認知症ケアについて~HECT事例8~
2021年8月21日
いつもホーム便りをご覧頂きありがとうございます。
上席ホーム長の高比良です。
本日も、認知症ケアについてお話させて頂きます。
今回も事例紹介となります。
HECTアプローチのT(作業)の項目が引き金となっていたケース。
キーワード:高齢者はその作業を終わらせる事ができないのではないか
A様は、夕食の際に大きなうなり声を何度も繰り返してしまい、周囲の人のひんしゅくをかっていました。
何か不満があるのではないかと考え、行動を観察したり直接問いかけたりしましたが、A様の行動は一行に収まりませんでした。
A様の行動が、繰り返しの多い行動なのか、常同的な行動なのかを判断するため、注意深く観察します。すると大きなうなり声を出している時に注意しても、それに対する反応が少ない事がわかりました。そこで、行動は注意をすれば気づくような記憶障害によるものではなく、性格的な問題でもなく、脳の障害によって起こる常同障害ではないかと考えました。
このような常同行動は、行動を制御する事が困難な脳の病気によるものであり、故意にこのような行動をしているのではないことがわかりました。
その為、A様は個室で食事をとってもらう事にして、周囲の環境を静かに保つようにしました。その結果、食事中に叫ぶような行動は少なくなりました。
ポイント
①常同行動について理解する
常同行動について正しい理解を持つ事が大切です。常同行動がある人は、過大な刺激に影響されやすい為、過度な刺激を与えない環境を整える事が必要です。また、不快感や痛み、不安、孤独感、恐れなどによっても引き起こされる事がある事を理解しておく事が大事です。
②繰り返しの多い行動について理解する
繰り返しの多い行動とは、実際に満たされない欲求や健康に関係した事柄が引き金になっている事があります。このような行動が見られた場合は、その引き金となっている原因を探し出し、そこに焦点を当てた介助を行う事が大切です。
③気を紛らわすような関わりをする
気を紛らわせる事によって、新しい事柄や別の行動を促せる事があります。言葉によって紛らわす事が難しい場合は、高齢者に別の行動を促すようなきっかけ作りも必要です。
【解説】
認知症が進行すると、一つの行動から他の動作に移ったり、次の事に反応したりする能力を制御する脳が障害されることがあります。
そのため、動けなくなったり、ある一定の動作を繰り返し行ったりする事があります。
これを常同行動と呼びます。繰り返しの多い行動とよく似た所がありますが、2つの間にははっきりした違いがあります。
繰り返しの多い行動は、記憶の障害や不安から起こりますが、常同行動は行為を制御する脳の機能障害と関係します。
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