地域包括支援センターとは?役割や業務内容・活用方法について

この記事をお読みの方のなかには、「地域包括支援センターとはどのような機関なの?」「介護に関する相談ができるのか知りたい」などといった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

地域包括支援センターとは、主に地域に住む高齢者の介護・暮らしに関する相談に応じてくれる機関です。同機関に配置された保健師や社会福祉士、主任介護支援専門員(以下、主任ケアマネジャー)らが、それぞれの専門性を活かし、高齢者の心身の健康保持や生活安定に向けて、必要な支援を行います。これらの職種の方々によるチームアプローチで、地域住民一人ひとりの保険医療の向上やより良い生活の実現を目指しています。

この記事では、地域包括支援センターが何を目的に設置された機関で、どのような相談を受け付けているのか、どのような方々が利用する機関なのかを解説します。今後利用する予定のある方はぜひ参考にしてください。

1.地域包括支援センターとは

地域包括支援センターは、地域に住む高齢者などの介護、暮らしに関する相談に応じる機関として、全国に約5,000ヵ所以上設置されています。福祉制度や介護サービスに関する総合相談窓口としての機能があり、配置されている専門職が高齢者に関するさまざまな相談に応じてくれます。

地域包括支援センターの目的

地域包括支援センターは介護保険法によって定められた機関で、市町村が次の目的を持って設置することを規定しています。

  • 地域住民の身体・精神の健康の保持
  • 地域住民の生活の安定に向けた支援
  • 地域住民の保健医療の向上
  • 地域住民の福祉増進の包括的な支援

これらに共通するキーワードは「地域住民の福祉」です。地域包括支援センターは、地域包括ケアシステムの構築に向けて、地域に住むさまざまな方たちの相談に応じ、地域における福祉の向上を進める第一義的な機関といえます。

設置主体は市町村とされていますが、社会福祉法人や医療法人、特定非営利活動法人(NPO法人)などにその業務を委託することができます。

地域包括支援センターにいる専門家

それぞれの地域包括支援センターには担当する地域・区域が割り当てられており(市町村が設定)、原則として次のような人員配置基準に則って専門職が配置されています。

保健師など 社会福祉士など 主任ケアマネジャーなど
第1号被保険者の数
3,000人~6,000人
1 1 1

※小規模の場合は別途規定があります。

地域包括ケアシステムの構築

地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」が切れ目なく一体的に提供される体制を指します。地域包括支援センターは、そのシステムの拠点として相談を受け付けて情報提供を行い、地域の高齢者の暮らしをサポートする役割を担っています。

居宅介護支援事業所との違い

地域包括支援センターと居宅介護支援事業所は、どちらも地域に住む高齢者などの生活を支援する施設・機関です。しかし、詳細な支援対象や役割はそれぞれ異なります。

項目 地域包括支援センター 居宅介護支援事業所
利用する方 介護や暮らしの悩みがあり、相談したい方 ケアプランの作成を依頼したい方
主な役割 介護、福祉、医療に関する相談窓口 介護保険を利用して介護サービスを利用する方のケアプランを立てる
対応するスタッフ 保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなど ケアマネジャー
運営 市町村が主体であるが、市町村から委託をされた社会福祉法人や医療法人でも運営できる 社会福祉法人や医療法人だけでなく、株式会社なども運営できる
相談の費用 無料 無料

地域包括支援センターは、「介護に関する悩みなら何でも相談に乗ってくれる機関」であり、居宅介護支援事業所は「ケアマネジャーが利用者に必要な介護サービスを検討し、ケアプランを立ててくれる機関」です。

2.地域包括支援センターの役割や主な業務内容

地域包括支援センターはどのような役割を担い、日々どのような業務を行っているのでしょうか。ここからは、同センターが担っている4つの役割を中心に説明します。

総合相談

地域に住む高齢者の介護、暮らしに関する問題について相談に応じて必要なサービスや制度を紹介するとともに、利用に結びつけるまでの役割を担います。

また、「気軽に相談できる機関」としての役割だけでなく、スタッフが支援を必要とする方のもとを訪問する「アウトリーチ」も、地域包括支援センターの主要な役割の一つです。

