特別養護老人ホームとは?特徴や費用、申し込みの流れをご紹介

特別養護老人ホームとは、介護保険施設(介護保険法では介護老人福祉施設)の一つで、重度の要介護状態にある高齢者が入居して介護サービスが受けられる施設です。

特別養護老人ホームではどのようなサービスが提供されるのか、どのような方が入居できるのか、また他の介護施設との違いなどがわからず、さまざまな疑問を感じている方も少なくないでしょう。

この記事では、特別養護老人ホームの特徴を説明するとともに、入居の条件、申し込みの流れなどをご紹介します。

1.老人ホームの種類をおさらい

高齢者向け住まい(老人ホーム等)には民間施設と公的施設とがあり、この記事で紹介する特別養護老人ホームは公的施設に分類されます。

民間施設と公的施設とでは、運営主体が違うことに加え、入居のしやすさや費用の面でも違いがあります。その違いを以下の表にまとめました。

民間施設 公的施設
設置・運営主体 主に民間企業 地方自治体、社会福祉法人、医療法人など
施設例 ・有料老人ホーム(介護付き有料老人ホームなど)
・グループホーム
・サービス付き高齢者向け住宅など
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護医療院
・養護老人ホーム
・軽費老人ホーム(ケアハウス)
費用 初期費用は施設によってさまざまで、0~数千万円程度。
月額費用は数十万程度。
初期費用は、施設によって不要、または0~数百万程度。
月額費用は数万〜数十万程度。
また低所得者に対する減免がある。
メリット 施設によっては、すぐに入居できることがある。
価格帯が幅広く、ご利用者が望む生活に合った施設を選ぶことができる。
入居費用が安く、入居一時金がかからない。
デメリット 民間企業が運営しているため費用が高い傾向にある。 施設によっては待機者が多く、すぐには入居できない。
要介護度によって入居条件が設けられている。

各老人ホームの詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

2.特別養護老人ホームとは

特別養護老人ホームとは、常時介護が必要な高齢者が入居し、食事・入浴・排泄などの介助、身の回りの世話などのサービスを受ける介護保険施設の一つです。どのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。

特別養護老人ホームの入居条件

特別養護老人ホームの入居条件は次のとおりです。

  • 65歳以上の方(40~64歳でも特定疾病に罹患し要介護3以上と判定されれば入居可)
  • 要介護認定で要介護3以上と判定された方
  • 常時介護が必要な状態で自宅での自立した生活が困難な方 など

ただし、自宅での老老介護が長期化し要介護者・介護者ともに危険な状態にあるなど、やむをえない事情があれば、要介護1~2の方でも特例で入居できることがあります。詳しくはお住まいの市町村窓口にご相談ください。

特別養護老人ホームで受けられるサービス

特別養護老人ホームでは、ご利用者に対して食事、入浴、排泄などの介護が提供されるだけでなく、その他の日常生活の世話や機能訓練、健康管理および療養上の世話が行われます。加えて、ご利用者の健康管理や緊急時の対応、レクリエーションなども提供されます。

特別養護老人ホームの居室には種類がある

特別養護老人ホームの居室には以下のような種類があります。

種類 特徴
従来型多床室 居室をカーテンやパーテーションで仕切り2~4人部屋を中心とした集団ケアを提供。
従来型個室 ユニット型個室が導入される前の形態ではあるが、居室は1人部屋で、廊下を挟んで個室が並んでいるイメージ。
ユニット型個室 施設の環境を自宅での生活空間に近づけるユニットケアを提供するため、共同生活室を取り囲むように個室を設けている形態。
ユニット型個室多床室 以前は大部屋だった居室を簡易的な壁で仕切って個室とし、ユニットケアを行っている形態。

現在、新規で特別養護老人ホームを設立する場合は、全室個室・ユニット型であることが原則とされています。
なお、ご利用者一人あたりの床面積は10.65㎡以上とされており、地下に設けてはならないなどのルールがあります。

配置されるスタッフ

特別養護老人ホームに配置されるスタッフの基準は次のとおりです。施設によっては常勤の医師を配置したり、介護スタッフの数を基準より多く置いていたりする場合があります。

職種 配置基準
施設長(管理者) 1人
医師 必要な数
介護スタッフ
看護師
要介護者3人に対して1人以上
生活相談員 ご利用者100人に対して1人以上
機能訓練指導員 1人以上
介護支援専門員(ケアマネジャー) 1人以上
栄養士 1人以上
ユニットリーダー ユニットごと

3.特別養護老人ホームの種類

特別養護老人ホームは、広域型特別養護老人ホーム、地域密着型特別養護老人ホーム、地域サポート型特別養護老人ホームの3つに分類されます。以下、それぞれの特徴を説明します。

