要介護認定とは?要支援・要介護の区分と審査を受ける方法

「要介護認定とは?」
「認定を受けるためにはどこに申請する?」
「どんな流れで行われるの?」

など、要介護認定に関して疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。

要介護認定とは、高齢者などがどの程度介護を必要とする状態なのか、数値化された基準で認定することです。介護保険という言葉は知っていても、要介護認定や要介護度の詳細を理解できていない方もいるのではないでしょうか。

この記事では、要介護認定の概要、要支援・要介護の区分ごとの違い、要介護認定を受けるまでの手続きなどについて解説します。最後まで読めば、要介護認定の仕組み・流れがよくわかるので、ぜひご覧ください。

1.要介護認定とは?

骨折などの怪我や病気、認知症などによって介護や支援が必要になった場合(以下、要介護状態)、介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受けて「要介護1~5」または「要支援1・2」と認定されることが必要です。

要介護認定とは、要介護状態にある方がどの程度介護を必要とする状態なのか、行政がその度合いを指標化し、認定する仕組みです。要介護度は介護サービスの給付額と関連していることから、その基準については全国一律で定められています。

要介護認定を受けて要介護度が判定されると、原則1~3割の自己負担で介護保険サービスを利用できるようになります。

2.要介護度の認定基準

要介護度の認定基準は、介護にどれくらいの手間・時間がかかるかによって定められています。厚生労働省は「要介護認定等基準時間の分類」について、次のように示しています。

要介護認定等基準時間の分類

直接生活介助 入浴、排せつ、食事等の介護
間接生活介助 洗濯、掃除等の家事援助等
問題行動関連行為 徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
機能訓練関連行為 歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練
医療関連行為 輸液の管理、褥瘡(じょくそう)の処置等の診療の補助

要介護認定等基準時間の分類

要支援 上記5分野の要介護認定等基準時間が25分以上32分未満またはこれに相当する状態
要介護1 上記5分野の要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当する状態
要介護2 上記5分野の要介護認定等基準時間が50分以上70分未満またはこれに相当する状態
要介護3 上記5分野の要介護認定等基準時間が70分以上90分未満またはこれに相当する状態
要介護4 上記5分野の要介護認定等基準時間が90分以上110分未満またはこれに相当する状態
要介護5 上記5分野の要介護認定等基準時間が110分以上またはこれに相当する状態

3.要支援・要介護の区分

要介護度は、「自立」「要支援1・2」「要介護1~5」の8つに区分されており、要介護認定を受けることで、ご本人の身体や精神の状態に応じてそのいずれかに判定されます。以下、それぞれがどのような状態にあるのか説明します。

自立(非該当)

歩行や起き上がりなど、日常生活上の基本的な動作を自分で行うことが可能で、かつ、薬の服用、電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態です。

要支援1

食事や排泄、入浴などの基本的な日常生活動作は自立していますが、起き上がりや立ち上がりの能力などが低下している状態です。また、手段的日常生活動作(電話、食事の支度、買い物など)の一部で見守りが必要な状態です。

要支援2

要支援1よりも、歩行や立ち上がりで介護者の見守りが必要な状態です。ただし、病気・障がいの有無によっては要介護状態となりえます。

要介護1

要支援2よりも、起き上がり・立ち上がりの能力が低下している状態です。片足での立位や一人での買い物が難しくなり、部分的な介助が必要となります。

要介護2

入浴時に身体を洗うことや歩行など日常生活において、一部の介助が必要となる状態です。手段的日常生活動作では、自立した金銭管理や食事の支度が難しくなります。人によっては認知症の症状が出て、日常生活上のトラブルに発展する恐れがあります。

要介護3

要介護2よりも認知機能(理解、判断、論理的思考など)や身体機能が低下している状態です。ご自身での寝返り、トイレ、歯磨き、更衣が難しく、全面的な介助が必要です。また、自立歩行が困難で、状態によっては杖や歩行器、車いすなどの福祉用具が必要となります。

要介護4

日常生活の多くの場面で、要介護3以上に介助が必要な状態です。自力での移乗、移動、洗顔、整髪が難しく、介助が必要となります。また、座位を保持すること、両足で立つことが困難で、移動には車いすが必須となる場合が多いです。加えて、認知機能の低下が著しく、日常生活を送るうえでは常時介助を要します。