ケアマネジャー支援

高齢者にとって住みやすく快適な地域社会にするために、地域で活躍するケアマネジャーや医療福祉の専門職、民生委員などとのネットワークを構築し、地域全体で課題が解決できるように環境を整えます。

また、ケアマネジャーへの個別相談やアドバイスを行い、支援困難事例の指導を行います。

権利擁護

判断能力の低下した高齢者や虚弱状態にある高齢者が安心して生活できるよう、必要な相談・支援を行います。具体的には、詐欺や経済的搾取から身を守るための成年後見制度の利用を支援したり、高齢者虐待被害の対応と防止、早期発見の活動を実施したりします。

成年後見制度については以下の記事で詳しく紹介しています。

介護予防ケアマネジメント

要支援1・2と認定された方が介護予防サービスを利用するための介護予防ケアプランを作成したり、今後介護が必要となる可能性の高い方(基本チェックリスト※対象者)の支援計画を作成したりします。介護予防を目的に、高齢者が抱える疾病や障害の有無、置かれている状況に応じて適切なサービスが提供されるよう、専門的な視点から支援を行います。

※基本チェックリスト…高齢者が自身の生活や健康状態を振り返り、心身の機能で衰えているところがないかチェックするためのツール

3.地域包括支援センターの利用対象者

地域包括支援センターの利用対象となるのは、主に当該地域に住む65歳以上の高齢者とそのご家族です。しかし、それだけでなく、医療、介護などの支援活動に携わっている方々も同センターを訪れる場合があります。

支援対象者

基本的には対象地域に住む高齢者や介護を必要としている方、そのご家族が利用対象者となりますが、福祉や介護に関する悩みがあれば、地域に住む方のどなたでも相談することができます。

支援者・専門職

医療機関に勤務する看護師やメディカルソーシャルワーカーなどの医療関係者がセンターを訪れ、主任ケアマネジャーと情報交換したり、利用者の介護サービス利用のために調整を行なったりすることもあります。また、地域で活躍するケアマネジャーや福祉用具販売業者、民生委員などが利用する場合もあります。

4.地域包括支援センターを活用するメリット

地域包括支援センターを活用する最大のメリットは、介護・暮らし・医療に関する相談を「ワンストップ(一つの機関だけ)」で対応してもらえる点です。

前述のとおり、センターは「総合相談」の窓口として地域に住む高齢者の相談に応じるだけでなく、各専門職がチームとなって適切な介護サービスの利用に繋げたり、高齢者の権利を擁護したりします。

職種 対応する業務例
保健師など 医療に関する相談に応じるとともに、要支援1・2と判定された高齢者の介護予防ケアプランを立案する
社会福祉士など 高齢者の権利擁護に関する相談に応じる。詐欺や悪徳商法から高齢者を守るとともに、高齢者虐待の早期発見や防止に努める
主任ケアマネジャーなど 地域で活躍するケアマネジャーの相談に応じる。ケアマネジャーを対象とした研修を実施し、活動のサポートを行う

上記の業務は一例になりますが、このように高齢者やご家族が抱える問題・ニーズに合わせて、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーらが専門性を生かして問題の解決に動きます。

5.地域支援包括センター利用の流れと事例

ここからは、実際に地域包括支援センターを利用する流れについて、事例を交えながら詳しく解説します。

利用する流れ

地域住民が地域包括支援センターを利用する場合の流れは次のようになります。

1.来所または電話相談

まずは、地域包括支援センターを訪ねます(電話での相談も可)。受付担当スタッフが対応してくれるので、困っていること、悩んでいることなどを相談します。

2.自宅訪問・本人との面談(アセスメント)

後日、状況確認のため同センターに配置されている保健師・主任ケアマネジャー、社会福祉士などがご本人の自宅を訪問し、ご本人からの介護や暮らしに関する質問や疑問に対し回答します。すでにサービスを利用していることが明確な場合には、担当のケアマネジャーが同伴する場合もあります。

