ホーム長の経歴書⑪高津編～S教授
2021年9月12日
<イラストはネットより引用>
Sさまというかつて大学教授であった方がご入居されました。入居の経緯の詳細は分かりません。入居まもなく帰宅願望が現れ、対応困難なことが増えていきました。ホーム玄関の前で、「開けろ!」と大声で叫び、ガラス戸の自動扉が壊れるんじゃないかという勢いで叩き続けます。Sさまをスタッフみんなで抑えて、自動扉から引き離すことがありました。「家にかえるんだー!!」と叫ぶ姿が正直とてもショッキングでした。
つい最近まで居酒屋の店長をしていて、酔っ払いが暴れる光景は何度も遭遇していましたし、対応をしてきましたが、元大学教授の高齢者が「家に帰せ」と暴れる姿を見て、本当に切なくなりました。ご入居されたのには、ご本人の心身状態やその家族の環境を熟慮した上での結果であったろうに・・・・。
Sさまは最初に接した感じは元大学教授の雰囲気があり、介助が必要な方に感じられなかったですが、話してみると、いろいろと見当違いなことを話され、やはり相応の認知機能の低下が感じられる方でした。
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Sさまの居室からナースコールが鳴ったので、訪室します。
「S先生(※1)、どうされました?」
臥床しながら新聞を読んでいたSさまは、そのままの格好で、
「おお、ちょっとこの記事読んでくれよ。いや～さすが○○新聞の社説だね。こういう文章が書けるようにならないと、君らも。」
<イラストはネットより引用し加工>
苦笑・・・・・( ﾟДﾟ)ァﾊﾊ八ﾉヽﾉヽ・・
私のことを学生かなにかと思っていたのでしょうか・・・そして居室は研究室かなにかだったのでしょうか・・・
他のご入居者の対応をしているときにナースコールで呼ばれて、この様だとさすがにイラッとするスタッフもいたようで「そんなことで呼ばないでください」と言い返し、Sさまと口論になってしまったこともあったようです。
ただ私的にはそんなSさんの対応するのがそれほど嫌ではありませんでした。玄関の前で暴れていた光景から比べると、スタッフを学生か何かと思い込んでか、嬉しそうに「この記事が～」と話すSさんの姿はほっこりします。
「先生、勉強になります。ありがとうございます。」と話を合わせる自分がいました。
老いていく人生の先輩の方々のこのような場面に立ち会っていく、この『介護』という仕事は『外食』にはない尊さがある、と感じていました。
・・・つづく まだまだ高津編 次回は「神対応」の巻
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※1 教師や医師などの職業であった方には「○○さん」と声かけするより、「○○先生」と声掛けしたほうが反応が良いので、このような声掛けする場面が良くあります。
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