訪問入浴介護とは?利用の流れや料金・おすすめの人について解説

訪問入浴介護は介護保険制度で利用できるサービスの一つで、自宅で生活する高齢者(以下、ご利用者)のもとに訪問入浴介護事業者が訪問して入浴介助を行うサービスです。

この記事では、訪問入浴介護の利用の流れ、費用、どのような方が対象となるのか詳しく解説します。

1.訪問入浴介護とは?

訪問入浴介護とは、訪問入浴介護事業者が特殊な浴槽を持参してご利用者のご自宅を訪問し、入浴の介護を行うサービスです。
基本的には、看護職員1人と介護職員2人の計3人(介護予防訪問入浴介護の場合は看護職員と介護職員が1人ずつの計2人)が訪問して介助を行います。

介護保険制度内のサービスであるため、ご利用者は費用の1割(所得によっては2・3割)の負担だけで利用できます。

訪問入浴介護を利用できる人

要介護認定で要介護1〜5と判定された方で、健康状態に問題がなく、かかりつけ医から入浴を許可されている方が利用できます。なお、要支援1〜2の人は「介護予防訪問入浴介護」を利用することができます。

訪問入浴介護の利用がおすすめの人

訪問入浴介護は、次のような理由で自宅にある浴槽での入浴が困難な方におすすめです。

  • 手足にマヒがある
  • 寝たきりである
  • 身体に障害がある
  • その他、自宅の浴槽で入浴することが困難

また、介護しているご家族も高齢で、入浴介助を行うことで双方に危険がある場合など、ご利用者・ご家族ともに自宅での入浴で安全が確保できないケースに当てはまる方にもおすすめです。

訪問入浴介護の利用料金

訪問入浴介護の利用料金は、対象となるご利用者の要介護度によって異なります。また、全身浴なのか、部分浴(足や手など身体の一部をお湯に浸して清潔に保つこと)なのか、清拭(入浴はしないが身体をタオルで拭いて清潔を保つこと)なのか、入浴の範囲、提供されるサービス内容によっても異なります。具体的な金額は次表のとおりです。

要介護度 範囲 1回あたりの費用
要介護1~5 全身浴 1,260円
部分浴 1,134円
清拭 1,134円
要支援1・2 全身浴 852円
部分浴 767円
清拭 767円

※令和5年8月時点の情報です
※上記は自己負担額の割合が1割の場合です
※サービス提供事業所の所在地、サービス提供体制によって費用が異なる場合があります

なお、要支援1・2の方は介護予防訪問入浴介護を利用します。介護予防訪問入浴介護は介護保険制度内のサービスで、ご利用者が要介護状態にならないための予防として提供されます。介護予防訪問入浴介護の特徴は次のとおりです。

  • 要支援1・2の方が利用できる
  • ご利用者が要介護状態にならないための予防が目的
  • 看護職員1人と介護職員1人の2名体制で行われる
  • 予防が目的であるため、ご利用者が自分でできることはできる限りご利用者自身にやってもらう(顔や身体の前面を洗うなど)

2.訪問入浴介護を利用するには?

訪問入浴介護を利用するためには、介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)や地域包括支援センターに相談して、ケアプランを作成してもらう必要があります。具体的な手順は次のとおりです。

  1. 市町村に要介護認定の申請を行う
  2. 要介護認定を受け、要支援1・2または要介護1〜5の判定を受ける
  3. 居宅介護支援事業所のケアマネジャー、または地域包括支援センターにケアプランを立ててもらう
  4. ケアマネジャーに相談し、ケアプランのなかに訪問入浴介護の利用を組み込む
  5. 訪問入浴介護事業所と利用契約を結ぶ
  6. 訪問入浴介護を利用する

要介護認定の申請からサービス利用までには、事業者との契約を含めたさまざまな事務手続きが発生します。ご利用者やご家族だけでこれらの手続きを進めることに不安がある方は、居宅介護支援事業所または地域包括支援センターに相談しましょう。

要介護認定について、詳しくはこちらをご覧ください。

3.訪問入浴介護の流れ

訪問入浴介護のサービスはどのような流れで利用するのでしょうか。具体的なシーンに合わせ、準備物と当日の流れを解説します。

準備しておくもの

入浴に必要なアイテム(浴槽、タオルなど)はすべて事業者が準備します。ご利用者やご家族側が準備するものは入浴後の着替え以外は特にありませんが、いつも入浴後に塗っている軟膏などがあれば準備しておきましょう。

また、ご利用者の心身状況や好みに応じて必要となる物品(好みのシャンプーや入浴剤など)は準備が必要です。初回時の利用で準備物に不明点があれば、訪問入浴介護事業者へ連絡するか、担当のケアマネジャーに尋ねてみてください。

当日の流れ

訪問入浴介護は次の手順で行われます。訪問・準備から片付けまでの所要時間は、約40分〜1時間です。

順序 項目 内容
1 訪問と浴槽の運び入れ 予定時間に職員がご利用者の自宅を訪問し、入浴介助で使用する浴槽や物品を運び入れる。
2 健康状態のチェック ご利用者の体調確認、体温や血圧などのバイタルチェックを行う。
3 お湯張りと脱衣準備 2の結果、入浴が可能ならば、お湯を張って脱衣の準備を始める。血圧が高ければ入浴不可で安静にし、発熱の場合は入浴不可で医療機関につなぐ。体調が優れない場合は清拭・部分浴に切り替える。
4 入浴 脱衣後、入浴する。洗髪、洗身を行いながら皮膚に異常がないかをチェック。上がり湯をしてベッドなどへ移る。
5 健康状態のチェックと着衣 着衣を行いながら、湿布を貼ったり軟膏を塗ったりするなどの保湿ケア、入浴後の体調確認を行う。
6 片付け 浴槽の引き上げ、物品の片付け。

