『ボクはやっと認知症のことがわかった』
2021年11月12日
長谷川式スケールをご存じでしょうか。認知症の検査で使われる、「100から7を順番に引いてください」「知っている野菜の名前を挙げてください」等の質問に答えてもらう検査です。これを開発したのは、日本の認知症研究の権威と呼ばれる、長谷川和夫医師。その長谷川先生ご本人が、数年前、認知症を発症したことを公表されました。日本で一番認知症に詳しい人が、自分自身の「認知症」を体験するというのは、一体どんな感じなのか…。その体験をもとに綴られた本『ボクはやっと認知症のことがわかった』という本を最近読みました。
認知症の方にとって、自分から見える世界の説明をするのは難しいことでしょう。しかし長谷川先生は、長年認知症の患者さんを診てきた経験があるからこそ、自分から見える世界やその違和感をうまく言語化されています。
また、長谷川スケールが開発される前の、認知症が痴呆と呼ばれ今よりもひどい扱いをされていた時代背景の話などは、勉強になることが多くありました。
中でも、認知症は症状が固定されていない、というお話が印象に残りました。
自分自身、認知症をお持ちの利用者様と日々接しているなかで、お会いする時間や直前の出来事などによって状態が日々異なるのを目にしていますので、「一度認知症になったら何も分からなくなってもう終わり、というわけではない」というお話はとても納得がいきました。
自身の今後のケアにも、長谷川先生の伝えて下さった内容を生かして、ご利用者様と接していけたらなと改めて感じる一冊でした。