ユマニチュードの四つの柱(その3)
2023年6月8日
いつもホームだよりをご覧頂き、ありがとうございます。
ケアコンダクターの保坂です。
先日、ユマニチュードの「見る」「話す」について少し触れさせて頂きました。
今回は、ユマニチュードの基本となる四つの柱の一つ、「触れる」について、私なりに噛み砕いてお話させていただければと思います。
ユマニチュードの「触れる」も、「見る」「話す」と同じく、相手との絆を結ぶための動作の一つになります。
「見て(+笑顔)、話しかけて、触れる。」=「お互いを認識し、触れ合う事で、さらに優しさを伝える。」です。
触れ方としては、「5歳児の力以上は使わない」「広く優しくゆっくりと」「掴まない」「プライベートゾーンを知る」です。
「5歳児の力以上は使わない」
5歳児の力?どのくらい?と思う方もいらっしゃると思います。(私も初め、そう思いました。)
「5歳児の力=それくらい優しく」と考えていただければと思います。
5歳児の力と念じれば、優しく触れることを意識できるのだと思います。
「広く優しくゆっくりと」
想像してください(近くに親しい人がいたら実際に試してみてください)。
A:「あなたの背中を、ふいに誰かが、指先で急に突いてきたとき。」
B:「あなたの背中を、ふいに誰かが、手のひらで優しく、
ゆっくりと触れてきたとき。(もちろん5歳児の力で)」
どちらが受け入れ易いでしょうか?
そして、どちらが気持ち良いでしょうか?
「掴まない」
掴むという行為について何か問題があるのか?と思う方もいらっしゃると思います。
では、「自分が誰かに腕を掴まれる。」事を想像してみてください。
次に、なんで掴まれたのか、考えられる理由をいくつか挙げてみてください。
プラスのイメージは浮かびにくいのではないでしょうか?
私が思い浮かんだプラスのイメージは、ボクシングの判定勝ちの場面くらいです。
掴むという行為は、抑止の意味合いが強いのだと考えます。
自分がしている事を止められる、何かを咎められるなど。
お互いを意識できていない状況で、いきなり掴んできた相手をどう思うか。
自分に害のない優しい人だと、すぐに思ってもらうことは難しくなるでしょう。
「プライベートゾーンを知る」
プライベートゾーンと聞かれると、何を思い浮かべるでしょうか?
一般的には、みだりに他人に見せたり触らせたり、他人が見たり触ったりするのをはばかるべき、特定の身体部位(プライベートパーツなど)等と記されています。
ただ、介護の現実として、プライベートゾーンに踏み込まなければならない事の方が多いと思います。
ユマニチュードでも基本的な考え方は同じだと思いますが、「その方が触れて欲しくない所や敏感な部分」を示していると思います。
人間の体には、敏感(手、指先など)な部分と鈍感(背中、肩など)な部分があると思います。
突然手を握られた時と、突然肩に手を掛けられた場合を想像してみて下さい。
前者の方が、刺激が強いのではないでしょうか?
そして、これから介助に入らせていただく方が、まだ私たちの事を認識出来ていない状況で、いきなり私たちに敏感な部分を触られたとしたら、どうなるでしょうか?
びっくりされるのはもちろんですし、場合によっては悲鳴を上げるかもしれません………。
以前に、「見る」「話す」で触れたように、見つめることでお互いを認識し、優しく話しかけ続け、そして優しく触れる事で、「この人は私を笑顔で見つめてくる。優しい声を掛けてくれている。ゆっくりと背中をさすってくれる。心地よいなぁ。この人なら安心できそうだ。任せても大丈夫そうだ。」と思ってもらえたら最高だと私は考えています。
また、ユマニチュードでは、その方のとの絆を結ぶ為に、「見る」「話す」「触れる」の技術をできれば全部、少なくとも2つを駆使します。
一人では難しい時には、複数名で対応することもあります。
Aさんはしっかり見る(認識してもらう)係、Bさんはひたすらに優しく話しかけ、優しさを届ける係、Cさんはとにかく優しく触れ続け、安心を届ける係、などなど。
お互いの信頼関係がしっかりと結ばれた時、「ユマニチュードの魔法」がかかるのだと、私は思っています。
そしてその瞬間を、施設のスタッフやご家族様、多くの方と共有できるよう、努力して行きたいと思います。
以上です。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
【ユマニチュードって何?】
https://www.sompocare.com/service/home/kaigo/H000026/message-detail/207268
【ユマニチュード4つの柱(その1)「見る」】
https://www.sompocare.com/service/home/kaigo/H000026/message-detail/208025
【ユマニチュード4つの柱(その2)「話す」】
https://www.sompocare.com/service/home/kaigo/H000026/message-detail/214071
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