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要介護状態になっても自宅での生活を続けるため、またはご家族の介護をするために、自宅の一部をリフォームしたい、段差をなくしてバリアフリー化をしたい、と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
介護リフォームは、安全かつ効率的な介護に繋がることが期待でき、介護が必要な方やご家族双方にメリットがあります。今後も介護を必要とするご本人が安心して生活できるようにリフォームをするには、改修の計画づくりや施工業者選びが重要なポイントとなります。
この記事では、介護リフォームのメリットや具体的なリフォーム箇所、費用目安などを解説するとともに、その補助・助成制度をご紹介します。
目次
介護リフォームとは、介護を必要とするご本人が自宅で安心して生活するため、またはご家族が安全かつ効率的な介護を行うために行われる住宅の改修・リフォームを指します。リフォームを行うことで、屋内でつまずいたり物にぶつかったりすることによる、事故や怪我の予防になり、結果として要介護状態の悪化を防止することに繋がります。
介護リフォームのニーズが高まる背景には、少子高齢化の進行とともに、高齢者の家庭内事故が起きている現実があります。
消費者庁新未来創造戦略本部が発表した「高齢者の事故防止等に関するアンケート調査報告書(令和6年4月)」では、日常生活において「けがをした、またはしそうになった」経験について、居室で46.2%、寝室で42.3%、廊下で40.8%、玄関で39.7%と、いずれもご自宅での事故が半数に近い割合を示しています。
また、東京消防庁の「救急搬送データからみる高齢者の事故~日常生活での高齢者の事故を防ぐために~」では、高齢者の日常生活中の事故として、約9割を占めるのが転倒・転落の事故であり、毎年多くの方がこれらの事故で救急搬送されていることがわかっています。
では、介護リフォームを行うメリットはどこにあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
リフォームすると生活が便利になり、活動範囲が広がって、日常生活動作(起き上がり、食事、移動、移乗など)を維持することに繋がります。
結果として、自立した生活を送りやすくなり、生活の質的向上が期待できます。
リフォームは、介護を担うご家族の身体的負担の軽減にも繋がります。
リフォームすることによって介護がしやすくなるだけでなく、調理や掃除、屋内移動がしやすい動線を作ることができるのです。
介護リフォームでは、主にどのような箇所をリフォームすると良いのでしょうか。具体的な場所をご紹介するとともに、そのメリットとポイントを解説します。
玄関のリフォームで多いのは、扉の変更やスロープ・手すりの設置などです。
これらのリフォームによって、玄関での靴の脱着がしやすくなったり、車椅子での出入りが楽になったりします。
なお、玄関のリフォームで押さえるべきポイントは次のとおりです。
廊下や階段のリフォームでは、床材の変更、手すりの設置、階段の勾配を緩くする、段差の解消、照明の設置、昇格機の設置などが挙げられます。
高齢になると、階段の昇降が難しくなったり、平坦な廊下でも転倒したりするリスクがあります。しかし、リフォームによって、転倒や転落を防止するだけでなく、階段の昇降による身体的負担を軽減することにも繋がります。
なお、廊下や階段のリフォームのポイントは次のとおりです。
お風呂のリフォームの場合、手すりの設置、出入りするときの段差の解消、滑りにくい床材への変更、浴槽などのスペースの拡張、浴室暖房乾燥機の設置などが挙げられます。
リフォームすることで、浴室や脱衣所内での転倒や浴室と脱衣室の温度差によるヒートショックを防ぐことができます。また、介護者による入浴介助の負担軽減にも繋がります。
なお、お風呂場のリフォームのポイントは次のとおりです。
トイレのリフォームの場合、便座や便器の交換、和式から洋式への変更、手すりの設置、スペースの拡張(トイレ介助に必要な広さの確保)などのリフォームが考えられます。これらのリフォームは、排泄時の身体的負担の軽減や転倒防止に繋がります。
なお、トイレのリフォームのポイントは次のとおりです。
このほか、寝室やダイニング(居間)をリフォームするケースもあります。介護を必要とするご本人が寝室やダイニングで過ごすことが多ければ、リフォーム箇所として優先順位を高めに設定するのも一つの方法です。
介護リフォームをする場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。以下、それぞれの箇所のリフォームの例を取り上げ、かかる費用の目安をご紹介します(以下は2025年1月調査時点の費用目安です)。
玄関をリフォームする場合の費用目安は次のとおりです。
内容 | 費用目安 |
---|---|
手すりの設置 | 1万円~20万円 |
扉の引き戸への変更 | 10万円~60万円 |
スロープの設置による段差の解消 | 8万円~20万円 |
廊下や階段をリフォームする場合の費用目安は次のとおりです。
内容 | 費用目安 |
---|---|
手すりの設置 | 1万円~20万円 |
床材の変更 | 8万円~20万円 |
廊下の横幅の拡張 | 20万円~100万円 |
廊下と部屋の段差の解消 | 8万円~20万円 |
階段の改修 | 20万円~100万円 |
お風呂場をリフォームする場合の費用目安は次のとおりです。
内容 | 費用目安 |
---|---|
手すりの設置 | 1万円~20万円 |
バスタブの交換 | 14万円~20万円 |
脱衣所と浴室の段差の解消 | 5万円~28万円 |
床材の変更 | 8万円~20万円 |
浴槽などのスペースの拡張 | 15万円~250万円 |
浴室暖房乾燥機の設置 | 9万円~25万円 |
トイレをリフォームする場合の費用目安は次のとおりです。
内容 | 費用目安 |
---|---|
手すりの設置 | 1万円~20万円 |
トイレ全体の改装(タンク式) | 20万円~50万円 |
タンクレストイレへの交換 | 30万円~50万円 |
