介護保険施設とは?種類とそれぞれの特徴をわかりやすくご紹介

高齢になると身体機能や認知機能の変化により、住み慣れた自宅での生活が難しくなる場合があります。そのような方が入居する施設はさまざまありますが、その一つが介護保険施設です。

介護保険施設とは、地方自治体や社会福祉法人などが運営する公的施設で、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の3種類があります。

この記事では、介護保険施設3種類の特徴や受けられるサービス内容を解説するとともに、入居条件や費用をご紹介します。

1.介護保険施設とは

まず、介護保険施設とはどのような施設なのでしょうか。その特徴を詳しく見ていきましょう。

介護保険施設は3つの種類がある

介護保険施設は介護保険法に定められた高齢者福祉施設で、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の3種類があります。介護療養型医療施設も含まれていましたが、こちらは2012年以降新設が認められておらず、2023年度末に廃止されます。

いずれの施設も、共通する入居条件は以下のとおりです。

  • 65歳以上であること(65歳未満の特定疾病に罹患する者を除く)
  • 要介護認定を受けていること

また、施設によっては他の条件を設定している場合があります。

3つの施設の特徴は以下のとおりです。

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護医療院
特徴 ご利用者の生活施設 在宅復帰を目的としリハビリテーションを行う施設 医療が必要な高齢者の長期療養施設
入居条件 要介護3以上の要介護高齢者 要介護1以上で医療的管理、機能訓練の必要な要介護高齢者 要介護1以上で医療的管理の必要な要介護高齢者
主な運営主体 地方公共団体
社会福祉法人など
地方公共団体
医療法人など
地方公共団体
医療法人など
月額費用の目安 約10万円~15万円 約10万円~15万円 約5万円~25万円
認知症のある方の入居可否※
看取り対応※

※認知症のある方・看取り対応ともに入居不可・対応不可の施設もあります。

入居一時金などの費用は無料

介護保険施設は、民間の運営する有料老人ホームなどとは異なり、入居一時金はかかりません。月額費用としては、居住費・食費・介護サービス費・その他の費用がありますが、こちらも有料老人ホームなどと比べて割安となっています。

また、ご利用者の要介護度や所得によっても金額や負担割合が異なり、所得が一定額以下であるなど、一部条件に該当するご利用者は負担の減免が受けられます。

有料老人ホームなどとの違い

有料老人ホームは主に民間企業が運営する施設で、比較的軽度の要介護高齢者でも入居可能な施設です。入居にあたっては一時金がかかることが多く、月額費用も高めに設定されています。

一方、介護保険施設は地方自治体や社会福祉法人が運営する施設で、施設によっては重度の要介護高齢者が入居します。入居一時金はかからず、月額費用も安く設定されているため、入居希望者が多い傾向にあります。

2.特別養護老人ホームの特徴

特別養護老人ホームは通称「特養」とも呼ばれる施設で、入居する要介護高齢者に対して、食事・入浴・排泄の介助・身の回りの世話などのサービスが提供されます。以下、施設の特徴を解説します。

要介護度が3以上の方を対象としている

特別養護老人ホームの入居条件は次のとおりです。

  • 65歳以上の方
  • 要介護認定で要介護3以上と判定された方
  • 常時介護が必要な状態で自宅での自立した生活が困難な方 など

※40~64歳でも特定疾病に罹患し要介護3以上と認定されれば入居可
※要介護3未満の方でもやむをえない事情があれば特例入居が可能

主に、重度の要介護状態で医療的ケアが必要ない高齢者が入居している点に特徴があります。

比較的費用が安く看取り対応もしてもらえる

特別養護老人ホームは月額費用が約10万円~15万円で、有料老人ホームなどと比べると経済的です。

ご利用者は、心身の状態に応じて身体介助・機能訓練・生活支援のサービスを受けながら日々を過ごします。看取り対応をしている施設も多いため、施設によっては終の棲家として生活を送ることができます。

入居希望者が多く待機時間が長い

特別養護老人ホームは入居一時金がかからず、月額費用が安く済むことから、入居希望者が多く、入居までに時間がかかる傾向にあります。

厚生労働省が発表した「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度調査)」によると、特別養護老人ホームの待機者はおよそ21.3万人おり、うち在宅の方は8.8万人となっています。平成31(2019)年度の調査と比較すると数は減っているものの、依然として多い状況にあるといえます。

