介護のヒント|話し手:吉良真弓(SOMPOケア)「心に効く」食事で、日々元気に

「若いときは必ずおかわりしていたのに、今はなかなか…」。そんな感覚、誰しもお持ちではないでしょうか。高齢になると食が細くなってきますので、どうしても食べやすさや栄養のことばかりに目がいきがちです。けれども、食事は生きる基本で、人生の楽しみでもあります。高齢になったからこそ、食べやすさはもちろん、食べる楽しさにもこだわって、健康を保ちたいもの。そんな高齢者の食事について、美味しく食べられるちょっとした工夫をSOMPOケアの管理栄養士、吉良がお話しします。

吉良真弓SOMPOケア フードサービス事業部 栄養管理課

管理栄養士。2013年入社。学生時代の研修中、高齢者施設で目にしたペースト状の食事に衝撃を受け、「高齢者にも食事の楽しみを十分に味わってほしい」という願いから介護の世界に。ホームに常駐して栄養指導及び調理を経験したのち、2016年から関東・関西地方エリアの管理栄養士として、栄養ケア・マネジメントを推進。各ホームを飛び回る日々を過ごしている。

「粗食が良い」は思いこみ?

高齢になると、なぜ食が細くなるのでしょうか。
いろいろな要因があります。運動量が減って食欲が減退したり、買い物や食事作りが大変になって食事を簡単に済ませてしまったり。ほかにも、筋力が衰えて噛む力<咀嚼(そしゃく)機能>・飲み込む力<嚥下(えんげ)機能>が落ち、食べづらくなるということも。
歯もとても重要です。歯が悪くなると、噛むことができませんから。義歯の場合も、やせて合わなくなると、食べるのが大変になり、結果食べられなくなることがあります。カタカタ鳴るようでしたら、歯科医を受診して、しっかり合わせてもらうことが必要です。
また、加齢とともに生じる味覚の変化も、食生活に影響を与えます。高齢になると、塩味を感じにくくなります。だから、自分で食事を作るときは味付けを濃くしがち。一方、同居の家族が健康を慮って薄味にすると、「美味しくないから、ますます食が進まない」という悪循環になりやすいんです。塩分は控えつつ、美味しく食べられる工夫が必要です。
「粗食が健康的」というイメージをもたれる方もいるようです。しかし、「高齢者は栄養不足になりやすい」とも聞きます。
「高齢者は粗食の方がいい」というのは、間違った認識です。例えば中高年だと、生活習慣病予防のために、肉より野菜を多く、脂肪分を控えた低カロリーの食事が推奨されますよね。でも、生活習慣病予防の食事は、高齢者には必ずしも良い結果をもたらしません。
実は高齢になるほど、体の機能を維持するために、エネルギーとたんぱく質をしっかり摂る必要があるんです。というのも、高齢者にとっての健康上の問題は、老化によって足腰が弱り移動ができなくなるといった、生活機能の障害です。そして、生活機能の障害は、栄養状態の悪化によってもたらされるのです。
栄養が足りていないために、老化が進むということですか?
はい。健康を維持するための栄養やたんぱく質が足りない状態を「低栄養」と言いますが、今、70歳以上の5人に1人が、低栄養状態にあると言われています。
低栄養になると、免疫力が下がって病気にかかりやすくなります。また、筋肉量や筋力の低下を放っておくと、歩く、立つ、寝返りを打つといった基本的な動作も難しくなっていくんです。さらに、栄養不足が認知機能の低下につながることもあります。

「食」の力で内側から健康に

「しっかり食べる」ことが、高齢者にとっては特に大切なんですね。
食は、身体の内部から健康を守ります。例えば、介護で大きな課題になる「床ずれ(褥瘡:じょくそう)」。床ずれは、体位をこまめに変えたり、外用薬をつけたりと、外側から治すと思われる方も多いと思いますが、実は、治療には栄養の改善を図ることが不可欠です。
床ずれの直接の原因は、腰やかかとなどの特定の部位が圧迫されることですが、低栄養はそれを促進するのです。そのため、たんぱく質をしっかり摂る、鉄分や亜鉛を含む食品をしっかり摂るといったようなことが、床ずれの改善には欠かせません。
高齢者にとっての食べやすさというと、「やわらかい食事」がまず思い浮かびます。
そうですね。かむ力や飲み込む力が落ちてくると、誤嚥(ごえん:水や食べ物が、誤って気管に入ってしまう状態)や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん:誤嚥によって肺に入った水や食べ物から、細菌が繁殖して炎症を起こす)のリスクが高くなるので、やわらかさや飲み込みやすさは大切です。
例えば、お肉なら筋が多い赤身やモツを避けて薄切りのお肉を使ったり、魚ならサッと蒸したりすることで、軟らかいまま食べられます。野菜なら、ゴボウのような繊維が多く噛み切りにくい野菜はやめ、大根やニンジンなど、やわらかくなる素材がおすすめです。切る際に、繊維に対して垂直に切ると、より食べやすいですよ。
SOMPOケアの介護付きホーム(※1)では、一人ひとりに合わせ、食事の形態を分けています。通常の食事が「常食」、次に軟らかいものが「軟菜食」(なんさいしょく)、そして最後が「ソフト食」で、本人のかむ力や飲み込む力といった身体能力に応じて、ご提供するメニューを調整しています。例えばレタスサラダの場合、常食ではレタスをお出ししますが、軟菜食ではゆでたキャベツに変更します。というのも、レタスはゆでても繊維が残り、軟らかくはならないからです。食材や調理法を変えることで、栄養価はそのままで、食べやすさを向上できるんですよ。

※1 主にSOMPOケア ラヴィーレ

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