訪問マッサージとは?施術の種類や費用、利用の流れをご紹介

「訪問マッサージってなんだろう?」「訪問リハビリテーションと何が違うの?」「訪問マッサージには要介護認定が必要なの?」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

訪問マッサージは、国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師がご利用者の自宅を訪問し施術するサービスです。あん摩やマッサージ、指圧を組み合わせて施術します。

この記事では、訪問マッサージの特徴や対象者、治療を受けるまでの流れなどを詳しく解説します。

1.訪問マッサージとは

訪問マッサージとは、次のような目的のもと行われます。

  • 関節可動域の拡大
  • 身体機能の維持向上
  • 疼痛緩和
  • 血流改善

訪問マッサージは医療保険適用のサービスです。医療上必要な療法で、通院や移動が困難な方が自宅でマッサージを受けられます。移動にかかる時間や費用を気にせず専門家の施術が受けられるので継続しやすいのが特徴です。定期的な施術によって高い効果が期待できます。

訪問マッサージの対象者

訪問マッサージの対象となるのは以下のような方です。

  • 寝たきり状態や歩行困難な状態で通院が難しい方
  • 医師から訪問マッサージの必要性が認められた方

訪問マッサージは自宅にいながら治療を受けられるのが大きなメリットです。下肢筋力の衰えや四肢の拘縮があって通院が難しい方、寝たきり状態の方でも効果的なマッサージが受けられます。

訪問マッサージには医療保険が適用されます。かかりつけ医の同意書または診断書が必要なため、まずは医師へ相談をしましょう。施設に入居している方でも、同意書や診断書があれば訪問マッサージの対象となります。なお、同意書または診断書の有効期限は6ヵ月となっています。
また訪問マッサージは、医療保険適用のサービスのため、介護認定の有無は問われません。医療保険を使う場合は医師の同意書または診断書が必要ですが、自費であれば医師の同意書や診断書がなくても利用できます。

訪問マッサージの施術内容

訪問マッサージには、マッサージと変形徒手矯正術の2種類があります。いずれも自宅・施設で受けられますが、施術内容やアプローチする部位が異なります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

マッサージ

マッサージには以下のような目的と効果があります。

  • 筋力の維持向上
  • 関節可動域の維持拡大
  • 筋緊張の緩和
  • 疼痛の緩和
  • 血液・リンパ液の循環改善
  • 心肺機能の向上
  • 精神的安静
  • 生活リズムの形成

マッサージでは、オイルやパウダーなどを使用し末端から心臓に向かって皮膚を刺激します。血液やリンパ液の循環改善を促すことで、痛みの緩和や動作改善などの効果が期待できます。施術部位は胴体、両手、両足です。同意書または診断書の内容に基づき、さらに細かく部位が決まります。

変形徒手矯正術

変形徒手矯正術(へんけいとしゅきょうせいじゅつ)は、関節可動域を広げるための施術です。下肢筋力の低下などで身体を動かせなくなると、筋肉が硬くなり関節可動域が徐々に小さくなる拘縮(こうしゅく)が起こります。放っておくとどんどん可動域が縮小してしまうため、継続的な施術が理想です。

変形徒手矯正術には以下のような目的と効果があります。

  • 拘縮予防
  • 関節変形の予防
  • 関節可動域の拡大
  • 血流の循環改善
  • 痛みの緩和
  • 筋力維持・向上

変形徒手矯正術では、負担にならない程度に手足の関節を動かしたり、マッサージを併用したりして、拘縮の予防や関節の機能回復を図ります。施術部位は、肩関節、肘関節、手関節、股関節、膝関節、足関節です。

なお、変形徒手矯正術の同意書または診断書は有効期限が1ヵ月です。そのため、毎月同意書か診断書を書いてもらう必要があります。

訪問リハビリテーションとの違い

訪問マッサージに似たサービスとして、訪問リハビリテーションがあります。訪問マッサージは要介護認定に関係なく通院が困難な方に向けて行われるものですが、訪問リハビリテーションは要支援・要介護認定を受けた方に向けて日常生活動作の回復を目指し行われるものです。

それぞれのサービスの内容を以下の表にまとめました。

訪問マッサージ 訪問リハビリテーション
対象者 寝たきり状態などで通院が困難な方
介護認定の有無は問われない
要支援および要介護者
症状 脳血管障害
頸椎損傷
パーキンソン病
リウマチ
脊柱管狭窄症
腰痛 など
脳血管疾患
整形疾患(骨折、切断、変形性膝関節症、大腿骨頸部骨折など)
神経難病(パーキンソン病、ALSなど)
脊髄損傷 など
施術者 あん摩マッサージ指圧師 理学療法士
作業療法士
目的 関節可動域の維持拡大
疼痛の緩和
身体機能の回復
日常動作機能の回復
関節可動域の維持
効果 血液・リンパ循環の改善
鎮痛
精神的安静
関節可動域の改善
筋力の向上
適用される保険 医療保険のみ 介護保険・医療保険
必要書類 医師の同意書または診断書
※自費の場合は不要
医師の指示書・診療情報提供書