温水洗浄便座の設置 | 5万円~10万円 |
段差の解消 | 8万円~20万円 |
これらの費用はあくまでも目安です。リフォーム会社やオプションによっても費用は変動しますので、リフォーム箇所の優先度や費用の上限を明確にしてから、進めていきましょう。
続いて、介護を目的としたリフォームをする場合の補助制度・助成制度について詳しく解説します。
※2025年1月時点での情報となります。
介護保険制度における居宅介護住宅改修費とは、要介護認定で要支援・要介護と判定された方の住宅を改修する場合、かかった費用の一部を介護保険が負担してくれる仕組みです。
主に自宅の段差解消や手すりの設置などが該当し、計20万円まで(自己負担は所得に応じて1割~3割)が支給されます。申請先は居住する自治体の介護保険窓口ですが、担当のケアマネジャーに相談のうえ事前に申請する流れとなります。
高齢者住宅改修費用助成制度とは、市町村による高齢者の住宅改修支援制度です。自治体によってその名称や助成内容が異なりますので、お住まいの担当窓口にお問い合わせください。
以下、支援制度の例をご紹介します。
自治体 | 助成内容 |
---|---|
千葉県千葉市 |
65歳以上の要介護(要支援)認定者のいる世帯に対し、自宅での生活がしやすくなるように、手すりの設置や段差の解消、床材の変更など、住宅の改修工事を行うために必要な費用の一部が助成される。 助成対象となる実工事費と70万円とを比較して少ないほうの額から、利用者負担額(介護保険の自己負担割合に応じて上限2万円~6万円)を控除した額が助成される。 |
福島県南相馬市 |
市長が住宅改修の必要性があると認める60歳以上の高齢者(介護保険法において要支援又は要介護と認定された者を除く)で、所得が児童手当所得制限限度額以下の者が、介護保険の住宅改修と同じ種類の改修(手すりの取付けや段差の解消、引き戸等への扉の取替えなど)をする場合に、その費用の一部が助成される。 助成対象者が現に居住している住宅につき、住宅改修に要した費用の90/100に相当する額が助成される(上限額18万円)。 |
出典: 「高齢者にやさしい住まいづくり助成事業」福島県南相馬市
住宅特定改修特別税額控除とは、居住している自宅で住宅ローンを利用せずに以下の工事を行った際、所得税の特別控除を受けられる制度です。
控除される額は、250万円未満であればその10%です。ただし、細かな条件などがあるため、詳しくは最寄りの税務署に確認してください。
ここからは、リフォームする際のポイントや注意点を解説します。
リフォームの一番の目的は、要介護の方が安心・安全に生活できるようにすることです。まずは、お身体の状況(健康状態、要介護度など)に合わせてリフォームすることを心がけましょう。
加齢にともない心身機能は低下します。今は一人で入浴やトイレができているとしても、近い将来、それが難しくなるかもしれません。
そのため、ご家族の心身機能の今後の変化も考えてリフォームをする場所を検討し、どこからはじめるのか優先順位を決めることが大切です。
リフォームは生活上の不便さを解消し安全を確保するために行うものです。専門的な視点から助言をもらうことで、無駄のない、効果的な改修ができます。
ご家族だけで考えたりリフォーム業者任せにしたりすることは避け、地域包括支援センターなどに相談し、専門職からの助言が得られるようにしましょう。
自宅での介護を目的にリフォームをするならば、住宅改修の施工技術が高い業者を選ぶのはもちろん、自宅介護に関する知識を持ち、介護の実情を十分に踏まえたリフォーム業者を選ぶことが大切です。
また、福祉用具を取り扱う事業所に相談することや、福祉住環境コーディネーター資格を保有する担当者を選ぶのも一つの方法です。
SOMPOケアでは、段差の解消や手すりの取り付けなど、介護保険適用となる住宅改修を行なっております。詳しくは下記ページをご覧ください。
自宅での生活を便利にするために、介護リフォーム以外にもできることについて、2つの方法をご紹介します。
福祉用具とは、介護が必要な方の日常生活をより良くし、自立した日常生活を営むことができるようにする用具を指します。車いすや介護用ベッドなどレンタルできるものと、排せつ用具や入浴用具など購入できるものの2種類があります。これらを利用することで、リフォームをしなくとも生活便利性の向上が期待できます。
ただし、要介護度に応じて利用できる福祉用具の品目は異なります。どのような用具が利用可能なのか、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
福祉用具を詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
要介護度が重度化してご家族での介護では対応できなくなった場合に備え、早めに施設への入居を検討するのも一つの方法です。
SOMPOケアでは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、5つのホームブランドを有しており、介護や支援の必要な方が入居できる施設を運営しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
介護リフォームを行う際は、ご本人の意向や心身機能の状況を十分に把握するとともに、ケアマネジャーやリハビリテーション専門職の助言を得ながら施工場所を検討することが大切です。また、福祉用具の利用や介護施設への入居の検討など、介護リフォーム以外の方法も選択肢として考えながら、要介護の方もそのご家族も安心して過ごせる方法を幅広く検討しましょう。
SOMPOケアの福祉用具を詳しく知りたい場合は以下のページをご覧ください。
福祉系専門学校の教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や医療保険などの社会保障にも精通している。専門学校で教鞭を取る傍ら、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。
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