SOMPOケアのプロフェッショナル|話し手:増岡雅博(SOMPOケア)介護と医療。そのちがいと上手な連携

医療

要介護を加速させる? 薬の落とし穴

高齢になると、どうしても薬の量が増えていきます。副作用も心配ですが…。
高齢者には、何種類もの薬を服用されている方も多く、飲まないと不安という方もいらっしゃるでしょう。しかし、薬は飲み合わせの良し悪しがある上、高齢者は薬が体内に蓄積しやすい、薬に敏感になるといった傾向もありますので、服用には慎重にならなくてはいけません。処方された薬がその人に合っているかどうかを見ることが重要なのです。
それは、どうしたら分かるのでしょうか。
まず、薬を飲み始めたら、ご本人の生活がどう変化したかを周囲がきちんと見るということです。たとえば、よく眠れなくて睡眠薬を処方された場合、服用後の睡眠状況はもちろんですが、そのほかの変化も観察します。
例えば、歩くときにふらつくようになって転倒しやすくなる、朝起きられず食も進まなくなるといったマイナス面はないでしょうか。
薬で解決できることも多いですが、一方で将来の病気を予防するために、現在の生活が成り立たなくなってしまうような状態は、避けたいですよね。
SOMPOケアでは、新しい薬の服用を始めたときは、観察ポイントをケアスタッフ全員に周知し、新たな情報は随時共有します。服用後のご様子をご家族や医師に正確に伝えることで、薬の変更や増減、使用停止などについて、医師は適切な判断がしやすくなるのです。
エピソード:薬を減らして症状が改善
血圧が高めで、コレステロール値の高さも気になるDさま。将来の動脈硬化や心筋梗塞を予防するために、降圧剤が処方されました。しかし、服用を始めてから、薬の影響でめまいやふらつきが出るようになり、転倒を繰り返すようになってしまいました。とうとうご近所への買い物も行けない状態に。そこで、現状を医師に伝えて相談し、いったん薬を減らすことにしました。すると、不調は改善され、普段の生活を取り戻すことができました。
薬を処方されたときの観察ポイントを教えてください。
どのような症状を治すために薬が処方されたのかを理解したうえで、主に次の2つのポイントに沿って観察します。
①薬の効果
症状が改善した? それとも変わらない? さらにひどくなった?
②副作用
眠気、ふらつき、食欲減退など、生活に支障をきたす変化は?
※薬を処方されたときに、「経過についてご報告したいので、どういうところを観察すればよいですか? どのような副作用が考えられますか?」など、事前に医師に確認しておくと、変化をキャッチしやすくなります。

「物忘れ」と「認知症」はどうちがう?

単なる物忘れと認知症を見極めるポイントは?
いちばん正確なのは専門医に診断してもらうことです。具体的には、
①日常生活の聞き取り
②認知機能テスト
③血液検査(認知症と症状が似ている病気の可能性もあるため)
④X線CTやMRIなどの画像診断
の4つの検査などから総合的に診断します。
なかでも、医師が最大の根拠としているのは、①の日常生活の聞き取りです。日常生活の中で何ができなくなってきたのか、どのようなことで困っているのかなどの情報をしっかり医師に伝えます。その人をよく知る家族や介護者、周囲の人からの詳細な情報が大切なのです。
たとえば、「今日の朝食は何を食べましたか?」という質問に「朝ご飯は食べたけど、おかずは何だったっけ?」と思い出せないのは、単なる物忘れ。一方、「朝は何も食べてないよ」と、朝ご飯を食べたこと自体、すっぽり頭から抜け落ちてしまっていると、認知症の症状である記憶障害かもしれません。
本当は単なる老化現象なのに、認知症と診断されることはありますか。
上記の①~④のようなプロセスを踏まなければ、適正な診断がなされないことがあります。
単なるもの忘れなのに、認知症の烙印を押されてしまわないよう、周囲の人たちがしっかり本人の現象(生活での困り事)を観察し、正確な情報を持って専門医に受診することが大切です。
認知症でないのに、薬が処方されることで、薬の副作用で食欲がなくなったり、イライラが出て興奮しやすくなったり、という例もあります。
さらにその症状を抑えるために別の薬が追加されてしまうという悪循環も起こり得ます。だからこそ、認知症は専門医で診てもらうことが大切です。

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