施術は、訪問マッサージはあん摩マッサージ指圧師が、訪問リハビリテーションは理学療法士・作業療法士が行います。

また、訪問マッサージでは医師の同意書または診断書が必要ですが、全額自己負担する場合は同意書や診断書がなくとも施術を受けられます。一方、訪問リハビリテーションではサービスを利用する場合、医師の指示書または診断情報提供書が必要です。

2.訪問マッサージの費用

訪問マッサージの費用は、厚生労働省によって細かく定められています。料金算出に関連する項目は以下の通りです。

施術の種類と部位数 マッサージ……1部位につき350円
変形徒手矯正術併用の場合……1肢につき450円加算
往診の移動距離 4kmまで2,300円、4km超で2,550円
自己負担割合 年齢や所得によって1~3割
※2023年11月時点

それぞれ詳しく見ていきましょう。

部位の数と訪問時の移動に対して費用がかかる

訪問マッサージの費用は、基本的に施術した部位数と往診の際の移動距離に対して発生します。

計算式としては下記が基本となります。

    (施術の単価×部位の数+往療料)×自己負担割合

訪問マッサージの費用例

訪問マッサージの費用は1部位を1単位としており、集計された単位に単価をかけて算出されます。料金は厚生労働省によって一律に設定されています。しかし今後、特別地域加算などが設定されることにより地域によって料金が変動する可能性があります。

【例】

  • マッサージ5部位:350円×5単位=1,750円
  • 変形徒手矯正術3部位:450×3単位=1,350円
  • 移動距離4㎞以内:2,300円

<1割負担>(1,750円+1,350円+2,300円)×0.1=540円
<2割負担>(1,750円+1,350円+2,300円)×0.2=1,080円
<3割負担>(1,750円+1,350円+2,300円)×0.3=1,620円

3.訪問マッサージを受けるまでの流れ

訪問マッサージを受けるには、以下の手順を踏む必要があります。

ケアマネジャーや医師に相談しマッサージ師を探す

訪問マッサージを受けるにあたっては、まずはかかりつけ医やケアマネジャーに相談し、マッサージ師を探してもらいましょう。

マッサージ師は自分でインターネット検索して探すこともできます。しかし、医療保険を使う場合、医師の同意書か診断書が必須です。自分で探すとしても医師への連絡が必要ですので、なじみのあるかかりつけ医に相談することをおすすめします。

初回カウンセリングやマッサージの体験を受ける

マッサージ師が見つかったら、初回カウンセリングを受けます。マッサージ師が自宅を訪問し、ご利用者の状態や希望を聞き取ります。所要時間は1時間程度です。このとき、無料でマッサージを体験できる場合もありますので問い合わせてみましょう。

カウンセリングやマッサージの体験が終わったら、料金などの詳しい説明があります。そのうえで利用したいと思ったら申し込みとなります。

引き続き希望する場合は医師に同意書作成を依頼する

訪問マッサージを継続して利用する場合、定期的に医師の同意書か診断書をもらわなければなりません。発行依頼から数日の間に発行されます。

同意書や診断書の有効期限は6ヵ月です。そのため、6ヵ月ごとに医師の診察を受け、都度作成してもらう必要があります。

ここで注意したいのが、同意日です。同じ月の同意日でも、15日までかそれ以降で有効期限の月が変わります。同意日が16日~末日であれば期限は6ヵ月後ですが、1~15日であれば5ヵ月後になります。

【例】

1月10日が同意日の場合→6月30日が有効期限
1月20日が同意日の場合→7月31日が有効期限

なお、期限内に受ける訪問マッサージの回数に制限はありません。

4.訪問マッサージは通院が難しい方のためのサービス

訪問マッサージは、自宅で専門家のマッサージが受けられる医療保険適用のサービスです。介護認定を受けていなくとも、医師の同意書か診断書があれば利用できます。

もちろん、すぐに利用するかどうかを決める必要はありません。詳しく説明を聞いたうえで、痛みが和らぎ快適に暮らせそう、もっと体が動かせるようになりそうと感じたら、利用を検討してみましょう。

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監修・執筆

佐藤恵美

販売や事務を経験後、30代終盤で介護の世界へ転身。回復期病棟の介護スタッフとして7年勤務し、介護福祉士、社会福祉士を取得。デイサービスに異動し、介護との兼務で相談業務に従事。現在は老人保健施設の支援相談員として働きながら介護福祉系Webライターとして活動中。

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