門職が計画を作り、それに基づいてリハビリのプログラムが提供されます。

以下、リハビリテーション分野の専門職をご紹介します。

名称 リハビリテーションの分野・内容
理学療法士
(通称PT:Physical Therapist)
日常生活における基本動作(起き上がる、立つ、歩く、座る、寝返りをうつなど)のリハビリを行う専門職。運動能力回復・維持のためマッサージや体操、「温熱、光線、電気療法、スポーツ」など物理的な治療を用いながらリハビリの指導や助言を行う。
作業療法士
(通称OT:Occupational Therapist)
日常生活をスムーズに送るための応用的動作(食事、入浴、整容、料理など)のリハビリを行う専門職。日常生活における基本動作・運動能力が回復した方に対し、上記の応用動作能力と社会的適応能力を回復させるための指導や助言を行う。
言語聴覚士
(通称ST:Speech Therapist)
話すことや聞くことに何らかの障がいを抱えるご利用者に対して、発声の仕方などに関するリハビリを行う専門職。例えば、脳卒中の後遺症として現れた言語障がいのあるご利用者に対して物品や絵カードを見せ、その名前を言ってもらう、などの訓練を行う。また、嚥下(えんげ=食べ物を飲み込むこと)障がいのある方に対しても必要な訓練を行う。

デイサービスとの違い

デイケアと似たサービスにデイサービスが挙げられます。

デイサービスは介護保険制度上では通所介護と呼ばれ、デイケア(通所リハビリテーション)と同じように施設に通うサービスです。ただし、目的・対象・内容がデイケアと異なります。それぞれの違いを表にまとめました。

デイケア
(通所リハビリテーション)
デイサービス
(通所介護)
目的 心身機能の維持・回復を図り、自宅での生活を継続する。 日常生活上の介護や身の回りの世話を受け、充実した生活に繋げる。
対象 要支援1・2または要介護1~5
※要支援1・2の方は「介護予防通所リハビリテーション」として利用する。
要支援1・2または要介護1~5
※要支援1・2の方は介護保険ではなく、市町村が行う地域支援事業として利用する。
内容 リハビリ、医療的ケア、介護サービスなど。 食事、入浴、排泄などの生活上の介護、レクリエーションなどの余暇活動など。
人員体制 ・医師(医療機関併設の場合は兼務可)
・看護師、准看護師
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
・介護スタッフ など
・生活相談員
・看護師、准看護師
・介護スタッフ
・機能訓練指導員 など
運営主体 主に介護老人保健施設、病院、診療所といった医療法人など 主に社会福祉法人、民間企業、NPO法人など

デイケアには医師、看護師など医療に関わる専門職が配置されているため、リハビリだけでなく医療的ケアを受けられる点に特徴があります。

デイサービスについては、次の記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。

2.デイケアの一日の流れ

デイケアの利用時間は、おおむね6~8時間程度に設定されています。以下の表は一般的なデイケアにおける一日の流れの例です。

時間 内容 詳細
8:30~ 送迎 施設の準備した送迎車を使って、ご利用者を施設へ送迎する。
9:00~ バイタルチェック ご利用者のバイタル(体温、血圧など)を測定し、異常がないか確認する。
10:00~ 集団体操または
個別リハビリ
集団でのラジオ体操やリハビリテーション専門職による個別リハビリを行う。
10:30~ 入浴やレクリエーション 介護スタッフの介助を受けて入浴する。レクリエーションでは主に健康体操、脳トレなどが行われる。
11:30~ 口腔体操 食事の飲み込みが良くなるように口腔・嚥下の体操を行う。
12:00~ 昼食・休憩 栄養バランスの取れた食事が提供される。必要に応じて食事介助が行われる。
13:00~ 集団体操または
個別リハビリ
集団での体操やリハビリテーション専門職による個別リハビリを行う。
14:00~ レクリエーション 主に健康体操、脳トレなどが行われる。また、季節に応じたレクリエーションが提供される。
15:00~ おやつ お茶・おやつが提供される。
16:00~ 送迎 施設の準備した送迎車を使って、ご利用者を自宅へ送り届ける。

施設によっては、利用時間が半日で済むように1~4時間程度に設定しているところもあります。この場合、午前のみ・午後のみの利用となり、お昼をまたがないため、昼食の提供はありません。施設によって利用時間が異なる場合もありますので、ニーズに合わせてどの施設を利用するのか選択すると良いでしょう。

3.デイケア(通所リハビリテーション)の費用

ここからは、デイケアの費用について説明します。

要介護度ごとの費用目安

デイケアの利用料金は、ご利用者の要介護度や施設の規模、所要時間、自治体の取り決めなどによって費用が異なり、数百円程度の幅があります。下の表は通常規模の施設(6時間以上7時間未満)で想定されるご利用者負担額の目安です。

サービス 要介護度 ご利用者負担の目安
(1ヵ月あたり)
介護予防通所リハビリテーション 要支援1 1,712円
要支援2 3,615円
サービス 要介護度 ご利用者負担(1割)
(1回につき)
通所リハビリテーション 要介護1 667円
要介護2 797円
要介護3 924円
要介護4 1,076円
要介護5 1,225円

※ご利用者負担割合が1割の場合
※日常生活費(食事・おむつ代など)は含まない
※選択的サービス(栄養改善、口腔機能向上など)の費用は含まない
※2023年10月時点

入浴介助などは基本料金とは別に加算される

デイケアでは、個別でサービスを受けた場合、上記費用とは別にサービス加算として追加で料金がかかります。具体的には次のような例です。

サービス加算 内容 加算される費用
入浴介助 ・入浴でのサポート
・入浴中のご利用者の観察
40円~60円/1日
口腔機能向上 ・ご利用者の口腔機能の改善
・口腔機能に関わる個別指導、助言 など
150円~160円/1回
栄養改善 低栄養状態にあるご利用者の栄養管理など 200円/1回
(月に2回を限度)