3.必要なサービスへ接続する

アセスメントによって課題やニーズが明確化され、それに応じて各種制度、サービスへの接続(居宅介護支援事業への委託、引き継ぎ、専門機関との連携など)が行われます。

活用事例

実際に地域包括支援センターに相談し、介護サービスの利用に繋がった事例をご紹介します。

    事例① 介護保険の申請と施設への入居 Aさん

    これまで自宅で自立した生活を送っていたAさん(女性/79歳)は、外出先で転倒して左足を骨折してしまいました。幸い大事には至らず、急性期病院で手術を受け、回復期の病院へ転院しリハビリを経て自宅へ復帰することになりました。

    しかし「自宅に戻ったあと、すべての家事を行うことに不安がある。足腰が以前のように戻ればいいけど…」と病院のメディカルソーシャルワーカー(以下、MSW)へ訴えがありました。

    MSWからの連絡を受けた地域包括支援センターの保健師は、Aさんのもとを訪問し、今後の生活について相談を受けました。Aさんの退院後の身体機能を向上・維持するため、退院してすぐに自宅へ戻るのではなく、介護保険制度による介護老人保健施設を利用することを提案しました。そのためには要介護認定を受ける必要があると伝えたが、Aさんは何をどうしたら良いかわかりません。

    その後、地域包括支援センターは、Aさんの同意・委任を得たうえで、市町村役場へ要介護認定の代理申請を行いました。やがて要介護認定の結果(要介護1)が出て、現在Aさんは介護老人保健施設に入居し、自宅復帰を目指してリハビリテーションを行っている。リハビリがうまくいけば2ヵ月後に退所する予定です。

    地域包括支援センターのスタッフは定期的に介護老人保健施設の生活相談員と情報交換してAさんの現状を知るとともに、彼女の自宅復帰後の生活について居宅介護支援事業所のケアマネジャーとの連絡調整を行っています。

    退院が近くなれば、利用予定の介護サービス(訪問介護・通所介護)の具体的な説明をする段取りになっています。

    事例② 介護サービスの利用と高齢者見守り活動 Bさん

    5年前に夫に先立たれたBさん(82歳)は、山間部の戸建てで一人暮らし。2年前から下肢筋力低下によるADL(日常生活動作)低下が見られ、外出が困難になりました。

    やがて呼び鈴にも応答しなくなり、新聞受けに新聞が溜まるようになりました。そこで、地域の民生委員から相談を受けた地域包括支援センターの保健師がBさん宅を訪問しました。

    Bさん曰く「足がダメになって外へ行きたくなくなった」「耳が遠いので会話ができず、人と会うのが億劫になった」とのこと。部屋は片付けが行き届いていない様子で、食事は面倒なので食べたり食べなかったりするとの情報が得られました。

    地域包括支援センタースタッフは、Bさんの万一の事態に備え、隣町に住むご家族、近隣の親戚、民生委員で集まる機会を設け、現状を共有しました。話し合いの結果、ご家族やご親戚、民生委員や地域住民の協力を得ながら、見守り支援を継続することになりました。また、新聞配達員にも配達時の安否確認の協力を依頼しました。

    加えて、Bさんの同意を得たうえで介護保険制度の利用(福祉用具の活用、訪問介護・通所介護の利用など)を進め、市の福祉サービス(緊急通報システム、配食サービス、補聴器の購入補助金など)も利用できるよう段取りしました。

    Bさんは何とか一人暮らしを継続していますが、ご家族・ご親戚・民生委員の見守り活動は欠かすことができません。地域包括支援センタースタッフは、不測の事態にすぐに対応ができるよう、本人の同意を得たうえで、かかりつけ医や近くの医療機関、介護施設と情報の共有を行っています。

6.介護や医療サービスに関する相談は地域包括支援センターを活用しよう

もし、ご家族内で介護の困りごとが発生したら、自分たちだけで抱え込まず、地域包括支援センターへ相談してみましょう。福祉制度や介護サービスを適切に利用することで、ご本人が望む生活を続けられるだけでなく、ご家族の介護負担の軽減につながるかもしれません。

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監修・執筆

林 修造

現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

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