ホーム長の経歴書㉖大宮編～直訴
2021年12月26日
エリアマネージャーから本社に、大宮のご入居者様から社長あてに、お手紙が届いたと連絡がありました。
SN様を筆頭に他7名のご入居者様連名でした。内容はIK様が不潔な状態をホーム長に改善するようにお願いしていたが、一向に改善されないのでどうにかしてほしい、というものでした。
そんな・・・私はSN様にはIK様のご家族に協力してもらって、タイルカーペットからフローリングに変えてもらったことや、ケアの対応などを時折説明して、理解をいただいているつもりでした。連名で、しかも、Ⓕ様らも巻き込んでのお手紙を出されていたなんて。
私に言っても改善されない・・・・そう、改善していなかったかもしれない・・・一部のスタッフの前向きな意見に自信を持ち、いつかうまく収まる、これだけやっているのだから、SN様もわかってくれるだろう・・・・そういった希望的な観測が甘かったことを思い知らされました。そして、スタッフの中にもIK様を避ける者もおり、ホームは一枚岩ではなかった。
S社長がホームにお見えになり、相談室で発起人のSN様と連名の代表としてⒻ様とで会談が行われた。私はその場には入れられず、会談が終わるのを事務所で待った。会談が終わるとS社長はすぐにホームを出られ、結果はエリアマネージャーから聞くことになった。
IK様を千葉市のみつわ台に新しく新設されたホームに転居させるというものであった。そのホームに『円居』という認知症対応型のスペースを併設しているので、そこに転居をしていただくことで、SN様たちから了解を得た、ということであった。
(上図はみつわ台のホームの円居を説明したもの)
私は正直、納得がいかなかった。一部のご入居者の意見でIK様を追い出す、ということじゃないか・・・。
エリアマネージャーの方から転居に伴うみつわ台との段取りはやっておくので、ご家族にこの話をするようにお願いされました。
私は翌日、出過ぎた真似とは思いつつ、S社長にIK様の転居に納得がいかない旨を社内サイトでメールしました。
するとS社長から直接ホームに電話が入りました。S社長は言います。
「IK様が周りのご入居者に嫌われながら、生活する姿をIK様の家族が見たら辛くないか?自分がIK様の家族だったらそう思う。ホームでできることはやってくれていたかもしれないが、周りから嫌われながら生活するのは、たとえ本人が認知症だからといっても、良いとは思えない。」
S社長の直々の言葉に、そういう見方もあるかと思いました。まだホームでやれることはあるのではないか、と踏ん張り続けることは、周りのご入居者との軋轢を深くするだけ。他の方法を展開するには、私の一手が遅すぎた・・・・そう反省するほかはなかった。
さて、長男様にこのことを伝えねばならない。しかし、気持ちが進まず、数日経過してしまいました。するとホームにやってきた入居相談員のFさんがこう言います。
F入居相談員:「IK様の転居の件だけど、井上さんからじゃ言いづらいと思ったから、入居時の担当だった私から息子さんに連絡しちゃったよ。」
私:「えつ!」
F入居相談員:「息子さん、みつわ台に移るの嫌だって。」
私:「・・・」(そりゃあそうだろう、と思いました)
F入居相談員:「でも、『井上さんが困っているなら仕方がないですね』、って。」
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～井上さんが困っているなら仕方がないですね～
このフレーズが頭の中で息子様の声に置き換わって、ぐわんぐわん、と繰り返し響きます。
俺が困っているから仕方がない～
～そう、俺は困っている
本当はみつわ台には移りたくない～
～俺に免じてみつわ台に転居する?
どうしてこんなことになってしまったんだ?
俺は息子さんを安心させたかったんじゃなかったのか?
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こんな経験は初めてでした。私はこの日、特段体調が悪かったわけではありませんが、気分が悪くなって事務所の椅子にヘタレこんでしまいました。
2時間ぐらいヘタレこんで座っていました。気が付けばF入居相談員の姿はありませんでした。
つづく・・・・次回もまだまだ大宮編
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