特に交通アクセスの良い特別養護老人ホームでは待機者が多くいるため、入居申し込みをしたとしても、実際入居するまでに時間がかかってしまいます。一方、地方の特別養護老人ホームでは待機者が少ない施設もあり、この場合は短い待機期間で入居できる可能性もあります。

待機期間は施設の所在地、入居希望者の数やその方の心身状態などによって大きく異なるため一概にはいえませんが、短くて1ヵ月未満、長い場合は1年~2年程度でしょう。

特別養護老人ホームに関してより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

3.介護老人保健施設の特徴

介護老人保健施設は、急性期の治療を終えた要介護高齢者が入居し、介護サービスを受けながらリハビリテーションに取り組んで在宅復帰を目指す施設で、通称「老健」とも呼ばれます。
以下、詳しい特徴を見ていきましょう。

短期の利用を前提としている

介護老人保健施設は原則として3ヵ月(ご利用者の心身状況によっては継続入居が可能)の利用を前提としています。なぜなら、ご利用者の在宅復帰を目的とした施設だからです。ご利用者は、提供される身体介護のサービスやリハビリテーションを受けながら在宅復帰を目指します。長くても1年程度の入居が前提となっています。

とはいえ、施設には重度の認知症や要介護度の高いご利用者が入居している場合もあり、結果として入居期間が長期化するケースもあり、「特養化している」との指摘もあります。

リハビリ設備が整備されており医師も常駐している

介護老人保健施設ではご利用者の在宅復帰を促すためにリハビリテーションが提供されていることから、特別養護老人ホームなどと比べるとリハビリテーション機器が充実しています。また、常勤の医師がいるだけでなく、リハビリテーションの専門職である理学療法士や作業療法士なども勤務しています。

介護老人保健施設に関してより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

4.介護医療院の特徴

介護医療院は2018年4月に新たに設けられた施設で、経管栄養や膀胱カテーテル、喀痰吸引など、医療と介護の両方が必要な要介護高齢者が入居し、長期で利用できます。重度の身体疾患・疾病を抱える方や身体合併症のある認知症高齢者が入居するⅠ型と、Ⅰ型のご利用者よりも比較的安定した状態の方が入居するⅡ型とに分かれています。

医療・看護ケアの人員配置が手厚い

介護医療院は、充分な医療・看護ケアが行えるよう、以下のとおり人員配置基準が定められています。

専門職 基準
医師 Ⅰ型: 48対1以上(施設で3以上)
Ⅱ型:100対1以上(施設で1以上)
薬剤師 Ⅰ型:150対1以上
Ⅱ型:300対1以上
看護職員 6対1以上
介護職員 Ⅰ型:5対1以上
Ⅱ型:6対1以上
理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
実情に応じた適当数
栄養士 入所定員100以上の場合、1以上
介護支援
専門(ケアマネジャー)
1以上(100対1を標準とする)
放射線技師 実情に応じた適当数

介護医療院には医師が常駐しているため、これまでにご紹介した特別養護老人ホームや介護老人保健施設に比べると、より手厚い医療ケアが受けられる体制が整っています。

介護療養型医療施設よりも居室が広く設定されている

介護医療院は、2023年度に廃止が決まっている介護療養型医療施設に入居するご利用者の移り先として設けられた施設です。介護療養型医療施設と比べると居室が広く、パーテーションなどで区切られているなど、ご利用者はプライバシーに配慮された生活空間で過ごすことができます。

5.どの施設が適しているか、わからない方は相談を

介護保険施設は有料老人ホームなどと比べて入居費用が比較的安価であるため、経済的負担が少なくて済みます。ただし、安価であることから入居希望者が多く、すぐに入居できない場合があります。

施設への入居は老後の生活の質を左右する重要な選択ですので、各施設の特徴を把握したうえで入居に向けた相談を進めることが理想です。どの施設に入居したら良いか、判断が難しい場合は、地域包括支援センターに相談すると良いでしょう。
またSOMPOケアでは、高齢者の介護や施設への入居に関する相談窓口「介護なんでも相談室」を設けています。施設選びにお悩みの場合はお気軽にお問い合わせください。

SOMPOケアの「介護なんでも相談室」はこちら

監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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