指先のリズム
2024年12月7日
あるご入居者様。
椅子に座っておられると、時折、
テーブルを指先で押すような動作をされます。
それは、まるで、ピアノを弾いているかのようで、
「昔、ピアノを弾かれていたのですか?」
と、お伺いすると、
「ええ、まあね。」
と、恥ずかしそうに笑いながら答えて下さいます。
こちらのご入居者様は、いつも穏やかで優しい方です。
例えば、夕食を召し上がった後、
就寝のお手伝いをする際には、
決まって、ベッドの上から、
「あなたはお家に帰れるの?」
「あなたはもう寝られるの?」
など、私の心配をして下さいます。
現在は、認知症が進行している、この方ですが、
優しい人柄はちゃんと残っています。
こちらのご入居者様のご家族様は、
頻繁に、施設にいらっしゃいます。
私たち職員にも、とても丁寧で、親切に接して下さいます。
そんな時、ふと、思うことがあります。
この親切なご家族様を育てられたのは、
あの優しいご入居者様なのだと。
見えない鍵盤を押さえていた、あの指先が、
この方を育て上げたのだと。
改めて、思い出すのです。
当然のことですが、この方に限らず、
全てのご入居者様に、
あいおいにいらっしゃる前の人生、生活があり、
皆様がそれぞれ、ご家族様にとっての大切な、
“お父さん”であり、“お母さん”であり、
“おじいちゃん”であり、“おばあちゃん”であることを、
忘れてはなりません。
職員一同、そのことをしっかりと念頭に置いて、
日々の仕事に取り組んで参ります。
ところで、あの指先が紡ぐ調べは、
どのような音色なのでしょうか。
一度、聴かせていただきたいですね。
介護職員 岡野
受付時間 9：00 〜18：00（年末年始を除く）
