SOMPOケアのプロフェッショナル|話し手:吉良真弓(SOMPOケア)「心に効く」食事で、日々元気に

五感で味わうことの大切さ

やわらかくするための工夫が色々あるんですね。
はい、ただ、単にやわらかいだけで、見た目も味も何を食べているのかわからないようなおかずでは、食欲はそそられませんよね。例えば、すべての材料をミキサーにかけたどろどろのスープでは、いくら栄養満点と言われても、積極的に食べ続けることはできないのではないでしょうか。
食事は、見て、聞いて、匂いをかいで、触って、味わうという、五感で味わうことが大事です。五感で「おいしい」と感じることが、食べたい意欲や生きる喜びにつながるからです。
SOMPOケアのホームでは、例えば一番軟らかいソフト食の場合、一度ペースト状にした食材を元の形に成型するなど、見た目からも美味しさを感じられるよう工夫しています。また、レクリエーションで外食に出かけたり、外食が難しい方に向けてはホーム内で寿司店を開くなど、食事が“特別な楽しみ”になるような食事イベントも定期的に行っています。
おうちで暮らしている方なら、ご家族の誕生パーティや年中行事などで、食事をイベントにするのも楽しいと思います。
メニューを工夫することも大切ですね。
はい。いつも同じようなメニューでは食欲はわきませんから、季節ごとの食材を取り入れるなど、バラエティ感があるといいですね。また味覚や嗅覚は、記憶として残りやすく、食事には、思い出に働きかけて気持ちを元気にさせる効用もあります。ですから、特別なご馳走より、慣れ親しんだ「家庭の味」に近づけることも、食欲増進には効果があるようです。
例えばスパゲティなら、今どきのアルデンテではなく昔ながらの柔らかい麺を使うのもおすすめです。生まれ育った郷土のお料理も、昔の楽しい記憶を鮮明にしたり、故郷のお話に花が咲いたりして、喜びを感じることができ、食欲増進につながります。
エピソード:「食べたい!」を叶え、回復に弾みが
病気で入院していたBさまは、過去の骨折がきっかけで車いすを利用されていました。退院後ホームに入居されたときは、筋力も体力もかなり落ち、食事もなかなか進みませんでした。そこで、「歩きたい」という本人の希望から、ホーム全体で「まず体力をつけるために食事を食べることを目標にしよう」と意思を統一。言語聴覚士が嚥下状態を確認し、本人にあった食形態で栄養調整を実施。その後、本人の「パンを食べたい」という希望からパンがゆを試すことに。一口食べたBさまは「おいしい」と笑顔。その日から食欲が生まれ、徐々に体重も増加。体力もつき、ご自分で車いすからイスへ移乗できるようになりました。同時に床ずれも改善し、Bさまに笑顔が戻りました。
エピソード:カレーの香りで包んだら・・・
オープンキッチンのあるホームでのお話。カレーの日は、あえて厨房の換気扇を弱め、ホーム中にスパイシーな香りが届くように気を配ります。カレーの匂いで食事の時間を知らせ、食欲を増進しようという試みです。そんな日は、「今日はカレーだね」「もうお昼の時間なのね」など、会話を交わしながら食堂に向かうご入居者さまの姿がよく見られます。

家でもできる! 食べやすくて美味しい料理

食べやすいだけじゃない、美味しいお料理のコツをご紹介します。

固いお肉をやわらかく

調理法によって、食材をやわらかくすることができます。

・包丁を上手に使って
お肉は、脂身との境にある筋を切り、包丁でたたいたり、切れ目を入れたりすると噛みきりやすくなります。
・酵素を活用
肉は、加熱すると収縮し、固くなる性質があります。あらかじめ、しょうがや玉ねぎ、パイナップル果汁に漬け込んでおくと、タンパク質分解酵素の働きでお肉がやわらかくなります。

塩分をおさえつつ、美味しくするコツ

・香味野菜をアクセントに
みそやしょうゆにも塩分は含まれます。汁物は調味料を減らす代わりに、しょうが、みょうが、青じそ、ねぎなどの香味野菜をたっぷり加えて。酸味や風味をプラスして、塩分を控えて味はしっかり。香味野菜には血行をよくするなど、うれしい作用もあります。
・酢を上手に使う
市販のドレッシングやソースにも、塩分は多く含まれています。しょうゆを酢や柑橘類(かぼす、ゆず、レモンなど)の絞り汁で割るなど、上手に活用しましょう。

飲み込むのが苦手な人には、とろみがコツ

とろみをつけると、飲み込みやすく、誤嚥予防にもなります。

・ソースやあんを活用
お肉料理は、ひき肉を使用したものがおすすめ。焼くよりも、蒸すとやわらかいままいただけます。またソースやあんをかけると、ぱさつかず、口の中でまとまって、飲み込みやすくなります。
・れんこん、山芋をすりおろして加える
すりおろしたものを汁物に流し入れたり、鶏団子やハンバーグなどのつなぎにしたり。

味に変化をつけて、飽きさせないコツ

同じおかゆが続くと飽きやすく、栄養も不足しがち。ちょっと工夫してバリエーションをつけましょう。

・みそ入り卵がゆ
普段のおかゆも、みそ味にすればまた違った味わい。だし汁で煮た軟飯にみそを加えて混ぜます。さらに溶き卵を回し入れてひと煮立ちしたら、できあがり。刻んだネギをのせてもよいでしょう。
・ミルクパンがゆ
耳を取った食パンを食べやすいサイズにちぎり、牛乳を加え、ふきこぼれに注意しながら煮ます。電子レンジで加熱すると、より簡単にできます。
仕上げにジャム、ココア、きな粉などをかけるのもおすすめ。

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