広域型特別養護老人ホーム

広域型特別養護老人ホームとは、一般的な特別養護老人ホームを指します。数としては最も多いタイプです。施設の定員は30人以上で、ご利用者の居住地に関する規制がないため、どこに住んでいても入居の申し込みができます。提供されるサービスは、食事、入浴、排泄などの介助、リハビリテーション、健康管理、レクリエーションなどです。

地域密着型特別養護老人ホーム

地域密着型特別養護老人ホームは、定員が29人以下に設定されている施設で、入居対象は施設と同じ市区町村に住んでいる方に限定されます。広域型よりも規模が小さいことから、設置基準が緩和されている点に特徴があります。提供されるサービスは広域型特別養護老人ホームと大きな違いはありません。

なお、地域密着型特別養護老人ホームは、サテライト型と単独型の2つに分けられます。サテライト型は広域型特別養護老人ホームを本体施設として、そこと連携を取りながら別の場所で運営される点に特徴があります。
一方の単独型は、本体施設がなく単独で設置・運営されている小規模の特別養護老人ホームです。

地域サポート型特別養護老人ホーム

地域サポート型特別養護老人ホームは、自宅で介護を受けながら生活する要介護高齢者を対象に、見守りなどのサポートを行う施設です。施設へ入居するのではなく、自宅での生活を続けながらサービスを受けることができます。

定員は特に設けられておらず、24時間の見守り、定期巡回、日常生活の相談対応などのサービスが提供されます。現在は施設の数としては少ないものの、要介護高齢者の増加にともないニーズは高まっています。

4.特別養護老人ホームの特徴やメリット

ここからは、特別養護老人ホームの特徴やメリットを解説します。

入居一時金がかからない

民間企業などが運営する有料老人ホームやケアハウスでは、ご利用者に入居一時金の支払いを求めるケースが少なくありません。しかし、特別養護老人ホームは入居一時金がかからないため、経済的な負担が軽減されます。

24時間体制で介護を受けることができる

特別養護老人ホームは常時介護が必要な高齢者が入居していることから、手厚い介護サービスが受けられます。24時間体制で介護を受けられるため、施設で生活するご利用者はもちろんのこと、ご家族にとっても安心です。

看取りもしてもらえる

特別養護老人ホームの多くは、ご利用者やご家族の意向を踏まえたうえで、最期まで人としての尊厳を保てるように看取りを行っています。看取りとは、人が最期を迎えるまでの間に行われる必要な介護、見守りなどを指します。

ただし、すべての特別養護老人ホームで看取りを行っている訳ではありません。入居を希望する段階で施設に確認を取りましょう。

5.特別養護老人ホームのデメリット

一方で、特別養護老人ホームにはデメリットもあります。

まず、特別養護老人ホームには入居の条件が設定されており、原則として要介護3以上の方のみ入居できます。要介護2以下の方は、認知症の重度化や家庭環境によって介護が受けられないなどの特別な事情がない限り、入居はできません。また、費用が比較的手ごろであることから人気があり、施設によっては待機者がいるため、入居までに時間がかかる点もデメリットといえるでしょう。

加えて、介護老人保健施設や介護医療院と比べると、常勤の医師がいない点や看護師が24時間常駐している訳ではない点が心配だという方もいるでしょう。

6.特別養護老人ホームの費用

では、特別養護老人ホームの入居にかかる具体的な費用を見ていきましょう。

月額料金はご利用者の要介護度・所得によって異なる

月額料金はご利用者の要介護度や所得によって金額や負担割合が変わり、所得が一定額以下などの一部条件に該当するご利用者は負担の減免が受けられます。

特別養護老人ホームの月額料金には何が含まれている?

特別養護老人ホームの月額費用には、居住費・食費・介護サービス費・その他の費用が含まれています。月額費用はご利用者の要介護度や所得によって異なりますが、一般的には約10万円~15万です。

以下、それぞれの内容をまとめました。

種類 内容 備考
居住費 施設内の居室を利用することでかかる費用、家賃のこと。金額は国の定める基準費用額に基づいて設定される。
※約2万円~6万円/月
使用する居室の種類によって異なるが、ご利用者の所得によって減免がある。
食費 1日3食分の費用。
※約4.5万円/月
ご利用者の所得によって減免がある。
介護
サービス費
施設で利用した介護サービスの費用のうち、ご利用者の自己負担分。
※約2万円~3万円/月
要介護度によって異なる。また、所得によって1~3割の負担。
加算 施設の設定する各種加算に基づいて、ご利用者が負担する。
※施設によって異なる。
例)
・サービス提供体制加算(介護スタッフのうち介護福祉士資格を持つ者の割合が8割以上の場合加算される)
・初期加算(施設外から入居を受け入れた際に、ある一定期間かかる)
・常勤医師加算(施設に常勤の医師がいる場合は加算される) など
施設の体制、施設の方針、ご利用者の状況などの加算は変わる。