4.訪問入浴介護を利用するメリット

入浴はご利用者の心身の健康維持に繋がるため、適切に利用機会を持つと良いでしょう。以下、ご利用者やご家族が得られるメリットを解説します。

ご利用者のQOLが向上する

入浴は、身体を清潔にするだけでなく、血行促進や自律神経の刺激によるリラックス効果があります。入浴を楽しみにしている方にとっては、QOL(Quality Of Life=生活の質・人生の質)が向上する良い機会となります。

ご利用者の健康維持に繋がる

入浴によってご利用者の身体を清潔に保つことで、皮膚のかゆみや褥瘡(床ずれ)を予防できます。また、血行が良くなり、発汗することでリラックス効果が生まれ、精神的に良い影響をもたらします。

ご家族の負担軽減に繋がる

ご家族が自宅でご利用者の入浴を介助することには、大きな身体的負担をともないます。また、入浴介助のノウハウがなければ、ご利用者を転倒させたり、介護者自身が転倒したりするなどの事故が発生するリスクがあります。訪問入浴介護サービスでは、専用の浴槽を使用しご利用者も安全に入浴することができるので、そうした負担や危険の回避に繋がります。

5.訪問入浴介護でよくあるトラブル

さまざまなメリットのある訪問入浴介護ですが、利用にあたっては以下のようなトラブルが起こる可能性もあります。

ご利用者のストレスになることもある

ご利用者によっては、他人が家に来ること自体にストレスを感じたり、入浴介助を受けることに羞恥心を感じたりする方がいます。このような場合は、サービスの利用が結果としてご利用者のストレスに繋がり、QOLの低下を招くことがあります。

ご利用者が入浴を拒否することもある

ご利用者によっては、何らかの理由で入浴を拒否する場合があります。例えば次のような例です。

  • 入浴するのが面倒
  • 他人に入浴する姿を見られたくない、恥ずかしい
  • (認知症を抱えていて)入浴自体が怖い心理状況になる
  • 入浴すると風邪をひいてしまう恐れ ほか

医療行為は対応できない

当日は看護職員が介添えしますが、一部の医療行為しかできません。医療行為ができるのは原則として医師に限られており、看護師は医師の指示に基づき次のような医療行為、療養上の世話を行います。

  • 健康状態の観察
  • バイタルのチェック
  • 点滴や注射
  • 服薬管理
  • 緊急時の対応
  • 病状悪化の防止・回復 ほか

訪問介護と比べると割高になる

訪問入浴介護は、訪問介護で入浴介護を利用した場合と比べて費用が高くなります。その理由は、看護職員1人と介護職員2人の計3名体制で行われるためです。

訪問介護は、サービス内容や時間によりますが原則1名の介護職員で行われるため、訪問入浴介護と比べて費用が安く済みます。
以下両者の費用を比較しました。

訪問入浴介護
(全身浴)
訪問介護
(身体介護で30分以上1時間未満の利用)
費用 1,260円 396円

※令和5年8月時点の情報です
※上記は自己負担額の割合が1割の場合です
※サービス提供事業所の所在地、サービス提供体制よって費用は異なる場合があります

このようなトラブルを防ぐためにも、訪問入浴介護サービスを利用する前に、サービスの内容や利用するご本人の意向を確認しておくことが大切です。

6.訪問入浴介護と他の介護サービスは同時に利用できる?

ご利用者によっては、訪問入浴介護のサービスを受けている間に、ホームヘルパーに居室の掃除や食事の支度(訪問介護の生活援助)をしてほしいなど、訪問入浴介護と同じ時間帯で他の介護サービスを利用したい、という方もいるでしょう。

しかし、介護保険制度の設定上、ご利用者は同一時間帯に一つのサービスのみ利用することを原則としています。そのため、上記のニーズを叶えることはできません。

ただし例外として、ご利用者の心身の状況や介護の内容に応じ、同一時間帯の利用が介護のために必要であると認められる場合には、次の例のように利用することが可能です。

  • 訪問介護と訪問看護の組み合わせ
  • 訪問介護と訪問リハビリテーションの組み合わせ など

訪問入浴介護の場合は、看護職員1人と介護職員2人の3人体制による入浴介助を基本としており、同じ時間帯に訪問介護を組み合わせて利用することは難しいと考えるべきでしょう。

7.訪問入浴介護を上手に活用してご利用者のQOL向上をはかろう

入浴を楽しみにしているご利用者にとって、入浴は身体を清潔にするだけでなく、心からリラックスできる大切な機会です。適度に訪問入浴介護を活用すれば、ご利用者のQOLの向上に繋げられるでしょう。

また、単に入浴の機会を作るだけでなく、訪問入浴介護事業所の職員とのコミュニケーションを通して、病気に罹患していないか、皮膚に異常がないかなど、ご利用者の変化にいち早く気付けるような体制を構築することもできます。

SOMPOケアでは、訪問入浴介護をはじめとするさまざまな在宅サービスをご用意しています。また、「介護なんでも相談室」ではサービス全般に関するお問い合わせを受け付けています。訪問入浴介護や訪問介護の利用を検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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