小田原だより外伝『幸せは、人と人との出会いから』前編
2023年2月16日
いつもホームだよりをご覧いただきありがとうございます。
介護付有料老人ホーム SOMPOケア ラヴィーレ小田原 ホーム長の肥留間です。
今回から2回にわたって、ご入居者のIK様が執筆して下さったエッセイをお届けします。特別連載、小田原だより外伝『幸せは、人と人との出会いから』(前編)をどうぞお楽しみくださいませ。
「2021年2月、主人が大腸癌で亡くなった。
81歳だった。
娘ふたりは、すでに結婚して家を出ていた。
私はひとりになってしまい、老人ホームに入らざるをえなくなってしまった。それが、いまお世話になっているSOMPOケア ラヴィーレ小田原である。
10年以上前になるが、60歳をすぎてパーキンソン病を患い、主人が亡くなったあとが一番悪かったらしい。そのときのことは、私自身もほとんど覚えていない。
主人が亡くなるまでは、一緒に社交ダンスを楽しみ、デモンストレーションに出たり、「飛鳥Ⅱ」の船上パーティで踊ったりしていた。国内はもちろん、海外へも15回くらい旅をして、グアムでは海に入ったり、ベトナムへは車椅子で行ったりもした。
想い出はいっぱいできた。
けれど、二度と会えない人がいる。
取り戻せない時がやってきたのだ。
人は悲しみを積み重ねて生きていくもの、歩きださねばならない。
たとえ肉体が不自由になっても、何かを生きがいとして、そのなかで新しい道を拓いていくことが大事だと思えるようになった。自分の中に、まだまだ未知なるものがあると信じて。
老人ホームでの生活は、寂しいときも、厳しいときもあるが、少しは慣れてきた。そんなある日、ドアを叩く音がして、Oさんがやってきた。彼は、ここのケアさんのひとりである。この施設のホーム長であるHさんと一緒に、別のホームからやってきた人だ。「先生、わたしに英語を教えてください」。彼の話から、私が教師であったことを知っていて、そう思いついたらしい。英語の勉強は、中学1年までしかしていない。高校の頃、学校生活に嫌気がさして退学していた。ガソリンスタンドで働きながら、湯河原の海でサーフィンして楽しく生活してきたそうだが、勉強に対する気持ちは残っていたのだ。
退学の時にはご両親にかなり怒られたが、彼のことは理解してくれていた。応援してくれたことが、彼にとっては支えとなっていたに違いない。中学生のときのある日、彼は髪の毛を金髪に染めてきた。ご両親はバリカンを持ってきて刈ってしまおうと思ったらしいが、6歳年上の大学生の兄が間に入って止めたということもあったそうだ。
考えた末、私は英検をやろうと思いついた。
私の甥や姪たちがやっていることを話すと、彼も賛成してくれた。何しろ中学1年までしか勉強していない英語を、どうやって教えていくか考え、とにかく5級からやっていこうと思った。彼は自分で中学1年の参考書を買ってきて、私が宿題にしたところを勉強してきて、質問する。
夜勤明けの朝、眠い目を擦りながら、お腹も空いているだろうに、30分、文法の勉強をしたこともあった。そんな彼の姿をみていると、私も元気をもらった気がしていた。働きながらの勉強は、気持ちがなければできるものではない。5級からと思っていたが、4級からやってみようという気持ちになっていた。ヒアリングがあって心の中では心配だったけれど。
目的語とは何か。補語とは何か。形容詞、副詞の違いは何か。使い方は、と教えて、5文型のひとつずつを2文章作ってくることを宿題にして、彼も次第に英文の形が分かってきた。ただ、ヒアリングは自分でテープを聞いては、何度も聞き取れないと言ってきたこともあり、苦労していた。
試験の日、会場で「お父さんですか」と言われても、彼は気にもせず、黙々と問題を解いた。そして、Oさんは英検4級に受かった。思わず万歳!!
実は彼は、英語の勉強を始める前に、ケアマネージャーの試験にも挑戦して、合格していた。ラヴィーレ(ここの老人ホームだ)のケアさんは、みんな元気でやさしいが、なかでもOさんは入居者さんたちに人気があった。ご両親や、ホーム長のHさんの励ましもあって、彼は試験に合格したが、私をも元気にしてくれて、本当に感謝している。これからも彼は勉強を続けて、たくさんの入居者さんの力になるだろう。本当に楽しみである」。(前編了)
前編では、ラヴィーレ小田原へのご入居の経緯や、慣れないホームでの生活に戸惑いながらも、ケアスタッフのOさんとのふれあいからIK様の気持ちに変化があり、Oさんとの交流を通じて、元教師のIK様らしさがホームの生活の中でも戻ってきました。さて、これからお話はどのように展開していくのでしょうか?近日公開予定の後編を、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。
ご家族さま、近隣地域とも協力し、ご本人の心身の状態に応じた適切なケアを提供します。またケアスタッフやケアマネジャー、看護スタッフなど、多職種が連携し、尊厳を大切にしたケアに努めます。
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