介護付きホーム（介護付有料老人ホーム）SOMPOケアそんぽの家　小平仲町ホームだより

ホームの日常

春のおもいで──懐かしの一曲とともに

2025年5月14日

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春の陽ざしが差し込む午後のひととき、施設の共有スペースにはやさしい歌声が流れていました。この日はカラオケの日。ご利用者様の多くが楽しみにされている、笑顔と歌声があふれる時間です。

なかでも印象的だったのは、あるご利用者様が選ばれた一曲──昭和の名曲「春のおもいで」。イントロが流れた瞬間、その場の空気がふわりと変わり、皆さんの表情がやさしくほころびました。

「この曲を聴くと、昔の春を思い出すのよ。桜が満開で、子どもたちとお花見に行ったこと、覚えてるわ。」

そうお話しされながら、穏やかな笑顔で歌われる姿に、職員も胸がじんと熱くなりました。歌詞の一つひとつが、まるで当時の景色をそっと呼び起こすかのように、記憶の奥深くに眠っていた「春」が蘇ってきます。

歌を聴いていた他のご利用者様も、「懐かしいわね」「この歌、学生時代によく聴いてたわ」と口々に思い出を語られ、自然と会話が弾んでいきました。

春という季節は、別れや出会い、始まりや希望、そしてささやかな日常の中にある幸せを思い出させてくれる季節です。「春のおもいで」という一曲が、その感情にそっと寄り添い、皆様の心にあたたかい風を届けてくれたように感じました。

歌声がやさしく消えていくと、その余韻を大切にするように、会場は静けさに包まれました。
ふと視線を向けると、聴いていたご利用者様たちの表情には、どこか穏やかな安心感と、少しの切なさがにじんでいます。

車椅子の方、手を静かに組んで座っている方、まっすぐテレビを見つめる方──
それぞれが、それぞれの人生の春を思い出しながら、歌を通して心の中で旅をしているような、そんな光景が広がっていました。

ある方は、「この曲、高校生のころによく聴いてたの。制服で通った通学路が、今でも浮かんでくるのよ」と笑って話してくれました。
またある方は、何も言わず、ただ静かに拍手を送っておられました。その手の動きには、敬意や共感、そして“ありがとう”という気持ちが込められていたように思います。

カラオケという日常の一コマが、記憶の引き出しを開き、心の奥にしまっていた「春」の思い出をそっと引き寄せる。
それは、まるで時間を越えて人生が再び輝くような、あたたかくてやさしい瞬間でした。

私たちは、こうした「思い出に寄り添う時間」が、心の健康やその人らしい生活の支えになることを大切にしています。
ただ歌を楽しむだけでなく、その背景にある人生や感情にふれる時間こそ、何よりの「ひととき」だと感じています。

これからも、皆さまの歩んでこられた物語を、音楽や季節の彩りとともに大切にしながら、心が通い合う場所をつくっていきたい──
そんな想いを、改めて感じた春の午後でした。