※ご利用者の負担割合が1割の場合
※2023年10月時点

食費や日用品には介護保険が適用されない

デイケアを利用した際の食事やおやつ、その他個人で使うおむつなどの費用には介護保険が適用されないため、全額自己負担となります。費用は施設によって異なりますが、おおむね500円~1,500円が目安です。費用が気になる方は、担当の介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)に確認しましょう。

なお、おむつなどの日用品については、自宅で利用している物があれば持ち込みが可能です。こちらもケアマネジャーやデイケアの担当者にあらかじめ伝えておくと良いでしょう。

4.デイケア(通所リハビリテーション)のメリット

デイケアを利用するうえでのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。整理して見ていきましょう。

専門スタッフによるリハビリを受けることができる

リハビリテーション分野の専門職(理学療法士など)の専門的なリハビリを受けることができる点がメリットです。医師の指示のもと、各専門職が立案するリハビリテーション計画書に基づき、ご利用者は自身に最適なリハビリを受けられます。

手厚い医療ケアが受けられる

デイケアではリハビリだけでなく医療的ケアも提供しています。また、利用中にご利用者が急に体調不良を起こしたり事故に遭ったりした場合でも、医師・看護師がいることで適切な処置が受けられる点、重症の場合には併設する医療機関へすぐに搬送できる点もメリットとなります。

5.デイケア(通所リハビリテーション)のデメリット

デイケアには次のようなデメリットもあります。

利用するまでに時間がかかる可能性がある

デイケアのなかには、医師の診断書や指示書、健康診断を受けることを利用の条件として設定しているところがあります。この場合、利用開始までに時間や手間、費用がかかってしまい、すぐに利用をスタートできないことがあります。

デイサービスよりも費用が高くなる

デイケアやデイサービスの利用料金は、要介護度や施設の規模、利用時間などによって異なりますが、一般的にはデイサービスと比べて若干高く設定されています。

要介護度 デイケアご利用者負担
(1回につき)
デイサービスご利用者負担
(1回につき)
要介護1 667円 645円
要介護2 797円 761円
要介護3 924円 883円
要介護4 1,076円 1,003円
要介護5 1,225円 1,124円

※ご利用者負担が1割の場合
※通常規模の事業所(7時間以上8時間未満)の場合
※日常生活費(食費・おむつ代など)は別途負担が必要
※2023年10月時点

6.デイケア(通所リハビリテーション)を利用するには

ここからは、デイケアを利用するまでの手順について解説します。

要支援または要介護認定を受ける

デイケアは介護保険制度上のサービスであるため、まずはお住いの市区町村窓口に要介護認定の申請を行い、要支援1・2、もしくは要介護1~5と判定される必要があります。

その後、要支援1・2と判定された方は地域包括支援センターの、要介護1~5と判定された方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーに相談して、デイケアを利用したい旨を伝えます。
ケアマネジャーとは、ご利用者とそのご家族の相談に応じてケアマネジメントを行う専門職です。ご利用者の要介護状態を踏まえたうえで、それぞれの意向を聞きながら、希望に適うような介護サービスが利用できるようにケアプランを作成します。

要介護認定については以下の記事でより詳しく解説しています。

通いたい施設を見つけて書類を用意する

ケアマネジャーからいくつかのデイケアの紹介を受け、その中から利用したい施設を選び、実際に見学・体験します。デイケアのほとんどが見学・体験を受け付けてくれますので、施設の雰囲気や他のご利用者の様子などを見て、自分に合うかどうか判断しましょう。

主治医の指示書に基づいてリハビリを実施

利用するデイケアが決まれば、主治医またはデイケアに勤務する医師に指示書を作成してもらい、施設へ提出します。その後、施設担当者との面談などを経てケアマネジャーがケアプランを立案し、それに基づいてデイケアの利用がスタートします。

7.ご利用者に合った施設の選び方

最後に、ご利用者に合ったデイケアの選び方を解説します。ポイントは4つです。

施設の雰囲気、食事、スタッフ・他のご利用者の様子

施設内は明るい雰囲気か、提供される食事内容は充実しているか、スタッフの応対は丁寧か、他のご利用者がいきいきとリハビリを行っているかなどを注意深く観察して、ご利用者に合うかどうか判断しましょう。

リハビリテーション設備の充実度、環境が整備されているか

リハビリを行ううえでの専用設備・機器が充実しているか確認しましょう。
ご利用者の目的に合った、効果的なリハビリに適したマシン(例:筋力トレーニング機器、有酸素運動機器など)が整っているかチェックすることをおすすめします。

また、利用しやすい適度な広さやスペースがあるか、施設内は清潔に保たれているかなどもチェックすることをおすすめします。

サービス内容の充実度

デイケアではリハビリだけでなく、ご利用者の必要に応じて医療的ケアや介護サービス(食事・入浴の介助など)を利用できます。ただし、施設によって提供されるサービス内容や利用時間は異なります。必要なサービスが提供されているか、またサービス内容が充実しているかを確認しましょう。

利用の開始時期

デイケアには定員があるため、必ずしもすぐに利用できるとは限りません。利用の開始時期は、施設またはケアマネジャーへ相談し、いつから利用できるのか確認しておくと安心です。

8.ご利用者(ご本人)の気持ちもふまえて適切な施設の選択を

デイケアを選択・利用するうえでは、あらかじめご利用者ご本人の意思を確認するとともに、ケアマネジャーに相談するなどして、複数の観点から施設選びをすることが求められます。ここでご紹介したさまざまなポイントを確認しながら、ご利用者が最もいきいきと利用できる施設・サービスを選択しましょう。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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