要介護5

生活のあらゆる場面で常時介護が必要な状態です。重度の認知症や身体上の麻痺があり、日中はほぼ寝たきりの状態となり、日常生活のすべてにおいて介護者による介助が不可欠となります。

4.要介護認定の申請方法

介護保険サービスを利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。ここでは、要介護認定を受けるための申請の要領について解説します。

要介護認定の申請を行う場所

要介護認定の申請は、被保険者が居住している市区町村の役所で行えます。申請を受け付ける窓口・担当部署は「長寿福祉課」「介護保険課」「高齢・障害支援課」などが一般的ですが、名称は自治体によって異なりますので、ご自身の住む役所の窓口名をあらかじめ確認しておきましょう。
※地域包括支援センターでも対応している場合があります。お近くの地域包括支援センターに確認してみてください。

要介護認定の申請に必要なもの

申請に必要なものは次の書類です(詳細は市町村によって異なります)。

  • 要介護認定・要支援認定の申請書
  • 介護保険の被保険者証
  • 医療保険の被保険者証(65歳未満の場合)
  • 主治医意見書(市町村によって求められる場合がある)
  • その他(申請者の身分証明書、マイナンバーを確認できる書類など)

要介護認定の代理申請は可能

申請は、原則として介護サービスの受給を希望するご本人(以下、ご利用者)が行いますが、入院しているなどの理由で申請が難しい場合には、下記で申請を代行することができます。

  • ご利用者のご家族・親族
  • 地域包括支援センター
  • 居宅介護支援事業者
  • 介護保険施設(ご利用者が入居している場合)

なお、代理申請をする場合には、前述の必要書類に加えて、代理権確認書類(委任状や申述書など)や代理人確認書類、代理人所属確認書類が必要となります。

5.申請から要介護度の判定までの流れ

要介護認定の申請が終わったら、一次判定~二次判定を経て要介護度が判定されます。ここからは、要介護度の判定までのプロセスを説明します。

訪問調査

要介護認定の申請が終わると、訪問調査が行われます。

訪問調査とは、市町村の担当者などがご利用者の住む場所を訪問して行われる調査です。訪問員が訪問し、ご利用者とご家族に現在受けているサービスの状況や「身体機能や起居動作」「生活機能」「認知機能」などを、調査項目に則って聞き取りを行います。身体的・精神的な状況などを一定の項目について調査することで、介護の必要性を測ります。また場合によっては、ご家族のみへの聞き取りも行います。時間は1時間程度をみておくとよいでしょう。

主治医の意見書作成

申請を受けた市町村は、上記の訪問調査と平行して、ご利用者の主治医(かかりつけ医)に対して主治医意見書の作成を依頼します。意見書には、利用者の身体上または精神上の障がいの有無、疾病や負傷などの状況について記載されています。

一次判定(コンピューター)

前述の訪問調査で得られた情報はコンピューターに入力され、一次判定として自立、要支援1・2または要介護1~5のいずれかに判定されます。

二次判定(介護認定審査会)

一次判定の結果と、主治医意見書、その他の特記事項をもとに、介護認定審査会が最終的な判定を行います。これを二次判定といいます。二次判定では、医療や介護分野の有識者(医師や看護師、社会福祉士、介護福祉士など)が5人1組の合議体で要介護の審査・判定を行います。

二次判定の結果(要介護認定の結果)は、原則として申請から30日以内に申請者(被保険者)に通知されます。ただし、申請書類の不備があったり、訪問調査の日時調整に時間がかかったりした場合には、通知までの期間が延びることもあります。

6.要介護認定後の介護保険サービス利用の手順

要介護認定が終わって要介護度が判定されたら、担当のケアマネジャーがケアプランを作成したのち、介護保険サービスを利用することができます。

ここでは、ケアマネジャーがケアプランを作成し、介護保険サービスを利用するまでの流れを説明します。

【要介護の方】自宅で介護サービスを利用する場合

まず、居宅介護支援事業者を選びます。その後、ケアマネジャーを紹介されるので、問題がなければ契約します。ケアマネジャーは、利用者の状態やニーズに合わせて利用する介護保険サービスを提案し、ケアプラン(サービス計画書)を作成してくれます。ご利用者はケアプランに則って介護保険サービスを利用します。