その他に、散髪代やリネン代など(※約1万円)の費用がかかります。これらは介護保険が適用されないため全額自己負担となります。また特別養護老人ホームの場合、おむつ代は施設負担となります。

所得が一定以下の場合には補足給付を受けられる

前述のとおり、ご利用者の所得が一定以下の場合は居住費・食費の負担軽減措置が設けられており、これを特定入居者介護サービス費(補足給付)といいます。

この制度は、特別養護老人ホームなどの介護保険施設に入居する方で所得や資産が一定以下の方に対して、負担限度額を超えた居住費と食費の負担額が介護保険から支給されるものです。

対象となるかどうか知りたい方は、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。

7.特別養護老人ホームへの入居申し込みの流れ

実際に特別養護老人ホームに入居したい場合にはどのように申し込めば良いのか、その流れを説明します。

1.施設の見学

入居を希望する特別養護老人ホームに連絡を取り、パンフレットなどを取り寄せるとともに、施設の見学希望を申し出ます。

見学日時の調整ののち、実際に施設へ足を運び見学します。見学したい箇所やスタッフに聞きたいことをあらかじめピックアップしておくとスムーズです。

2.申し込み・審査

見学して問題がなければ、施設への入居申し込みを行います。申し込みに必要な書類(入居申込書、重要事項説明書、健康診断書、戸籍謄本など)は施設によって異なるので、見学の際にその内容を確認しておくと良いでしょう。

申し込みが受理されたあと入居となりますが、空きがない場合は待機者リストに登録され、優先順位付けが行われます。順位は申し込みの早い者順というわけではなく、認知症が重度化している、家族環境によって介護を受けられないなどの事情を抱える方を優先するようなルールが設けられています。

その後、入居に向けた審査があり、実際に入居できるかどうかが判断されます。施設によっては、待機者に対して現時点で何番目なのか順位を知らせる通知を行っています。

3.面談・入居可否の決定

入居間近になると、施設から連絡が来ます。入居希望者ご本人・ご家族が施設へ足を運び、生活相談員との面談・聞き取りなどを経て、入居に際して必要な書類(健康診断書など)を提出します。その後、施設で入居に関する判定会議が行われ、入居可と判定されれば、施設に空室が出た段階で入居することになります。

8.特別養護老人ホームへの入居待機期間を短くするためするには

これまで説明してきた通り、特別養護老人ホームは人気があるため、入居するまで時間がかかる場合が多いです。
ここでは、入居するまでの待機期間をできる限り短くするための工夫をご紹介します。

申込書に急いでいる事情を具体的に記載する

入居申込書に、入居が必要な理由・事情を具体的に記載します。前述のとおり入居の必要性が高い方を優先するルールがあるため、施設担当者が判断しやすいように、自宅での介護が困難な理由、困っている具体的な情報などを詳しく記載しましょう。

居住地域外の施設に申し込む

ご本人と相談の上、居住地域外にある施設に申し込むのも一つの手段です。広域型特別養護老人ホームの場合、居住地に関する規定が設けられていないため、どこに住んでいようと入居の申し込みは可能です。

地域によって高齢化率が異なり、待機者数も違うため、居住する地域の外で施設を探して申し込むと、入居の順番が早く回ってくる場合があります。

複数の施設に同時に申し込む

申し込みから入居決定までには時間を要します。入居待ちのリスクを軽減するために、一つの施設に申し込んで空きを待ち続けるというのではなく、複数の施設に同時に申し込みましょう。

ただし、お住まいの自治体によっては申し込みできる施設数に制限を設けているところがあるので注意が必要です。また、入居が決定したら、他施設への申し込み取消しを忘れずに行いましょう。

9.特別養護老人ホームは必要性の高い方を優先とした施設

特別養護老人ホームは、常時介護が必要な高齢者が入居し、食事・入浴・排泄などの介助、身の回りの世話など、介護の必要性の高い方が優先的に入居できる介護保険施設です。
食事、入浴、排泄などの介護や機能訓練、ご利用者の健康管理や緊急時の対応、レクリエーションなどが受けられます。

さまざまある介護施設の中でも比較的安価なため利用しやすい一方、待機者が多く入居までに時間がかかることも多いです。また、特別養護老人ホームの中でも種類の違いや、施設によって理念や方針、体制なども異なるため、入居を検討される場合は、その施設がご利用者自身のニーズに合うかどうか、必ず確認を取りましょう。

SOMPOケアでは、特別養護老人ホームはもちろん、それ以外の介護施設への入居を検討している方、迷っている方、悩んでいる方も対象に、「介護なんでも相談室」のサービスを設けております。ご興味のある方はぜひ一度ご連絡ください。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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