SOMPOケアのプロフェッショナル|話し手:大関容子(SOMPOケア)「身だしなみ」から心も体も一歩元気に

年を重ねると、それまで当たり前にできていたことが、難しくなる場面も増えてきます。ただ立ち上がろうとしただけなのに、ふらついてヒヤッとしたり…。いつしか、外出がおっくうになったという方もいるのではないでしょうか。けれども、そんなシニア世代だからこそ、外出に目を向けることが大切です。
外に出るために洋服を選んで、女性ならお化粧をして、身だしなみを整える。風にあたって、誰かとお喋りして、道端の花に季節を感じる…。外出は、心のハリや筋力の低下を防ぐ、総合薬とも言えます。
高齢者の生活動作をサポートし、外出を促す「身だしなみ」のノウハウについて、SOMPOケアの理学療法士、大関がお話しします。

大関容子SOMPOケア 施設事業企画部 生活リハビリ課

理学療法士。病院勤務を経て2015年に入社。慕っていた祖母が脳梗塞で亡くなった経験から介護の世界に。主な業務は、各介護現場をまわり、スタッフに「日常生活の動作すべてが自然にリハビリにつながっていく」という生活リハビリの考え方を広め、効果的な介助方法をアドバイスすること。「ご利用者さまが、どうしたいのか」を常に考えながら、トレードマークの笑顔とともに関東近辺の介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)で活躍中。

価値観を大切に「外出」を実現

介護が必要な高齢者の外出姿というと、「着替やすくて、ゆったりした衣服」「着脱がラクで安全に歩ける靴」「移動を助ける杖や歩行器」が思い浮かびます。
そうですね。日常の動作がラクに行える、安全に移動できるといった視点はとても大切です。でも、忘れてはいけないのは、その方の好み。「どんな装いで、どんなところに行きたいか」です。
私たちも外に出るときは、「すっぴんはちょっと…」「あのお気に入りの服を着よう」という人もいれば、「すっぴんでも、コンビニくらいなら」「散歩ならジャージでもいい」という人もいますよね。外出の基準や好みは人それぞれで、それは年齢にかかわらず、また介護が必要になっても変わりません。
大切なのは、「ご本人の気持ちを尊重する」ということです。これは、介護のすべてのシーンに共通します。その方のこれまでの生活スタイルや価値観、希望を知って、「こうありたい自分」に近づくための工夫を、周囲が一緒に考えることが大切だと思います。
エピソード:シルバーカーは自分で選ぶ!
病院から退院したAさま。以前は、よく外出していましたが、退院後は歩行器が必要になり、ベッドで寝て過ごすことが多くなりました。しかし、デイサービスで趣味仲間と出会えたことがきっかけで、Aさまの気持ちに変化が。「かっこ悪いからシルバーカーはいや。だけど、外を歩きたい」と口にするようになったのです。そこで、ケアマネジャーとAさまとで、好みに合うシルバーカーを探すことに。カタログをいくつも見て、スタイリッシュなシルバーカーを発見。それからは、自らすすんで散歩も楽しむようになりました。
エピソード:シニア用のかっこ悪い靴はイヤ!
障害が残り、片方の足に装具をつけることになったBさま。もともと社交的な性格でしたが、介護用の靴で外出するのは気乗りせず、いつしか外に出ないように。たまたま、近所にオーダーメイドの靴店を見つけた家族がお店に問い合わせたところ、片足ずつサイズの違う靴をオーダーできることがわかりました。おしゃれな赤い靴を新調したBさまは、以前にも増して外出を楽しむようになりました。

着る・脱ぐ・履く。日常の動作で若さを保つ!

身だしなみが、心身の健康につながっていくのですね。
身だしなみの動作そのものにも意味があるのですか?
SOMPOケアでは、「日常生活動作が自然にリハビリになる」という「生活リハビリ」の考え方を大切にしています。とくに身だしなみにまつわる、着る・脱ぐ・履くの動作は、加齢とともに衰えていく筋肉を使う絶好のチャンスです。
たとえば、シャツを脱いだり、髪を後ろで結んだりする動作は、胸を開くので円背(えんぱい)の予防になり、良い姿勢を保つことにつながります。高齢者は筋力が落ちて姿勢が前かがみになりやすいのですが、その姿勢のまま筋肉が固まってしまうと、身体のバランスが悪くなって転倒につながったり、腰痛や膝の痛みが出やすくなったりもします。それを防ぐには、胸を開いて肩甲骨を動かす動作がとても良いのです。
ほかにも、靴を履く動作や、季節や天候を考えながら洋服を選ぶことも、生活リハビリになります。
介護で着替えをサポートする場合も、「生活リハビリ」は生かせますか?
はい。まず大切なのが、何でもすぐに手伝うのではなく、「できることはご本人にやっていただく」こと。そのためには、動作をサポートする自助具(じじょぐ)の活用もおすすめです。
すべての介助には、意味と目的があります。また、誰しも、自分のことは自分でしたいもの。その方に何ができるのかをきちんと知って、その介助を何のためにやっているのか、目的を考えることが大切です。
エピソード:靴を履く動作でストレッチ
ホームに入居されたばかりのCさまは、マジックテープで止めるタイプの介護靴を履かれていました。ご自分で靴を履くことはできたので、より身体の機能を活用するために、理学療法士がある方法を提案。それは、「履く足と反対側の手でテープを止めてみる」こと。テープを止めるときに体をひねる動作が、腰の筋肉を柔軟にする効果があるのです。

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