【要支援・要介護の方】介護施設で介護サービスを利用する場合

入居したい介護施設の見学を行い、施設の担当者からサービス内容や費用に関する説明を受けます。問題がなければ申し込みを行います。施設のケアマネジャーがケアプラン(施設サービス計画)を作成するので、それに則って介護施設での介護サービス利用を開始します。
なお、介護度によって入居できる施設が異なるので、事前に確認するようにしましょう。

【要支援の方】介護予防サービスを利用する場合

要支援1・2と判定された方が介護予防サービスを利用する場合には、まず地域包括支援センターに連絡します。地域包括支援センターに所属する保健師などが、ご利用者の状態やニーズに合った介護予防ケアプランを作成し、それに則って介護予防サービスを利用します。

7.要介護認定に関するよくある質問

ここからは、要介護認定に関してよくある質問を取り上げ、その内容について解答・解説します。

要介護認定にはお金がかかる?

要介護認定にかかる費用はすべて介護保険で賄われるため、ご利用者・ご家族などの自己負担はありません。

要介護認定は更新の必要がある?

判定された要介護度には有効期間があります。なぜなら、人間の身体や精神の状態は一定ではなく、変化が生じるものだからです。新規で認定を受けた方は半年間、更新で認定を受けた場合には1年間です。引き続き介護保険サービスを利用する場合には、満了日までに更新の申請を行いましょう。

要介護認定を変更したい場合は?

ご利用者が病気になったなど、心身状況が著しく悪化した場合には、区分変更申請を行い、再度要介護認定を受けて介護度を変更することができます。

認定結果に納得できない場合は?

要介護認定の決定に不服がある場合は、まず市町村の窓口または地域包括支援センターへ相談に行きましょう。相談してもなお納得がいかない場合には、都道府県に設置された「介護保険審査会」に対して審査請求(不服申立て)をすることができます。審査請求の結果、再度要介護認定をし直す場合があります。

要介護認定を受けるとどの介護施設を利用できる?

判定された要介護度によって、利用できる介護施設が決まります。介護施設にはさまざまな種類がありますが、ここでは代表的な施設を取り上げ、整理して説明します。

種類 要介護度 特徴
特別養護老人ホーム 要介護3以上 自宅での生活が困難になったご利用者が、食事、入浴、排泄の介護を受けられる施設。
介護老人保健施設 要介護1以上 介護サービスを受けながら、自宅復帰のためにリハビリテーションが受けられる施設。
介護医療院 要介護1以上 長期療養と常時の介護が必要なご利用者が入居する施設で、医療体制が整っている点に特徴がある。
介護付有料老人ホーム(介護付きホーム) 自立~要介護5 主に介護を必要とするご利用者が入居し、食事、入浴、排泄の介助や、生活上の支援を受けて日常を送る施設。
住宅型有料老人ホーム 自立~要介護5 食事の提供や、掃除、洗濯などの生活上のサポートを受けられる施設。必要に応じて、外部の介護サービスを利用する。
健康型有料老人ホーム 原則として自立 余暇時間を過ごすための設備やサービス(レクリエーション、趣味のイベント、サークル活動)が充実している施設。ただし、要介護状態になった場合は、転居や退去しなければならない。
グループホーム 要支援2以上 認知症を患う要介護高齢者などが入居する小規模(5〜9人の少人数)の施設。利用者は基本的に個室で生活を送り、食事の時間などは共同スペースで過ごす。
サービス付き高齢者向け住宅 自立~要介護5 自立の方でも入居が可能な、自由度の高い施設。安否確認、生活相談サービスを提供し、介護が必要な場合、外部のサービスを利用する。

介護施設の種類について、詳しくはこちらをご覧ください。

8.介護保険サービスを利用するには要介護認定が必要

要介護認定の結果は、今後の介護サービス利用に大きく影響します。ご利用者の状態に合わせて介護が必要な度合いを公的に認めてもらい、自分のニーズに合った介護サービスを利用するようにしましょう。

もし要介護認定の結果に不満がある場合には、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)や地域包括支援センターのスタッフ、市町村窓口の担当者に相談し、場合によっては不服申立てを申請しましょう。特に地域包括支援センターは、高齢者の生活に関する相談窓口です。日常生活の課題や困ったことがあれば、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
介護保険に関する充分な知識を身につけ、やがてやって来るかもしれないリスクに備え、充分なサービスの利用につなげましょう。

監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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