かつては、認知症の方は自覚がないと言われていましたが、決してそんなことはありません。もの忘れが増えたり、今までできていたことができなくなったり、『何かがおかしい』ということは、実は本人が一番わかっています。そんな自分の驚きや混乱を言えるか言えないかは、家族や周りの人にどれだけ心を許せるかにかかっています。
認知症の症状が進み、うまく言葉で自分の意思を話せなくなったとしても、年長者としての誇り、子どもや動物、植物を慈しむ気持ちなど、豊かな感情は保たれています。こうした認知症の方の気持ちをおしはかり、寄り添う姿勢が大切です。まずは、本人のその気持ちを思いやり、否定はせずに話を聞いてみましょう。
「認知症だからこうに違いない」といった決めつけは避けましょう。認知症になったとしてもその方の個性や歴史はそのままです。認知症になる前の姿を思い浮かべながら、この方は今何を望んでいるんだろう?と言葉にはできないメッセージをさぐるようにしましょう。
認知症の方が何かを失敗した時に、強い口調で否定したり、理屈に任せた説得をすると、本人は罪悪感や孤独感をつのらせてしまうことが多いようです。
失敗しても「大丈夫」と肯定する気持ちを持って接しましょう。失敗を恐れずに暮らせる環境づくりが大切です。